• ホーム
  • スマタイ
  • ゼロからの試行錯誤でチーム作りを実現。 ウィルオブ・ワーク上谷菜摘 #THELEADERS
インタビュー

ゼロからの試行錯誤でチーム作りを実現。 ウィルオブ・ワーク上谷菜摘 #THELEADERS

現場で活躍するインサイドセールスのキーマンに、SALES ROBOTICSの冨田貴徳が取材する連載企画「THE LEADERS」。

今回のゲストは、株式会社ウィルオブ・ワークの上谷菜摘さんです。

ウィルグループの子会社であるウィルオブ・ワークは、人材派遣・人材紹介を中心とした人材サービス事業を展開しています。上谷さんは、同社が提供する営業支援サービス「セイヤク」の新規顧客開拓を担う、インサイドセールスチームのリーダーです。

上谷さんはたった2人のメンバーで、ゼロからのインサイドセールスチーム作りに尽力した経験を持っています。取材では、今日までの苦労や試行錯誤の軌跡と、今すぐ実践できるインサイドセールスの施策について教えていただきました。

(執筆:サトートモロー 編集:いいたかゆうた 撮影:小林一真 音声編集:増田 那々海)

上谷 菜摘
株式会社ウィルオブ・ワーク セールスアシスト事業部 営業推進部 マネージャー

新卒で株式会社ウィルオブ・ワーク(旧セントメディア)に入社。2020年9月より営業支援事業のインサイドセールス立ち上げメンバーとして参画し、1年で受注率を5.7%引き上げる。現在は、インサイドセールスの責任者として従事している。

1人で「月80件の商談」を生み出しながらのチーム作り

冨田:
上谷さん、本日はよろしくお願いします。まずは、上谷さんの経歴について教えていただけますか?

上谷:
私は新卒でウィルオブ・ワークに入社しました。

入社を決めた理由は、就職活動中に参加した会社説明会で「ポジティブが少しでもネガティブを上回る社会を作りたい」と話しているのを聞いたからです。弊社は「個と組織をポジティブに変革するチェンジエージェント」というミッションを掲げています。この言葉にひかれて、この会社の事業に少しでも貢献できたらと思いました。

私は東京採用でしたが、言い訳のできない環境で勝負したいということで、札幌に配属してもらいました(笑)。そこから今日に至るまで、大手通信会社の現場で販売員・マネジメントや、派遣スタッフのマネジメントなどを経験しました。

#THELEADERS ウィルオブ・ワーク インタビュー

冨田:
まさに現場のたたき上げで仕事をこなされたんですね。

上谷:
東京に戻った後、2020年9月に私とリーダーの2人体制で、セイヤクのインサイドセールスチーム立ち上げに携わりました。現在は私がリーダーを務め、プレイヤー2人とMAやオウンドメディアの記事作成などマーケティングに近い業務を担当するメンバー1人の、4人体制で仕事をしています。

冨田:
インサイドセールスの立ち上げは、どんなことから始めたのでしょうか?実際にインサイドセールスとして営業活動を始めるまでに、どのくらいの期間を要しましたか?

上谷:
セールスフォースの導入や入力ルール作成、追客管理の方法、流入経路ごとの対応方法などから始めました。チームとしての基盤はまったくなかったので、本当にゼロイチでルールを全て決めていきました。

ある程度ルールが固まったなと感じるのに、3ヶ月はかかったと思います。その間、ルール作りと並行して営業活動も行っていました。

冨田:
営業活動とルール作りを同時並行しつつ、ルールのアップデートを図っていたと。それを2名でこなしたというのは、なかなかハードなスタートでしたね。立ち上げ当初、どんな成果や目標を設定していましたか?

上谷:
「商談数」を掲げていました。当時は「月80件の商談を生み出す」という目標で、リーダーは顧客対応になるべく入らないようにしていたので、ほぼ私1人で数字を追いかけていました(笑)

#THELEADERS ウィルオブ・ワーク インタビュー

冨田:
1人で月80件はすごいですね。チームの立ち上げで、特に大変だった時期はいつでしたか?

