BPaaSとは?導入を検討している人向けに解説

少子高齢化による労働人口の減少や働き方の変化など、社会構造の変化により企業における人手不足が深刻化しています。課題解決に向け業務効率化やDX化の取り組みが求められる中で「BPaaS」の導入も有効な選択肢のひとつとなります。
当記事では、BPaaSとは何かを解説します。BPOやSaaSとの違いのほか、メリットとデメリットなどBPaaSがどのようなサービスであるかを幅広く紹介しているため、BPaaSの導入を検討している人は当記事を参考にしてみてください。
BPaaSとは業務プロセスをクラウド経由でアウトソーシングするサービス
BPaaSとは「Business Process as a Service」の略称であり、業務プロセスをクラウド経由でアウトソーシングするサービスのことです。BPaaSを利用して業務プロセスの一部を外部に委託することにより、社内における業務負担の軽減が期待できます。
たとえば、給与管理業務をBPaaSで業務委託する場合、自社の給与体系や勤怠管理の仕組みを委託先のベンダーと共有します。ベンダーはクラウド上のソフトウェアをカスタマイズし、従業員の勤怠データの確認や給与計算、振込手続きなど毎月の給与管理業務を代行します。
また、BPaaSの利用者は、クラウド上からベンダーが対応した業務の進捗や成果物を確認することが可能です。業務プロセスが可視化されることにより、どの段階でどのような作業が行われているのかを把握できるため、利用者側もアウトソーシングした業務のナレッジを蓄積することができます。
BPaaSでは、利用者の個別の要件に合わせたシステム構築と、専門の担当者によるサポートが提供されます。幅広い業務アウトソーシングのニーズに対応できることから、社内のリソース不足の解消やDX推進など、さまざまな業務課題への有効な解決策となるでしょう。
BPaaSの市場規模
世界のBPaaSの市場規模は年々拡大傾向にあり、2023年には600億米ドルを超えました。市場調査とコンサルティングを専門とする企業であるPolaris Market Researchの調査によると、2032年には1,000億米ドルを超える市場規模へ成長すると予想されています。
また、Data Bridge Market Researchの調査では、2024年における日本のBPaaS市場規模は31億9000万米ドルであると発表されました。2032年には95億9000万米ドルに成長すると予測されており、年平均成長率(CAGR)は約14.80%となっています。
BPaaSは2000年代にアメリカの企業が提唱し、その後アメリカやヨーロッパを中心に世界各国へ広まりました。BPaaSが普及した背景には、クラウド技術の進化や少子高齢化による人手不足といった社会課題が深く関連しており、業務効率化につながる新たなソリューションとして注目されています。
また、AIやRPAなどIT技術の進化に伴い、BPaaSはより高度な業務プロセスに対応できるようになることが期待されています。日本でも大手企業を含む複数の企業がBPaaSを導入しており、国内外で今後もさらなる市場規模の拡大が見込まれています。
BPOやSaaSとの違い
業務効率化につながるサービスとして、BPaaSのほかにもBPOやSaaSが挙げられます。各サービスの違いを知ることによりBPaaSへの理解をより深めることができるため、まずはBPO、SaaS、BPaaSそれぞれの概要を押さえておきましょう。
サービス | 概要 |
---|---|
BPO | 企業の業務プロセスの一部または全部を、外部の専門業者にアウトソーシングするサービス |
SaaS | インターネット経由で提供されるソフトウェアを利用するクラウドサービス |
BPaaS | クラウドサービスを利用して業務をアウトソーシングするサービス |
BPO、SaaS、BPaaSはいずれも業務効率化につながるサービスですが、サービスの内容にはさまざまな違いがあります。各サービスの概要を押さえた人は「業務対応者」「サービスの目的」「ナレッジ蓄積」の観点からサービスを比較し、BPaaSならではの特徴を確認してみましょう。
業務対応者の違い
BPO、SaaS、BPaaSの違いを知るために、それぞれの業務対応者を比較してみましょう。
サービス | 業務対応者 |
---|---|
BPO | アウトソーサー |
SaaS | 利用者 |
