カスタマーサクセス
基礎知識

アップセルを成功させるための事前準備と施策例を解説

売上向上に効果的な営業手法の一つにアップセルがあります。アップセルは、既存のプロダクト(製品やサービス)よりも提供価値の高いプロダクトを提案し、アップグレードや契約延長を促すことで顧客単価や顧客生涯価値(LTV)の向上に貢献します。

当記事では、アップセルを成功させるための事前準備と施策例を解説します。アップセルを自社の営業活動に活かしたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
なお、類似する営業手法にクロスセルがありますが、クロスセルでは関連性の高い別のプロダクトを提案する点でアップセルとはアプローチが異なります。違いについては「アップセル・クロスセルとは?施策から成功させるポイントま解説」を確認してください。

アップセルを成功させるための事前準備


アップセルを成功させるためには、事前準備としてアップセルの全体像や心構えを理解しておくことが重要です。これにより提案力が高まり、顧客のニーズに合った最適な提案が実現できるようになります。

事前準備を怠ると顧客のニーズにそぐわない提案をしてしまったり、タイミングを誤ったりしてアップセルの機会を逃してしまう可能性があります。効果的なアップセルを行うためにしっかりと事前準備に取り組みましょう。

【アップセルを成功させるための事前準備】
・アップセルの手順を理解する
・顧客本位のマインドセットを身につける
・顧客データを整備する
・アップセルが成功しやすい条件を整える

アップセルの手順を理解する


アップセルの手順を理解するとアップセルを成功に導くための方向性が明確になります。業務プロセスを可視化・共有しやすくすることで、チーム内の共通認識が深まり、一貫性したアップセル施策を展開できます。

また、営業、マーケティング、カスタマーサクセスといった、アップセルに関わる業務部門間の連携を強化し、組織全体で取り組むことで、アップセル施策がより効果的に進められるようになります。

【アップセルの手順】
①顧客の理解を深める
②目標を設定し、方針を共有する
③効果的な施策を立てる
④適切なタイミングで提案する
⑤顧客にベネフィットを的確に伝え、説得力のある提案をする
⑥顧客の不安を解消し、アップセルの意欲を促進する
⑦定期的にフォローする

アップセルの各手順は相互に作用し、相乗効果によってさらなる成果が期待できます。たとえば、顧客理解が深まると顧客一人ひとりに対して説得力のある提案が可能になり、顧客満足度向上や売上拡大に貢献できます。

また、顧客のニーズに適した施策を顧客が求めるタイミングで実行することで顧客満足度が自然な形で高められ、スムーズなアップセルにつながります。

アップセルが成功した後は顧客満足度を確認し、定期的なフォローを実施して評価・改善を重ねましょう。その際は、最初に設定した目標に対する達成状況を定量的に把握し、施策のブラッシュアップを行うと顧客との継続的な関係構築が図りやすくなります。

このように、アップセルの手順を把握した上で各手順ごとに適した施策を進めると、アップセルの効果最大化が期待できます。ただし、施策の内容やタイミングは業種や顧客特性によって異なるため、顧客視点を忘れずに最適な施策を進めていきましょう。

顧客本位のマインドセットを身につける

顧客本位のマインドセットを身につけるとアップセルがより自然な流れで提案できるようになります。それはアップセルを勧める上で欠かせない顧客視点の考え方であり、顧客のニーズや状況を踏まえた対応や配慮によって押し売りを回避します。

また、顧客本位のマインドセットが根底にあることで顧客からのフィードバックを真摯に受け止められるようになり、 顧客満足度向上に向けた積極的な業務改善にも取り組みやすくなります。

【アップセルに必要な顧客本位のマインドセット】
要素具体策
顧客の利益を優先する顧客の課題やニーズを理解し、それに基づいた価値ある提案を行う
顧客にもたらす利益を明示する提案するプロダクトやサービスがどのような利益をもたらすかを数値や事例で明確化
阻害要因を取り除く顧客が持つ懸念(価格、導入負担など)を先回りして解消する方法を考える
拒否される可能性に備える想定される反応に応じた対応策を準備(価格交渉、ダウンセル提案、成功事例の共有など)
顧客との信頼関係を強化する定期的なコミュニケーションを通じて顧客に「信頼されるパートナー」として認識される
長期的な関係構築を目指す目先の利益ではなく、継続的な価値提供を通じて顧客との長期的な関係を育む