上谷:
プレイヤーとしては、ルールがある程度固まった後の4ヶ月目〜半年目の期間が大変でした。社内にインサイドセールスの組織を持つ部署がなく、お手本がいなかったので。新しくジョインしたメンバーの教育も、手探りの状態で。彼女たちが成長するまでの約半年間も、試行錯誤の連続で大変でしたね。

冨田:
ちなみに、今はどのような指標を目標に設定していますか?

上谷:
弊社は人材ビジネスなので、派遣スタッフが稼働して、はじめて売上が創出されるという側面があります。そのため、現在は商談数以外に「稼働社数」もKPIに設定されています

冨田:
商談ひいては契約をどれだけ獲得したかだけではなく、実際に稼働が発生しているかも重要視しているというわけですね。しかし、稼働社数はインサイドセールスが直接関与しにくい部分だと思います。具体的にどう管理、あるいはフォローしているのでしょうか?

上谷:
弊社の場合、トスアップの質でフォローしています。SFAやMiitelを活用しつつ、「なぜこの商談を設定したか」をチェックしてフィードバックするという感じです。また、毎日の朝礼などでもコミュニケーションを取り合っています。

冨田:
メンバーとのコミュニケーションやフィードバックといった、いわゆる「モニタリング」を介して商談の質と量のバランスを取っていると。そうした活動が、稼働社数を間接的にコントロールしているという意識を持っているのですね。

#THELEADERS ウィルオブ・ワーク インタビュー

顧客理解の解像度の「ズレ」を減らすためのインプット

冨田:
現在のインサイドセールスチームでは、どんな課題を持っていますか?

上谷:
いっぱいあります(笑)。強いてひとつ挙げるのなら、チームとして新しいフェーズに移るためのスキル獲得です

フィールドセールスのメンバーは、ターゲットとなるお客様の特徴やサービスの強み、市場に対するポジショニングなどの情報を逐一収集しています。しかし、私たちインサイドセールスチームは、感覚を頼りにトスアップをする傾向がありました。

その結果、インサイドセールスとフィールドセールスでお客様の解像度にズレが生じ、ミスコミュニケーションを生んでしまうこともありました。今後さらに売上を伸ばすには、論理的な裏付けのある状態でのトスアップが必要だというフェーズに、移行しつつあると感じています。

冨田:
インサイドセールスがテレアポ業務に陥りやすいというのは、「インサイドセールスあるある」ですよね。ターゲットの業界の知識や商材のカテゴリーなど、事前にインプットしておくべき情報はたくさんあります。しかし、このインプットに苦労している企業は非常に多いです。

結果、インプットされている情報に差が生じ、上谷さんの言う「商談に対する解像度のズレ」につながっているのでしょう。

上谷:
このズレが課題として存在する限り、成長は難しいと考えています。そこで最近、隔週1回の頻度でフィールドセールスのメンバーも交えて、お客様の課題を顕在化するための研修を始めました。研修では、特定のサービスに対するSWOT分析を行ったり、IR情報と紐づけてどうアプローチすべきかを考えさせたりしています。

冨田:
素晴らしいですね。事前におうかがいした内容によると、ウィルオブ・ワーク社は※SDRが中心で※BDRは行っていないとのことでした。

※SDR(Sales Development Representative)
インバウンド対応がメインのインサイドセールス。「反響型」の営業手法とも呼ぶ。

※BDR(Business Development Representative)
アウトバウンド対応がメインのインサイドセールス。「新規開拓型」の営業手法とも呼ぶ。

SDRにおいて、オウンドメディアや広告、ウェビナーからのインバウンドで獲得できる見込み顧客の数は、コントロールが困難です。

そこで重要となるのがナーチャリング(顧客育成)ですが、ウィルオブ・ワークの場合、SDRにおいてトークやメールで態度変容できないことが大きな課題だったのかなと。その解決策としてたどり着いたのが、研修の実施だったわけですね。

上谷:
おっしゃる通りです。このアイディアにたどり着いたのは、私自身が受けた社内研修でした。研修は「ベンチャー企業の支援」がテーマで、そこではじめてSWOT分析や市場分析のロジックを学び、営業に対する考え方が大きく変わりました。このロジックをメンバーにもアウトプットして、同じ感覚を持ってほしいと思って、研修を始めたんです。

フィールドセールスのリーダーはこうした知見が豊富で、一緒に研修コンテンツを考えています。取り組みはまだ始まったばかりですが、メンバーのマインドも少しずつ変わってきていると感じています。

