カスタマーサクセスとマーケティングの違いと部門間の連携について解説

カスタマーサクセスとマーケティングは異なる役割を担う部門です。両部門が企業内で適切に機能しながら連携することで、新規顧客の獲得と既存顧客の維持を両立しながらビジネス強化を図ることが可能になります。
本記事では、カスタマーサクセスとマーケティングそれぞれの活動内容を解説します。両部門がどのように連携すれば効果的な顧客戦略が実現できるのか、その成功ポイントもご紹介しますので、ぜひご参考にしてください。
カスタマーサクセスとマーケティングの違い
カスタマーサクセスとマーケティングは役割や顧客像が異なります。
カスタマーサクセス | マーケティング | |
役割 | 顧客の成功 | 顧客の獲得 |
顧客像 | 受注後の顧客、既存顧客 | 潜在層、見込み顧客 |
異なる役割を担うカスタマーサクセスとマーケティングが適切に機能することで、新規顧客の獲得と既存顧客の維持を両立しながらビジネス強化を図ることが可能になります。
既存顧客へのアプローチを強化するカスタマーマーケティング
カスタマーサクセスとマーケティングが連携して顧客のLTV最大化を目指す上で、「カスタマーマーケティング」の理解は不可欠です。カスタマーマーケティングは、既存顧客を対象に、商品やサービスの理解を深め、より高い価値を感じてもらうための活動です。これは新規顧客の獲得ではなく、顧客ロイヤリティやLTV(顧客生涯価値)の最大化を主な目的としています。
カスタマーマーケティングは、サブスクリプションサービスの普及や新規顧客獲得コストの高騰を背景に、既存顧客との長期的な関係構築の重要性が増しており、注目を集めています。
カスタマーマーケティングと一般的なマーケティングとの主な違いは、「対象顧客」です。通常、マーケティングは見込み顧客や新規顧客の獲得に焦点を当てますが、カスタマーマーケティングは既存顧客に焦点を当て、「成功体験」「継続利用」「アップセル・クロスセル」の促進を目指します。そのため、カスタマーマーケティングと一般的なマーケティングは、アプローチ方法や施策内容も異なり、顧客コミュニティの運営、オンボーディング支援、活用事例の提供などが挙げられます。
カスタマーマーケティングとカスタマーサクセスとの違いは「活動内容の範囲」にあります。カスタマーサクセスは、カスタマーマーケティングよりも広範な活動や概念を含みます。カスタマーサクセスが、個別の顧客に寄り添い、課題解決に向けて伴走する「ハイタッチ」なサポートも含むのに対し、カスタマーマーケティングは既存顧客全体に向けて、コンテンツやコミュニティなどを通じて働きかける「テックタッチ」な側面が強い傾向にあります。
カスタマーサクセスとマーケティングの連携によって期待できる効果
カスタマーサクセスとマーケティングが連携すると収益拡大と解約率低下が実現し、ビジネスの強化を図れます。これは、新規顧客の獲得と既存顧客の維持を両立できるからです。
カスタマーサクセスとマーケティングの連携によって期待できる効果はおもに4つです。
【カスタマーサクセスとマーケティングの連携による効果】
- 新規顧客の獲得と既存顧客の維持
- 両部門の施策や戦略の強化
- アップセル・クロスセルによる収益拡大と解約率低下
- 顧客満足度の向上
マーケティング部門が持つ顧客データと、カスタマーサクセス部門が持つ利用状況や課題の情報を共有することで、顧客ニーズをより深く理解でき、最適なアップセル・クロスセルの提案が可能になります。
セールスフォースの営業プロセスモデルである「THE MODEL」でも、カスタマーサクセスとマーケティングの連携が重視されます。「THE MODEL」では、マーケティングが獲得した見込み顧客を、インサイドセールスやフィールドセールスが商談・契約へと繋げます。そして、カスタマーサクセスは、既存顧客のロイヤルティ向上やアップセルを通じて、継続的な収益化を支援します。
また、顧客の利用状況やエンゲージメントレベルをカスタマーサクセス部門が把握しているため、アップセル・クロスセルの適切なタイミングを見計らうことができ、顧客のニーズに合致した提案を行いやすくなります。
さらに、 顧客が現在利用している製品やサービスでの成功体験や課題解決を踏まえ、アップセル・クロスセルによって得られる更なる価値を具体的に訴求できます。これにより、顧客はアップグレードや関連製品の導入によるメリットを理解しやすくなります。
新規顧客の獲得と既存顧客の維持