BPaaS | アウトソーサーと利用者 |
BPOにおいて、業務を実施するのはアウトソーサー(サービスベンダー) です。BPOは業務の遂行を外部の専門業者に依頼する方法であり、業務遂行に必要なヒューマンリソースと専門知識が提供されるため、社内で業務に対応できるリソースやノウハウがない場合にも業務を円滑に進めることができます。
SaaSにおいて、業務を実施するのはサービスの利用者自身です。SaaSはクラウドサービスを利用する権利が提供されるものであるため、アウトソーシングとは異なりクラウドサービスを用いて利用者自身が業務に対応する必要があります。
BPaaSにおいて、業務を実施する主な担当はアウトソーサーになりますが、一部業務は利用者側でも実施します。クラウドプラットフォームを活用して業務の一部を外部の専門業者へアウトソーシングすることにより、定型的な業務プロセスや専門知識が必要な分野の業務を効率化できます。
サービスの目的の違い
BPO、SaaS、BPaaSの違いを知るために、それぞれのサービスの目的を比較してみましょう。
サービス | サービスの目的 |
---|---|
BPO | リソース不足の解消、専門性の活用、柔軟な対応 など |
SaaS | DX化の推進、コストの削減 など |
BPaaS | リソース不足の解消、専門性の活用、コストの削減、DX化 など |
BPOにおけるサービスの主な目的は、リソース不足の解消、専門性の活用、柔軟な対応などが挙げられます。ヒューマンリソースと専門知識の提供により、SaaSやBPaaSでは対応が困難となるクリエイティブ業務や高度な判断が必要となる非定型業務にも柔軟に対応が可能です。
SaaSにおけるサービスの主な目的は、コストの削減、DX化の推進などが挙げられます。SaaSシステムの導入による業務のDX化により新たな働き方やビジネスモデルを創出できる可能性があるほか、ヒューマンリソースの提供ではない分、BPOやBPaaSよりもコストを抑えられる傾向にあります。
BPaaSにおけるサービスの主な目的は、リソース不足の解消、専門性の活用、DX化の推進、コストの削減などが挙げられます。BPaaSでは原則としてシステムを利用した業務遂行となるため、BPOほどの柔軟性はないものの、幅広い目的に対応できるサービスです。
なお、いずれのサービスも業務効率化を主な目的としている点は共通しています。業務効率化に加えて、どのような効果を期待するかに応じて、適切なサービスを選択してみてください。
ナレッジ蓄積の違い
BPO、SaaS、BPaaSの違いを知るために、それぞれのナレッジ蓄積の仕組みを比較してみましょう。
サービス | サービスの目的 |
---|---|
BPO | アウトソーサーに蓄積 |
SaaS | 利用者の企業内に蓄積 |
BPaaS | アウトソーサーと利用者の双方に蓄積 |
BPOでは、業務の遂行によるナレッジは主にアウトソーサー側に蓄積されます。定期的な報告やレビューによって、専門家視点で蓄積・分析した業務データやナレッジが共有される場合もありますが、その内容は利用するBPOサービスによって異なるため、契約締結時にナレッジ還元の方法や範囲を明確にしておく必要があります。
SaaSでは、業務の遂行によるナレッジは主に利用者の企業内に蓄積されます。SaaSはシステムを用いて利用者自身が業務を遂行することから、その過程で得られた知識やノウハウは利用者に蓄積されるため、社内のノウハウ不足や外部への依存が起こりにくくなります。一方で、利用するシステムによっては、専門的な人材がいない場合、ナレッジの蓄積や活用が障壁となることもあります。
BPaaSでは、業務の遂行によるナレッジはアウトソーシング先と利用者の双方に蓄積されます。アウトソーサーが業務遂行によって得た業務データやナレッジは、クラウド上のプラットフォームを通じて利用者と共有できる仕組みとなっています。
BPaaSで対応できる業務
BPaaSで対応できる業務は多岐にわたります。クラウドベースのソフトウェアと専門知識を持つベンダーによる業務代行を組み合わせたBPaaSでは、企業におけるさまざまなバックオフィス業務の効率化や最適化が期待できます。
【BPaaSで対応できる主な業務】
- 人事・労務業務
- 経理業務
- 顧客対応業務
- 販売管理業務
- マーケティング営業業務