#THELEADERS ウィルオブ・ワーク インタビュー

アウトプット+活動内容の振り返り+フィードバック

冨田:
スキルアップという点でいうと、「インプットとアウトプットのバランス」が、成果を出す上で非常に重要だと私も考えています。インプットの機会を増やしているけれど、アウトプットする機会が極端に少ない。そういう問題に陥っている企業は少なくありません。

弊社の場合、担当者が自分のターゲットとする業界の市場分析や差別化ポイントを資料にまとめて、昼礼に発表するというインプットとアウトプットを毎日のように行っています。同じ業界をひたすら深堀りしアップデートして、みんなでシェアすることで、日々のトークやお客様とのコミュニケーションに活かしているのです。

上谷さんたちが、アウトプットの機会として取り組んでいることはありますか?

上谷:
朝礼の時間などを活用して、アウトプットへの抵抗をなくそうとしています。ルーレット方式でランダムにファシリテーターを決めて、仕事に関する発表をしてもらうんです。

あと週1回、トーク内容やフィールドセールスの商談内容を見直すミーティングも行っています。例えば、商談内容から「フィールドセールスがお客様により深く訴求するには、事前にこんな質問をすればよかった」という反省点が見つかったとします。そこから、「次の電話にはこういう文言を追加しよう」と考えていきます。

アウトプットの場を設けて以来、論理立てて話せるメンバーが増えました。お客様への対応でも、成長している様子が感じられています。

#THELEADERS ウィルオブ・ワーク インタビュー

冨田:
アウトプットを繰り返しつつ、フィードバックで改善を図っているのですね。日々の仕事で「今のトークではダメだ」という点に気づいて、どう論理的かつ端的に伝えるかを試行錯誤していると。

インサイドセールスの仕事内容や職種としての定義は、会社によって異なります。しかし、「いかに短い時間で相手に訴求できるか」という技術が重要であるという点は、どの会社にも共通すると思います

この練習が足りない、あるいは練習環境がない会社は少なくありません。ウィルオブ・ワークの取り組みを聞いて、アウトプットの重要性を改めて感じました。ちなみに上谷さんは、リーダーとしてメンバーのアウトプットをモニタリングしつつ、どんなことを意識してフィードバックしていますか?

上谷:
相手のタイプを見極めて、それに合わせたフィードバックを行っています。私は、仕事の進め方には「定型重視タイプ」「臨機応変タイプ」のふたつがあると考えています。定型重視タイプには「このパターンに当てはめてみたら?」と伝え、臨機応変タイプなら「その場でこういう情報を引用したらどう?」と伝えます。

冨田:
それぞれの分類で伝え方を変えるわけですね。商談になった・ならなかったという結果の違いに対しては、どうフィードバックしていますか?

上谷:
商談化できた場合は、フィールドセールス、カスタマーサクセスに担当が移った時、認識の齟齬(質のズレ)がなかったかを確認します。商談化できなかった場合、その原因を分析してどんなトークを作るべきかを考えています。弊社の場合は価格帯が原因のケースが多いので、その問題点を解決するためのトークを試行錯誤することが多いです。

冨田:
「会話による関係構築はできているのに、途中で終話してしまい商談のトスアップにつながらなかった」というケースも多いと思いますが、その場合はどんなフィードバックをしていますか?

上谷:
会話の内容を因数分解しつつ、お客様が終話を切り出した理由を探ります。そうすると、「まだ情報収集中の段階」「メールでやり取りしたい」といった理由が出てくるので、そこで「メールでどんな情報を提供すればいいか」など、対策を練っていきます。

冨田:
どのケースにおいても、相手のニーズの深堀りと因数分解を重視しているのですね。

意外な突破口となる「ド直球メルマガ」のすすめ

冨田:
日々の試行錯誤の中で、「これはうまくいった!」という事例はありますか?