マーケティングとカスタマーサクセスの連携により、新規顧客の獲得と既存顧客の維持が可能になります。両部門が協力して顧客理解を深め、より効果的な戦略を立案・実行できるようになるためです。
マーケティングとカスタマーサクセスが連携し、顧客理解を深めるためには、データの共有が第一歩となります。マーケティングは顧客獲得のためのインサイトを得て、カスタマーサクセスは顧客の定着・満足度向上のための情報を蓄積します。データを共有・分析することで、顧客の課題やニーズをより正確に把握し、個々の顧客に最適化されたアプローチが可能となるのです。
また、カスタマーサクセスからのVOC(顧客の声)をマーケティング戦略に活かすことも有効です。既存顧客の生の声は、新規顧客獲得のためのメッセージやコンテンツ作成に役立ち、顧客とのコミュニケーションを活性化させます。
さらに、両部門が顧客の課題解決やニーズに応えるためのコンテンツを共同で企画・制作し、顧客との信頼関係を築くための情報発信を行う方法もあります。
なお、VOCの収集方法やVOC分析の手法を確認したい方は、「VOC分析を導入するべき企業の特徴や収集方法を解説」を参考にしてください。
両部門の施策や戦略の強化
カスタマーサクセスとマーケティングの連携により、両部門の施策や戦略の強化が図れます。顧客データと成功事例の共有により、ターゲット顧客像がより鮮明になり、より効果的なマーケティング戦略を立案できるようになるからです。
マーケティング部門はナーチャリングやリード獲得の精度を高め、カスタマーサクセス部門は顧客ニーズに合致した支援を提供するなど、施策実行の精度向上が図れます。さらに、顧客からのフィードバックや解約リスクの早期共有により、両部門が連携して迅速な対応策を講じることができます。
顧客満足度向上やLTV最大化といった共通目標を持つことで、部門間の連携が促進され、一体感のある戦略実行が可能になるでしょう。
アップセル・クロスセルによる収益拡大と解約率低下
カスタマーサクセスとマーケティングの連携によって、アップセル・クロスセルによる収益拡大と解約率低下が期待できます。
カスタマーサクセス部門が持つ利用状況や課題の情報とマーケティング部門が持つエンゲージメントレベルなどの顧客データを共有することで、顧客ニーズをより深く理解できます。これにより、適切なタイミングでのアップセル・クロスセルの提案や顧客のニーズに合致した提案を行いやすくなります。
また、マーケティング部門が発信する顧客の課題解決に寄り添った情報発信や、成功事例の共有を通じて信頼感を醸成することで、カスタマーサクセス部門からのアップセル・クロスセルの提案が単なる販売促進ではなく、顧客の継続的な成功を支援する提案として受け止められやすくなります。結果的に、顧客はより前向きに提案を検討したり長期的な関係へと繋がりやすくなったりするため、解約意向の低下に貢献します。
顧客満足度の向上
カスタマーサクセスとマーケティングが連携することで、顧客満足度の向上が図れます。購入前から利用開始後の体験全体を最適化したり、顧客が求める情報を適切なタイミングで提供できたりするようになるからです。
たとえば、マーケティングが顧客の興味関心に基づいた情報を提供し、カスタマーサクセスが利用中の課題解決や活用支援を丁寧に行うことで、顧客は「企業から大切にされている」と感じ、信頼関係が深まります。このような連携によって顧客理解が深まり、潜在的なニーズまで汲み取った対応ができるようになるでしょう。
また、両部門の連携よって顧客の疑問や不満に素早く対応できるようになり、顧客理解に基づいて潜在的なニーズに応えられるようになることも期待できます。
顧客満足度の向上を図ることで、顧客は企業に対する高いロイヤルティを抱き、さらには自ら積極的に製品やサービスを他者に推奨するブランドアドボカシーへと繋がり、企業の成長を後押しするでしょう。
カスタマーサクセスとマーケティングの連携を成功に導くためのポイント
カスタマーサクセスとマーケティングの連携を成功に導くためのポイントは以下の通りです。
【カスタマーサクセスとマーケティングの連携を成功に導くためのポイント】
- 両部門が共有できる目標を設定する
- 顧客像を共有する
- コミュニケーションの促進を図る
これらのポイントを押さえることで、カスタマーサクセスとマーケティングの効果的な連携を実現し、顧客満足度と事業成長に貢献します。
両部門が共有できる目標を設定する