BPaaSでは、データ入力や確認作業など、定型的なプロセスが含まれる業務を中心としたさまざまな業務への対応が可能です。企業の業務プロセスにおけるノンコア業務をBPaaSによってアウトソーシングすることで、社内でのコア業務のリソースを確保することができます。
なお、BPaaSサービスによって対応できる業務範囲が異なります。BPaaSを導入したいと考えている人は、依頼したい業務を明確にした上でベンダーの専門性やサービス内容を比較し、自社のニーズに合うBPaaSサービスを選定しましょう。
人事・労務業務
BPaaSで対応できる業務のひとつとして「人事・労務業務」が挙げられます。クラウド上のソフトウェアの活用と専門知識を持つベンダーのサポートによって、従業員の採用から退職までに関わる幅広い業務を効率化することが可能です。
項目 | 具体例 |
---|---|
勤怠管理 | 勤怠データの入力/集計、休暇申請の承認、残業時間の管理 など |
安全衛生 | 健康診断手配、ストレスチェック など |
人事情報管理 | 従業員基本情報の登録/更新、人事異動/組織変更の手続き など |
採用 | 面接日程の調整、合否連絡 など |
たとえば、勤怠管理においては、勤怠データの入力や集計、残業時間の管理などの業務をアウトソーシングできます。労働時間の規則をシステムに登録しておくことにより、残業時間の超過や休憩時間の不足があった場合にアラートを通知するなど、労働時間管理を行って法令違反のリスクを低減することも可能です。
また、人事情報管理においては、従業員基本情報の登録や更新、人事異動や組織変更の手続きなどの業務をアウトソーシングできます。採用活動を積極的に行っている場合や人事異動が多い場合など、従業員情報の変動が頻繁に発生する企業では、BPaaSを活用することで人事担当者の負担を軽減できます。
BPaaSを活用することにより人事労務の広範囲な業務を効率化でき、ヒューマンリソースの有効活用やコストの削減に加え、コンプライアンスの強化にもつながる可能性があります。BPaaSの利用を検討している人は、自社のニーズに合わせて必要な業務範囲をベンダーへ依頼しましょう。
経理業務
BPaaSで対応できる業務のひとつとして「経理業務」が挙げられます。経費、給与、決算などに関わる一連の経理プロセスを、クラウド上のソフトウェアの活用と専門知識を持つベンダーのサポートによって効率化することが可能です。
項目 | 具体例 |
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経費精算 | 経費伝票の入力、仕訳登録、承認作業、支払処理 など |
給与計算 | 給与/賞与計算、明細書の発行、年末調整のサポート など |
決算処理 | 決算データ入力、財務諸表の作成サポート、決算整理仕訳 など |
たとえば、経費精算においては、経費伝票の入力、仕訳登録、承認作業、支払処理など一連の業務をアウトソーシングできます。経費精算の申請や承認フローをBPaaSのシステムに事前に設定して自動化することにより、入力ミスや不正申請のリスクの低減が期待できます。
また、給与計算においては、毎月の給与計算や従業員への明細書発行、年末調整のサポートなどの業務をアウトソーシングできます。法改正への対応が求められる場合も、最新のSaaSシステムを用いたBPaaSを活用することにより、常に最新の法令に準拠したスムーズな処理が実施されます。
さらに、決算処理においては、決算データ入力、財務諸表の作成サポート、決算整理仕訳などの業務をアウトソーシングできます。高度な専門知識が求められる決算処理も、SaaSシステムと専門の担当者のサポートにより正確かつ迅速な対応が可能となります。
経理業務は専門知識が必要となる分野であり、中小企業やスタートアップ企業では経理業務に対応できる人材の確保が困難となる場合もあります。経理業務におけるBPaaSの利用は、経理業務に対応できる従業員の育成や専門知識を持つ人材の採用にかかるコストの削減にもつながるでしょう。
顧客対応業務
BPaaSで対応できる業務のひとつとして「顧客対応業務」が挙げられます。顧客への連絡や顧客からの問い合わせ対応をBPaaSによって一部自動化することで、迅速な対応が可能となり、業務効率化に加えて顧客満足度の向上を目指すことができます。
項目 | 具体例 |
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営業サポート | アポの日程連絡、営業資料の送付 など |