アップセルを提案する際は、相手の反応を慎重に観察しましょう。その上で、顧客の利益を優先し、得られる価値を無理なく的確に伝えることが大切です。負担を感じさせないよう、あくまでも選択肢の一つとして提示し、最終的な判断は顧客自身に委ねます。

アップセルの提案に興味を示さない場合は、顧客が抱える懸念事項を聞き取り、阻害要因を解消するための具体的な方法を明示します。価格交渉やダウンセルの提案、成功事例の共有など、対応策を講じながらアップセルの適切なタイミングを図っていきます。

アップセルの基本は、長期的な視点で良好な信頼関係を構築することです。アップセルが成立しなかった顧客に対しても継続してコミュニケーションを重ねると、ニーズの変化に柔軟に対応でき、フォローアップのタイミングが掴みやすくなります。

顧客データを整備する

顧客データを整備すると、散在する顧客情報を一元化して分析しやすい状態にすることができます。具体的には、保有している顧客データを調査し、アップセル施策に必要なデータを抽出します。その後、データクレンジングを実施することで、データ品質が高まります。

用途に合わせて不要なデータを排除しておくことで処理時間の短縮やシステム負荷の軽減につながります。さらに、データクレンジングの精度向上にもつながるため、より高品質なデータをアップセル施策に活用できるようになります。

【顧客データを整備する手順】
手順詳細補足
①顧客データの調査保有データの洗い出し現在、どのような顧客データを持っているのかを明確にする
不足データの特定データの利用目的を明確化し、データが不足している場合は、追加で収集する
② 顧客データの抽出顧客セグメンテーション様々な基準を組み合わせ、顧客データを詳細な複数のセグメントに分類する
ターゲット顧客の抽出多角的な視点で分析し、アップセルに最も適した顧客層を特定する
③顧客データのクレンジングデータの精査正確性、完全性、最新性などを評価し、誤字脱字、重複、欠損などを修正する
データの統一化複数のシステムで管理されているデータを統合する
④顧客データのマッチング複数のデータソースの統合異なるデータソース(CRM、POS、MAなど)のデータを連携させて一元管理する
マスターデータ管理 (MDM)顧客データを一元管理するためのマスターデータベースを構築し、データの一貫性を保つ

手順に沿って整備した顧客データは、用途に適した方法で分析します。たとえば、高LTV顧客の特定にRFM分析を活用すると、Recency(最終購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)の3つの要素から顧客の価値を数値化することができます。

また、顧客満足度を把握したい場合は、NPS分析を用いてNet Promoter Score (NPS®) を分析すると顧客推奨度が測定できます。熱心な顧客に向けて新商品や限定商品の情報をいち早く届けるといったアップセル施策が展開でき、顧客ロイヤルティ向上に貢献します。

顧客理解を深めるためには、SPINのようなフレームワークを活用し、対話力や提案力を高めることも有効です。SPINは顧客への質問を状況質問(Situation)、問題質問(Problem)、示唆質問(Implication)、解決質問(Need-payoff)の4つに分けることで、段階ごとに顧客の潜在ニーズを深掘りできるようになります。SPIN話法について、詳しくは「SPIN話法とは?具体例と活用のポイントを交えて解説」からご覧ください。

なお、顧客データを取り扱う際は十分な注意を払い、透明性を保ちながら顧客の信頼を損なわないよう心がけることが大切です。個人情報保護法等の関連法規を遵守し、プライバシーへの配慮を徹底しましょう。

アップセルが成功しやすい条件を整える

アップセルが成功しやすい条件は、業種やプロダクトの特性、社内体制などによって異なりますが、基本的な条件としては、顧客の状態・プロダクトの提供価値・企業体制の3つの要素がバランス良く整っていることが前提となります。