カスタマーサクセスとマーケティングの連携を成功させるには、両部門が共有できる明確な目標を設定するようにしましょう。企業全体のKGI達成に貢献する顧客体験の向上やLTV(顧客生涯価値)の最大化といった共通の目標を掲げることで、部門間の協力体制が強固になるからです。
たとえば、マーケティングが獲得したリードが、カスタマーサクセスの働きかけによってどれだけ長期的な顧客へと成長したかを、商談化率やアップセル率といった現場レベルの具体的な共通指標で測定できます。連携による成果を定期的に分析し、改善策を検討・実行することで、より効果的な戦略を立てられます。
また、連携による成功事例を積極的に共有し、部門間のモチベーションを高めることも重要です。互いの貢献を認識し、一体感を持って取り組むことで、相乗効果が生まれ、顧客ロイヤルティの向上とLTVの最大化という共通目標の達成へと繋がります。
なお、カスタマーサクセスに設定するKPIに関しては「カスタマーサクセスで重視される12のKPIと設定の手順を解説」を参考にしてください。
顧客像を共有する
カスタマーサクセスとマーケティングが協力して成果を出すためには、顧客像を共有するようにしましょう。カスタマーサクセスが課題解決を支援している顧客像と、マーケティングが呼び込みたい顧客像の認識がずれていると、顧客体験の一貫性が失われ、結果的にLTV(顧客生涯価値)の向上に繋がらないからです。
両部門が顧客像を共有するためには、カスタマージャーニー全体における顧客の行動、顧客データ、さらには顕在的・潜在的なニーズや課題といった情報を両部門で密に共有し、顧客理解を深めることができます。これにより、マーケティングはより質の高いリードを獲得でき、カスタマーサクセスは顧客の期待値に沿った適切なサポートを提供できるようになります。
顧客像の共有を効率化するには、CRM(顧客関係管理)ツールなどの活用が有効です。顧客情報を一元的に管理することで、どの部門でも最新の顧客情報にアクセスでき、スムーズな情報共有と連携が可能になります。
両部門がツールを活用しながら効率的に顧客像を共有することで、顧客一人ひとりに最適化されたアプローチが実現し、顧客満足度の向上とビジネスの成長に貢献するでしょう。
コミュニケーションの促進を図る
カスタマーサクセスとマーケティングの連携を成功させるには、コミュニケーションの促進が不可欠です。定期的な会議や情報共有の場を設け、部門間の連携を密にすることが重要です。
両部門が円滑にコミュニケーションを取ることで、情報共有が適切に行われ、顧客理解が飛躍的に深まります。
カスタマーサクセスは顧客の利用状況や課題、成功体験といったリアルタイムな情報を保持しており、マーケティングは顧客獲得における初期のデータやニーズを把握しています。両部門の情報が共有されることで、よりパーソナライズされた価値提供や顧客体験の向上が実現できるようになります。
たとえば、カスタマーサクセスが顧客の成功事例をマーケティングに共有することで、新たなリード獲得に向けた魅力的なコンテンツが生まれる可能性があります。また、マーケティングが特定のキャンペーンで獲得した顧客が、その後のカスタマーサクセスでどのような課題に直面しているかを知ることで、次回のキャンペーン戦略をより顧客の実態に合わせたものに調整できます。
部門間の連携を支えるためには、経営層が部門連携の重要性を理解し、積極的に支援する姿勢を示すことも必要です。経営層のコミットメントが、部門間のコミュニケーションをさらに活性化させ、連携の成功へと導くでしょう。
まとめ
カスタマーサクセスとマーケティングは異なる役割を担いますが、連携することで新規顧客の獲得と既存顧客の維持を両立させ、ビジネスを強化できます。カスタマーサクセスとマーケティングの連携によって期待できる効果はおもに以下の4つです。
- 新規顧客の獲得と既存顧客の維持
- 両部門の施策や戦略の強化
- アップセル・クロスセルによる収益拡大と解約率低下
- 顧客満足度の向上
カスタマーサクセスとマーケティングの連携を成功させるには、コミュニケーションの促進、顧客像の共有、両部門が共有できる目標の設定が重要です。これらのポイントを押さえ、両部門が協力することで、顧客体験を向上させ、LTV(顧客生涯価値)を最大化し、企業成長の促進が期待できるでしょう。

不定期でマーケティング、インサイドセールス、営業支援に関する最新の情報を発信していきます。
イベント・セミナー

オウンドメディアの最新情報をSNSで発信中
インサイドセールス支援のサービスについて知る