カスタマーサービス | コールセンター対応、チャットボット/IVR(自動音声応答機能)運用、問い合わせメール返信、FAQ管理 など |
たとえば、営業サポートにおいては、アポの日程連絡、営業資料の送付などの業務をアウトソーシングできます。商談を獲得した見込み顧客に対して、アポの日程営業担当者はコア業務である顧客との関係構築や商談に集中できるようになり、営業効率の向上につながる可能性があります。
また、カスタマーサービスにおいては、コールセンター対応、チャットボットの運用、問い合わせメールへの返信などの業務をアウトソーシングできます。BPaaSを活用して定型的な質問への回答を自動化することにより、企業は営業時間外の問い合わせにも対応でき、迅速な顧客対応が可能となります。
顧客対応に関する業務も、BPaaSによって一部をアウトソーシングすることができます。定型的な顧客への連絡や問い合わせ対応を自動化することにより連絡のミスや漏れを防ぐことができるほか、顧客が返答を待つ時間を減らすことにもつながり、企業に対する不信感の低減を期待できるでしょう。
販売管理業務
BPaaSで対応できる業務のひとつとして「販売管理業務」が挙げられます。商品の受注から請求までの一連の業務をBPaaSによって自動化し、外部の専門事業者へアウトソーシングすることにより、効率的かつ正確な販売プロセスを構築することが可能です。
項目 | 具体例 |
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受注管理 | 受注情報の確認、顧客情報の管理、商品の生産/配送指示 など |
在庫管理 | 在庫状況の確認、棚卸、追加発注 など |
出荷/配送手配 | 配送業者との連携、送り状作成、顧客への配送状況通知 など |
請求管理 | 請求書発行、請求データ入力、入金確認 など |
たとえば、在庫管理においては、在庫状況の確認、棚卸、追加発注などの業務をアウトソーシングできます。商品情報、在庫数、入出庫履歴、発注情報などをシステムと連携することにより、リアルタイムでの在庫状況の把握ができるほか、過剰在庫および欠品リスクの低減につながります。
また、請求管理においては、請求書発行、請求データ入力、入金確認などの業務をアウトソーシングできます。データの連携による自動化が可能となれば、入力ミスなどのヒューマンエラーを防げるほか、請求漏れや入金遅延などを防ぎ、キャッシュフローの健全性を維持することにもつながります。
BPaaSを活用することで、煩雑で時間のかかる販売管理業務の効率化が可能です。データと紐づけた管理体制を構築することにより、在庫の最適化によるコスト削減やヒューマンエラーの削減、正確な請求管理によるキャッシュフローの安定化が期待できるでしょう。
マーケティング・営業業務
BPaaSで対応できる業務のひとつとして「マーケティング・営業業務」が挙げられます。
項目 | 具体例 |
---|---|
リードジェネレーション | SNS投稿設定、広告出稿、アウトバウンドコール など |
リードナーチャリング | メルマガ配信設定、問い合わせ対応 |
リードクオリフィケーション | 商談獲得、商談スケジュール調整 など |
たとえば、リードジェネレーションにおいては、SNS投稿設定、広告出稿、アウトバウンドコールなどの業務をアウトソーシングできる場合があります。BPaaSの活用により、自社でのリソースを割かずに潜在顧客への認知拡大と接点づくりを行うことができ、次の段階へつなげるための基盤づくりを効率的に実施できます。
また、リードナーチャリングにおいては、メルマガ配信設定や見込み顧客からの問い合わせ対応などの業務をアウトソーシングできる場合があります。BPaaSの活用により、見込み顧客への情報提供やコミュニケーションを活発に行なうことで、エンゲージメントと購買意欲を高めるプロセスを効率化できます。
そして、リードクオリフィケーションにおいては、商談可能リードの選定、商談スケジュール調整などの業務をアウトソーシングできる場合があります。BPaaSの活用により、購買意欲がありそうなホットリードの抽出や営業担当者のスケジュール管理をシステム化することにより、商談獲得までのプロセスを効率化できます。
マーケティング営業業務では、リード獲得から商談設定までのプロセスの一部をBPaaSによってアウトソーシングできる可能性があります。営業担当者はコア業務である商談に注力できるため、成約につながりやすい質の高い商談を行なえる環境を整えることができます。