アップセルでは購買意欲が高まっている顧客に提供価値の高いプロダクトを適切なタイミングで提案することが求められ、目的に応じて「顧客セグメンテーションの最適化」「提供価値の高いプロダクトの特定」「適切なタイミングでの提案」を実践する必要があります。

また、アップセルが成功しやすい条件は、自社で定義していけることが望ましいため、アップセルの成功事例を基に、確度の高い顧客やアップセル経験のある顧客の特徴を分析して解像度を高め、ノウハウを蓄積していきましょう。

【アップセルが成功しやすい条件を整えるには】
・顧客セグメンテーションを最適化する
・提供価値の高いプロダクトを特定する
・適切なタイミングで提案する

顧客セグメンテーションを最適化する

顧客セグメンテーションを最適化すると顧客ニーズの正確な把握とパーソナライズされた提案が可能になります。顧客セグメンテーションとは、顧客を共通の属性や行動パターンによって複数のグループに分類(セグメント化)するマーケティングの基本手法です。

顧客セグメンテーションの最適化は市場を的確に切り分け、アップセルに高い効果が見込める顧客層を特定することで、ターゲティング精度の向上とポジショニングの明確化を実現します。

【顧客セグメンテーションの手順】
手順
①目的を明確化する顧客単価の向上、顧客満足度の向上、顧客生涯価値(LTV)の最大化など
②データを収集・分析する顧客の属性(年齢、性別、居住地、職業)、購買履歴(購入頻度、購入金額、購入商品)、利用状況(サービス利用頻度、利用機能)、顧客とのインタラクション(問い合わせ履歴、アンケート回答)など
③セグメントを定義するニーズ(顧客が抱える課題や欲求)、購買行動(過去の購買パターン、意思決定プロセス)、価値観(プロダクトに求める価値)、ロイヤリティ(ブランドへの愛着度、継続利用意向)、収益性(現在および将来的な貢献度)など
④セグメントを理解するセグメントごとの特徴、ニーズ、購買行動、アップセルに対する反応など

アップセルにおける顧客セグメンテーションの役割は、顧客にとって最も価値のあるプロダクトを適切なタイミングで提案するための土台を構築することです。そのためには、顧客データを多角的に分析し、定義した各セグメントの特徴を深く理解する必要があります。

たとえば、プロダクトや企業に好意的な顧客はアップセルを受け入れやすい傾向があるため、購入頻度やリピート率などの指標を基に顧客ロイヤルティの高い顧客層を定義して施策を展開するとアップセルの成功率向上が期待できます。

なお、セグメントの数は目的達成に必要な最小限の数に絞り、実用的な範囲で定義しましょう。細分化しすぎると管理が煩雑になりやすく、顧客のニーズや状況の変化に対応することが難しくなるため、定期的にセグメントを見直すことが重要です。

さらに、分析に用いるデータは正確かつ最新の情報に基づき、常に質を担保しておく必要があります。顧客データの品質はセグメンテーションの精度に影響するため、データクレンジングや顧客情報の一元化などを定期的に実施してデータ品質の向上に努めましょう。

提供価値の高いプロダクトを特定する

提供価値の高いプロダクトを特定すると顧客満足度が高まります。顧客が既存プロダクトに対して抱えている満足点や不満点を分析することで、顧客の潜在的な欲求を満たす、より提供価値の高いプロダクトを特定できます。これにより、顧客はアップセルを受け入れやすくなります。

たとえば、クラウドストレージサービスを利用している顧客がデータ管理に潜在的な不安を抱いている場合、セキュリティやバックアップ機能を強化した上位プランを提案すると提供価値を高められます。顧客は課題を解消できるため、アップセルに好意的になります。

また、業務効率化を支援するアウトソーシング企業やコンサルティング企業などの場合、業務プロセス分析に基づいた中長期的な改善案やコスト削減効果の提示し、顧客が費用対効果に魅力を感じれば、月単位の契約から年単位の契約へのアップセルにつながる可能性があります。