BPaaSを導入するメリット
BPaaSの導入は、企業にとってさまざまなメリットをもたらします。メリットを知ることはBPaaSの導入を判断する際の基準となるため、検討している人はどのようなメリットがあるのかを押さえておきましょう。
【BPaaSのメリット】
- 業務効率化とコスト削減を両立できる
- 委託した業務の進捗をクラウド上で確認できる
BPaaSは、業務のアウトソーシングとシステムによる自動化を融合したビジネスモデルであることから、BPOとSaaSそれぞれのメリットを享受できます。とくに業務の委託をしたいが業務の透明性を確保したい時には、BPaaSの導入は向いていると言えるでしょう。
業務効率化とコスト削減を両立できる
BPaaSを導入するメリットとして「業務効率化とコスト削減を両立できること」が挙げられます。BPaaSではBPOやSaaSのデメリットとなる部分を補完し、業務効率化とコスト削減を両立できることから、より無駄のない最適化された業務プロセスを構築できます。
SaaSの欠点として、システムを用いて自社で業務を行う必要があるため、経理やマーケティングなど専門知識が必要な分野は導入が困難となる可能性がある点が挙げられます。BPaaSであれば、業務を外部の専門業者にアウトソーシングできるため、社内に有識者がいない場合でも導入しやすいメリットがあります。
また、BPOの場合の欠点として、利用者の個別のニーズに合わせて、業務プロセスを設計・構築・運用するため費用が高額となる傾向にある点が挙げられます。BPaaSであれば、ベンダーがSaaSなどのITシステムを活用し業務を遂行するため少ないリソースで対応が可能となり、業務のアウトソーシングにかかるコストを抑えられます。
BPaaSでは、SaaSにおける専門知識の必要性やBPOにおける個別の最適化に伴う高コストといったデメリットを補完し、業務の最適化を実現することが可能です。業務効率化のためにSaaSやBPOの導入を検討しているものの、運用方法やコストに不安がある人はBPaaSの利用を検討してみてください。
委託した業務の進捗をクラウド上で確認できる
BPaaSを導入するメリットとして「委託した業務の進捗をクラウド上で確認できること」が挙げられます。BPaaSはクラウド上で情報共有が可能であるため、業務のアウトソーシングをする際に起こりやすい「業務のブラックボックス化」を防ぐことができます。
業務の透明性が高まることから、進捗が遅延している場合や問題が起こった場合も利用者側が早期に把握できます。万が一トラブルが発生した場合でも、クラウド上から状況確認や情報共有をスムーズに行えるため、早急な判断と適切な対処につながります。
また、BPaaSで委託した業務のデータやノウハウは、クラウド上に蓄積することができます。蓄積されたデータやノウハウは自社で分析や可視化を行うことにより、経営戦略の策定や業務改善、新たなサービス開発など、自社の成長につながる情報資産として活用が可能です。
BPaaSを導入するデメリット
BPaaSにはさまざまなメリットがある一方で、デメリットをもたらす場合もあります。BPaaSのデメリットを確認することで事前に対応策を検討することもできるため、BPaaSの導入を検討している人はどのようなデメリットがあるのかを押さえておきましょう。
【BPaaSのデメリット】
- サイバーリスク対策の必要がある
- ベンダーロックインの可能性がある
BPaaSは、業務を外部の事業者へアウトソーシングすることや、クラウド上のソフトウェアを活用するサービスであることから、サイバーリスクやベンダーロックインの可能性があります。業務効率化やコスト削減といったメリットだけでなく、BPaaSの潜在的なリスクも理解した上で慎重に導入を検討しましょう。
サイバーリスク対策の必要がある
BPaaSを導入する際のデメリットとして「サイバーリスク対策の必要があること」が挙げられます。BPaaSを導入する場合には、サイバーリスクへの対策を事前に社内で検討し、万が一のトラブルに備えておくことが大切です。
BPaaSはクラウド上のソフトウェアを活用するサービスであるため、サイバーリスクの影響を受ける可能性があります。社内データを外部の企業と共有する特性上、業務を自社で行う場合と比較すると情報漏洩のリスクは高くなることから、特に個人情報や機密情報を提供する場合は注意が必要です。