顧客のニーズに適した提供価値の高いプロダクトを特定するためには、自社のプロダクトの特性を十分に理解し、顧客の状況に合わせて総合的に判断するスキルが必要です。さらに、成功事例などを共有しながらプロダクトの付加価値を効果的にアピールしていきましょう。

適切なタイミングで提案する

アップセルの適切なタイミングは、時期的タイミングと顧客の状態の両方が合致しているときが理想です。時期的タイミングとは、顧客が新たなプロダクトに関心を持ちやすい時期を指し、季節的なイベントや契約更新が近い時期などが挙げられます。

一方、顧客の状態とは、顧客がプロダクトを前向きに検討している場合や、満足度の高い状態で継続利用している場合などが該当します。

アップセルの適切なタイミングは顧客との関係性やプロダクトの種類によって異なるため、顧客一人ひとりの状況を深く理解し、十分なモニタリングを行いながら最適なタイミングを見極めていく必要があります。

【アップセルの適切なタイミング】
フェーズ検討段階導入初期継続期間定期的なフォロー
顧客ニーズ興味関心の喚起プロダクトの活用提供価値の最大化顧客ロイヤルティの向上
時期的タイミング情報収集、トライアル期間オンボーディング活用促進契約更新
顧客の状態無料トライアルやデモを利用している/競合製品と比較検討しているプロダクトの機能や使い方を学んでいる/期待していた効果が出ていないプロダクトに一定の効果を感じている/更なる成果を求めている契約更新を検討している/競合他社への乗り換えを考えている
モニタリング方法





ウェブサイトの行動履歴/デモリクエスト/資料ダウンロード/サポートへの問い合わせ内容プロダクトの利用状況/サポートへの問い合わせ内容/利用マニュアルの閲覧回数利用頻度と期間/追加機能のリクエスト/利用データの分析契約更新日/競合製品に関する問い合わせ/契約内容の見直し要求
担当者営業カスタマーサクセス(CS)カスタマーサクセス(CS)CS/アカウントマネージャー

アップセルの最適なタイミングは、SaaS型サービスの場合、ツールの利用頻度やデータ量が増えたときです。このときに高度な分析機能やオプションなどを提案すると顧客は課題解決や業務効率化に直結するメリットを感じやすく、アップセルを受け入れやすくなります。

一方、化粧品を扱うECサービスの例では、顧客の興味に基づいたアップセルが求められます。購入履歴や閲覧履歴から顧客のスキンタイプや肌悩みなどを分析することで、より効果の高い商品ラインナップを提案する時期が把握できるようになります。

ただし、顧客の状態によっては、時期的タイミングに関わらずアップセルを提案したほうが良い場合もあります。特に競合製品に興味を示していたり、プロダクトの利用頻度が低かったりする場合は、顧客が悩んでいるタイミングでいち早く提案する必要があります。

なお、アップセルの担当チームにアカウントマネージャーを配置すると更なる成果向上につながります。特定の顧客を専任するアカウントマネージャーは顧客との長期的な関係構築に注力できるため、顧客満足度や顧客ロイヤルティの向上促進が期待できるでしょう。

アップセル施策

アップセル施策は明確な目的を持って顧客のベネフィットを最大化することが重要です。顧客が真に求めているものや抱えている課題に対して適したアップセル施策を展開することで顧客満足度が高まり、売上向上につながるためです。

アップセル施策によって何を達成すべきかが明確化すると、アップセルの具体的な方向性が定まります。その結果、顧客に一貫したメッセージが届けられ、スムーズな顧客体験が提供できるようになります。

【アップセル施策の目的】
・タイミングの最適化
・顧客エンゲージメントの強化
・プロダクトの改善
・クロスセルとの連携

タイミングの最適化

アップセルのタイミングを最適化することは、顧客の目標達成や課題解消に貢献できるプロダクトを、顧客が求める最適な時期に提案することです。そのためには、顧客の段階に応じてアップセル施策を展開していくことが重要です。