また、ベンダーのシステムが故障した場合やインターネット環境に問題が起きた場合には、業務の実施が不可能となる恐れがあります。一時的に業務が停止するだけでなく、データの消失や顧客対応の遅延により信頼の低下につながることも考えられます。
サイバーリスクに備えるためには、クラウド上で共有するデータを必要最低限にとどめることや、アクセス権限を管理して関係者以外の閲覧ができないようにすることなどが有効です。また、BPaaSサービスの契約前にベンダーのセキュリティ評価を確認し、信頼性を見極めることも大切です。
しかし、さまざまな対策を実施していても、サイバーリスクの可能性をゼロにすることは困難です。万が一のトラブルを防ぐためにも契約時にベンダーと相談の上、システム障害や情報漏洩などのトラブルが起きた場合の対処法と責任範囲を明確にしておきましょう。
ベンダーロックインの可能性がある
BPaaSを導入する際のデメリットとして「ベンダーロックインの可能性があること」が挙げられます。ベンダーロックインとは、業務が特定のベンダーに依存してしまい他のベンダーへの移行が困難となる状態であり、業務プロセス全体を単一のベンダーへ長期間アウトソーシングすることにより生じうるリスクです。
ベンダーロックインに陥ると、代替となるサービスを見つけることや業務データを別のサービスへ移行することが困難となり、事業の柔軟性が低下します。他社への業務移行が困難であることに乗じて、ベンダーから不利な条件を持ち掛けられ、コストの増加を招く恐れもあります。
ベンダーロックインのリスクを抑えるためには、複数のベンダーによるサービスを組み合わせて特定の業者への依存を避けることが有効です。標準化されたインターフェースやデータ形式を採用することも、ベンダー移行の柔軟性を保つための手段のひとつとなります。
トラブルを避けるためにも、ベンダーとの契約時にはBPaaSサービスの解約や一部業務の移行などに関する条件を明確に定めておくことが大切です。契約後も必要に応じてベンダーのサービス内容や料金プランを見直し、ベンダーロックインによる不利益を被ることがないようリスクを管理を心がけましょう。
BPaaSサービスの具体例
BPaaSの概要を押さえた人は、BPaaSサービスの具体例を確認してみましょう。日本においてもITベンダーやBPO事業者など、さまざまな企業がBPaaSサービスを提供しています。
【BPaaSサービスの具体例】
- 人事労務アウトソース(フリー株式会社)
- Chatwork アシスタント(株式会社kubell)
- BPaaS化支援サービス(株式会社アディッシュ)
- マーケティング運用代行パッケージ(株式会社シャノン)
BPaaSのサービスを選ぶときは、対応可能業務、コスト、サポート体制などさまざまな観点から比較することが大切です。将来的な事業拡大や業務変化への対応を見据え、サービスの拡張性や柔軟性も含めて自社に合ったサービスを選択しましょう。
なお、BPaaSサービスは利用者のニーズに合わせて業務範囲や対応内容が設定されるため、ホームページ上に具体的な料金を掲載していない場合があります。また、掲載されている料金は一例であり実際の金額とは異なる可能性もあるため、利用したいサービスがある場合は問い合わせフォームや電話で直接確認をしてみてください。
人事労務アウトソース(フリー株式会社)
BPaaSサービスのひとつとして「人事労務アウトソース」が挙げられます。人事労務アウトソースは、フリー株式会社が提供する人事労務業務に特化したBPaaSサービスであり、フリー株式会社の自社システムである「freee人事労務」を活用して利用者の業務を代行します。
人事労務アウトソースでは、給与計算、入退社手続き、年末調整など人事労務にかかわるさまざまな業務に対応が可能です。人事管理・給与計算ソフトとして幅広いシェアを占めるfreee人事労務を用いて、専門スキルを持つ担当者が業務に対応します。
また、人事労務アウトソースでBPaaS業務が定着した後には、フリー株式会社が提供しているクラウドソフト「freee人事労務」を活用して業務の一部を内製化することも可能です。業務のアウトソーシングと内製化をいつでも切り替えられるため、社内体制や予算など自社の状況に合わせてBPaaSを利用できます。
Chatwork アシスタント(株式会社kubell)