顧客の段階は、顧客のライフサイクル、行動、利用状況などから多角的に分析します。一般的には新規顧客、既存顧客、休眠顧客などに分けられますが、中でも既存顧客は企業やブランドに信頼感を持っている可能性が高く、アップセルの成功率も高くなる傾向があります。

【タイミングの最適化の施策例】
①契約更新時
 ・パーソナライズされたメール
  件名「〇〇プラン更新時に特別価格をご提案」

②使用頻度の高い時期
 ・インプロダクトメッセージ (アプリ内通知)
  通知「よく使う機能をさらに強化する〇〇プランがオススメです!」

③新機能リリース時
 ・ウェビナー
  招待「新機能〇〇を使って、〇〇の課題を解決する方法を解説します」

④イベント参加後
 ・限定オファー
 「イベント参加者限定!今だけ〇〇プランの無料トライアル実施中」

⑤課題解決直後
 ・ケーススタディ共有
 「先日ご提案した〇〇を実施後、他社では〇〇%の業務効率化を達成しています」

アップセルを提案するのに効果的なタイミングは、プロダクトに対して顧客の興味関心や満足度が高まっているときです。こうしたタイミングでメッセージ配信やイベント開催、オファー、有益情報の提供といった施策を展開することでアップセルを促します。

たとえば、契約更新時は顧客満足度が高まった状態であることが多く、上位プランや新オプションを提案しやすいタイミングです。また、プロダクトの利用が活発な時期は、顧客が提供価値を実感していると判断でき、新しい価値を提案する好機といえます。

さらに、顧客が困っている状況にあるとき、新機能の発表時、特定のイベントが発生した時期なども、顧客の興味を引きやすいタイミングです。顧客のニーズに合わせて柔軟に提案内容を調整することで、アップセルの成功率を高めることができます。

なお、アップセルのタイミングや提案内容が顧客のニーズに合致しているかどうかは、常に顧客視点で検証する必要があります。顧客視点を疎かにすると、アップセルの提案に過不足が生じ、顧客満足度を低下させる可能性がある点に注意しましょう。

顧客エンゲージメントの強化

顧客エンゲージメントを強化するには、顧客との日頃のコミュニケーションを重視し、顧客のニーズや課題に寄り添ったアップセル施策を展開することが大切です。なぜなら、顧客とのコミュニケーションを通じてプロダクトの情緒的価値が高められるためです。

情緒的価値とは、プロダクトを通して得られる安心感、満足感、感動などの心の動きに関連する価値のことです。これに対し、デザイン、使い心地、耐久性といったプロダクトが持つ具体的な機能やスペックは機能的価値と呼ばれます。

機能的価値と情緒的価値が高いと顧客により深い満足感を提供できます。さらに、より良い顧客体験を継続して提供することができれば競争優位性の確立にもつながります。

【エンゲージメント強化のポイント】
①継続的なコミュニケーション
・顧客に価値を提供する情報の発信
 メールニュースや業界トレンドなど、顧客のニーズに応じたコンテンツを届ける
・利用状況レポートの提供
 定期的にプロダクトの利用状況を可視化し、達成の効果を顧客に実感させる

②顧客の声を生かす
・フィードバックの収集とアクション
 アンケートやレビューを通じて顧客の意見を収集し、具体的なアクションに生かす
・ケーススタディの作成
 他の顧客の成功事例を共有する

③体験のパーソナライズ
・顧客の特性に応じたアプローチ
 過去の購買データや行動履歴を活用し、顧客に合った提案を行う
・イベントへの招待
 顧客の関心に基づいてウェビナーやセミナーを案内する

④顧客との信頼構築
・カスタマーサクセスチームによる定期的なサポート
 問題発生前にサポートを提供することで顧客の安心感を高める
・オープンコミュニケーションの場を設ける
 定期的にミーティングやディスカッションを実施して顧客の期待や懸念を把握する

エンゲージメント強化のポイントは、顧客とのコミュニケーション基盤を早期に構築することです。継続的なコミュニケーションを重ねながら信頼関係を構築した上で、顧客一人ひとりに合わせたアプローチを行うことで顧客体験を向上させていきます。