BPaaSサービスのひとつとして「Chatwork アシスタント」が挙げられます。Chatwork アシスタントは、ビジネスチャットツール「Chatwork」を運営する株式会社kubellが提供するBPaaSサービスであり、経理や労務などの定型的な業務だけでなく、一部のクリエイティブな業務にも対応していることが特徴です。
Chatwork アシスタントには「経理」「労務」「総務」「採用」「WEB制作」の5つのサービスがあります。依頼したい業務に応じて複数のサービスを組み合わせて利用することも可能であり、それぞれ業務経験の豊富な専門スタッフが対応することにより質の高いサービスが期待できます。
また、Chatwork アシスタントでは、依頼する業務量に応じて稼働時間を柔軟に設定することが可能です。想定より作業工数がかからず、契約していた時間が余った場合には無料で次月まで繰越すことができるため、無駄なくリソースを活用できます。
BPaaS化支援サービス(株式会社アディッシュ)
BPaaSサービスのひとつとして「BPaaS化支援サービス」が挙げられます。BPaaS化支援サービスは、デジタルエコノミーに特化したカスタマーサクセスソリューションプロバイダーである株式会社アディッシュが提供するBPaaSサービスであり、SaaS企業の商品におけるBPaaS化を支援しています。
たとえば、自社で提供したSaaS商品を顧客が使いこなせていないと感じる場合にBPaaS化支援サービスを利用することにより、顧客に対してSaaS商品とBPOのサポートをセットで提供できるようになります。顧客に対して適切なフォローアップが可能となるため、解約率を下げられる可能性があります。
また、BPaaS化支援サービスを利用することにより、顧客単価の向上につなげられる場合があります。SaaS商品に対してアップセルやクロスセルが可能な商材がない場合も、BPaaS化支援サービスを利用することにより付加価値の提供が可能となるため、顧客生涯価値であるLTVの向上も期待できるでしょう。
BPaaS化支援サービスを利用することにより、SaaS商品におけるカスタマーサクセス分野の強化が期待できます。顧客に対するサポート体制が不足しているもののBPOを提供するリソースがない場合や、顧客単価の向上によりLTVの向上につなげたい場合などに適したサービスです。
マーケティング運用代行パッケージ(株式会社シャノン)
BPaaSサービスのひとつとして「マーケティング運用代行パッケージ」が挙げられます。マーケティング運用代行パッケージは、マーケティングやアドテクノロジー、コンサルティングなどを幅広く提供する株式会社シャノンによるBPaaSサービスであり、マーケティング業務に特化した支援を実施していることが特徴です。
マーケティング運用代行パッケージでは、広告出稿やアウトバウンドコール、メール配信によるリードの育成、インサイドセールスによる商談化まで、マーケティングに関する一連の業務のサポートに対応しています。商談までのプロセスをまとめてアウトソーシングできるため、利用者は商談のみに注力することができます。
また、生成AIの活用やパッケージ化により、提供コストの低減も実現しています。マーケティング運用代行パッケージは、マーケティング人材のニーズがあるものの、コスト面で人材採用やアウトソーシングが困難となっている場合に適したサービスです。
まとめ
BPaaSとは、業務プロセスをクラウド経由でアウトソーシングするサービスのことです。BPaaSによってアウトソーシングできる業務は人事・労務業務、経理業務、顧客対応業務など多岐にわたり、ノンコア業務のプロセスの一部を外部にアウトソーシングすることにより、業務負担の軽減が期待できます。
BPaaSのメリットには、業務効率化とコスト削減を両立できることや、業務の進捗をクラウド上で確認できることが挙げられます。BPaaSは業務のアウトソーシングとシステムによる自動化を融合したビジネスモデルであることから、BPOとSaaSそれぞれのメリットを享受できます。
一方で、デメリットにはサイバーリスクの危険性やベンダーロックインの可能性など、クラウドシステムや業務のアウトソーシングを利用することによるリスクが挙げられます。業務効率化やコスト削減といったメリットだけでなく、BPaaSの潜在的なリスクも理解した上で慎重に導入を検討しましょう。

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