また、顧客からのフィードバックを積極的に収集し、プロダクトの改善に役立てることも重要です。アンケート調査やレビュー分析を通じて顧客の声に耳を傾けると顧客の要望を的確に反映した改善策を講じることができ、顧客満足度の向上が期待できます。

顧客の状態は継続的にモニタリングし、気になることがあればその都度、状況確認を行いましょう。適切なタイミングでフォローアップしながらアップセルのタイミングを伺うことで顧客のニーズに適した新たなプロダクトが提案できるようになります。

さらに、顧客コミュニティを形成し、顧客同士が情報交換や交流できる場を提供するのも有効です。顧客間のつながりの深化は顧客ロイヤルティの向上や口コミによる新規顧客獲得につながるため、顧客間の積極的な交流を促してエンゲージメント強化を図りましょう。

プロダクトの改善

プロダクトの改善に不可欠な要素にPSF(プロブレム・ソリューション・フィット)があります。PSFとはプロダクトが顧客の課題や問題を解決できている状態のことです。

PSFが達成されると顧客はプロダクトの価値を実感し、顧客満足度や顧客ロイヤルティが向上します。また、信頼関係の構築やニーズの把握にもつながり、アップセルが成功しやすい状況を作ることができます。

反対に、PSFが達成できていないとアップセルの機会を失うだけでなく、顧客離脱やブランドイメージ低下につながる可能性があります。PSFが達成できていない原因を直ちに特定することでプロダクトの改善が早期に実現できるようになります。

【プロダクトの改善】
①顧客との対話とフィードバックの収集
・定性的なインタビュー
 顧客に直接会い、製品の使用状況、課題、改善点などを深く掘り下げる
・アンケート調査
 より多くの顧客から定量的なデータと定性的な意見を収集する
・コミュニティフォーラム
 顧客同士が意見交換できる場を設け、新たな気づきを得る
・ベータテスト
 新機能や改善点を早期に提供し、実際の使用感や意見を収集する

②データ分析による課題の特定と優先順位付け
・利用状況分析
 どの機能が最も利用されているか、どの機能が利用されていないかなどを分析する
・エラーログ分析
 頻繁に発生するエラーやバグを特定し、改善の優先順位をつける
・顧客行動分析
 プロダクトの利用方法や操作状況を分析する

③競合製品との比較分析
・機能比較
 自社製品と競合製品を比較し、差別化できる特徴や足りない機能を特定する
・顧客レビュー分析
 競合製品のレビューを分析し、顧客の欲求や自社プロダクトとの比較意見を知る

プロダクトの改善は、顧客との対話を通じたフィードバックの収集や、データに基づく客観的な分析、競合との比較分析といった多角的な視点から行う必要があります。

具体的には、顧客との対話において定性的なインタビューやアンケート調査、コミュニティフォーラム、ベータテストなどを実施し、顧客の生の声を多角的に収集します。これらの情報を基に顧客が抱える課題や改善要望を理解し、プロダクトに反映させることが重要です。

また、データ分析では、プロダクトの利用状況やエラーログ、顧客行動などを詳細に分析し、定量的なデータに基づいて課題を特定します。特にどの機能が最も利用されているか、どの機能を改善すべきかなどを客観的に把握することで効果的な改善策が立案できます。

クロスセルとの連携

アップセルとクロスセルを連携させると、顧客一人ひとりのニーズに適した幅広いアプローチが可能になり、より最適な提案が行えるようになります。

顧客セグメントに基づき、属性、利用状況、購買履歴といった多様なデータを分析することで、上位プランへのアップグレードと関連商品の割引販売を組み合わせるなど、パーソナライズされたオファーを作成することが可能です。

たとえば、特定の機能を頻繁に利用している顧客に対しては、機能強化プランと関連ツールのセットを提案するといった、顧客のニーズに合致する組み合わせを提案することで、顧客の購買意欲を高めることができます。

さらに、バンドル商品の提供やトライアル期間の延長といった施策も効果的です。これらの施策を通じて顧客満足度を高め、顧客生涯価値(LTV)の向上に貢献することができます。

【クロスセルとの連携】
①顧客セグメントに応じた組み合わせ
・顧客属性に基づく組み合わせ
 既存の有料会員に上位プランと関連商品の割引販売を同時提案する
・利用状況に基づく組み合わせ
 特定の機能を頻繁に利用している顧客に機能強化プランと関連ツールを同時提案する
・購買履歴に基づく組み合わせ
 特定のプロダクトを複数回購入している顧客に関連性商品をセットで提案する

②顧客体験の向上を目的とした組み合わせ
・パーソナライズされたオファー
 購入履歴や閲覧履歴に基づき、最適なプロダクトを組み合わせたオファーを作成する
・バンドル商品の提供
 頻繁に同時購入されている商品と未購入商品をセットにして特別価格で提供する
・トライアル期間の延長
 上位プランを検討している顧客のトライアル期間を延長し、じっくり検討してもらう

施策の改善に効果的なKPI

アップセルを成功させるためには、KPIを設定して施策の有効性を定量的に評価することが重要です。目的に応じてKPIを設定し、適切なタイミングで測定することでアップセル施策の改善が効率的かつ効果的に行えるようになります。

たとえば、アップセルの実施以前に目標に応じてKPIを設定しておくとアップセル施策のゴールが明確になります。チーム全体で目指すゴールを数値化し、アップセルの見通しを立てることで一貫したアップセル施策が展開できるようになります。

また、アップセルの施策を進めながら定期的にKPIを測定すると進捗状況の把握と方向性の修正がしやすくなります。さらに、施策終了後にKPIを測定すれば、アップセル施策の当初の目標と実際の結果を比較し、改善することができます。

【アップセル施策の改善に効果的なKPI】
・アップセル率:既存顧客がより高額なプランや追加商品を購入した割合
・アップセル単価:1回のアップセルで獲得した平均金額
・アップセル客単価:アップセルを行った顧客の平均購入金額
・アップセル回数:1顧客あたりの平均アップセル回数
・アップセル期間:アップセルが成立するまでの平均期間
・収益増加額:アップセルによって得られた売上額
・平均注文金額:1回の購入あたりの平均金額
・顧客生涯価値(LTV):アップセルによる顧客生涯価値(LTV)の変化の割合

アップセル率が低い場合はアップセルのタイミングが適切でなかったり、プロダクトの魅力が十分に伝わっていなかったりすることが考えられます。顧客の購入履歴や利用状況を分析し、アップセルのタイミングや提案するプロダクトを見直すと効果改善が見込めます。

また、平均注文金額が少ない場合は顧客がプロダクトに興味を持っていなかったり、プロダクトの提供価値が伝わりにくかったりすることが考えられます。アップセル施策として顧客の購入履歴に基づくレコメンドやセット販売などを展開すると効果的です。

なお、KPI設定は売上向上を直接的な目的とせず、顧客の利益を最優先に考えます。適切なKPIを設定し、PDCAサイクルを回しながら改善を重ねましょう。KPI設定の詳細は「カスタマーサクセスで重視される12のKPIと設定の手順を解説」をぜひ参考にしてみてください。

まとめ

アップセルを成功させるための事前準備は「アップセルの手順を理解する」「顧客本位のマインドセットを身につける」「顧客データを整備する」「アップセルが成功しやすい条件を整える」ことです。事前準備はアップセルの全体像や心構えの理解を促し、アップセルの提案力を向上させることで顧客ニーズを反映した最適な提案を可能にします。

アップセルが成功しやすい条件は、顧客の状態・プロダクトの提供価値・企業体制の3つの要素がバランス良く整っていることが前提です。具体的には「顧客セグメンテーションを最適化する」「提供価値の高いプロダクトを特定する」「適切なタイミングで提案する」ことが求められます。

アップセルの事前準備が整うとアップセル施策によって何を達成すべきかが明確化し、アップセルの具体的な方向性が定まります。アップセル施策を実行する際は、目的に応じて顧客に一貫したメッセージを届け、スムーズな顧客体験を提供しましょう。

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