上谷:
弊社では、「検討フェーズで終話した方は〇ヶ月後に追客する」というルールを設けています。その中で、メールのやり取りを希望したお客様に「先日メールを希望されていたので…」と、前回のコミュニケーション内容を冒頭や本文に含めてご連絡しました。

すると、たった一文付け加えただけで「覚えていてくださったんですね」というプラスのコミュニケーションにつながり、商談にいたるケースが増えたんです

#THELEADERS ウィルオブ・ワーク インタビュー

冨田:
すごいですね、まさに目から鱗です。定型文ではなくひと手間を加えるというのが、できていない企業は多いと思います。だからこそ、その一文で大きく印象が変わるんですね。

上谷:
あと意外な効果を実感しているのは、あえて「話を聞かせてください」というド直球のメルマガを送るという施策です

弊社の事例やインサイドセールスの最新情報などを載せつつ、「お客様の声を聞かせてください」とお願いすることで、win-winな情報交換を意識しています。頻度や送る層を間違わなければ、一定の成果が出る施策だと思っています。

冨田:
そこから商談が生まれていると。私たちもマネしてみようかな…(笑)。先ほどのド直球メルマガ以外に、どんなメルマガを配信していますか?

上谷:
3パターンのメルマガを用意しています。1つ目は、見込み顧客全体に送るもの。2つ目は、直近でCVしている、私たちが「インサイドセールスビギナー」と想定する層に送るもの。そして、3つ目がド直球メルマガです。

見込み顧客全体に送るメルマガ
直近CVのあった層へ送るメルマガ
ド直球メルマガ

冨田:
メルマガは比較的、ないがしろにされがちな施策という印象を持っています。それだけに、ウィルオブ・ワーク社のようにパターン別でメルマガを送るというのは、とても参考になる施策だと感じました。

“逆境感”がモチベーション

冨田:
上谷さんをはじめ、チームの皆さんのSNSなどを拝見すると、すごく楽しそうな雰囲気や空気の中で仕事をしているなという印象を受けました。現場におけるモチベーション維持や向上というのは、インサイドセールスでもホットなキーワードだと思います。

チーム、あるいは上谷さん個人が意識していることはありますか?

上谷:
私個人に関して言うと、インサイドセールスは中間の立場であり、自分の力量が大いに試される部門だと思っています。

フィールドセールスのように売上に直結するわけでもなく、お客様をフォローするカスタマーサクセスでもなく、入口を作るマーケティングでもない。そんな立場だからこそ、自分たちが介在することでプラスの価値が生まれるよう、常にチャレンジしなくてはならないと思っているんです。

私にとって、こうしたある種の“逆境感”がモチベーションになっているのかもしれません

冨田:
上谷さんの“逆境感”が生む熱量が、チームに伝播して良い空気を生んでいるのかもしれませんね。インサイドセールスという職種は、「どんなキャリアを選択するか」というテーマも、よく取り上げられると感じています。

上谷さん以外のメンバーは、どんなキャリアに進んでいますか?

上谷:
インサイドセールスとして、社内のフィールドセールスチームに移籍するメンバーもいれば、別の企業に転職したメンバーもいます。

弊社の場合、フィールドセールスは受注したい案件があると、事前にカスタマーサクセスと相談します。カスタマーサクセスからのGOサインが出なければ、提案書を作成してはいけないんです。

冨田:
なるほど、それはなかなか大変ですね。

上谷:
インサイドセールスを経験しているメンバーの場合、商談に至るまでの苦労を理解しています。カスタマーサクセスに相談する時も、「この案件はインサイドセールスがすごく頑張ってくれたんです」と、熱く伝えてくれるんです

このコミュニケーションが生まれるのは、私たちとしてはとてもありがたいです。

冨田:
社内であれ社外であれ、チームで学んだことを生かして活躍しているのですね。メンバーが次の道へと進む一方で、なぜ上谷さんは今もインサイドセールスチームに在籍しているのでしょうか?

上谷:
私はインサイドセールスに携わるようになってから、仕事が楽しいと思えるようになりました。社外の方々との交流が増えたのも、SNSでビジネスアカウントを持って発信するようになったのも、インサイドセールスがきっかけです。

一方で、ウィルオブ・ワークひいてはウィルグループ全体を通して、インサイドセールスを組織として持つ部門はまだまだ少ないのが現状です。私はグループ全体に、「こんな新しい職種があるんだよ」というのを、広げていきたいんです

冨田:
それが上谷さんのやりがいにつながっているのですね。

今回の取材を通じて、上谷さん自身が現場の活動を細かにマネジメント・モニタリングしつつ、営業部門やカスタマーサクセス部門といった横の組織と密に連携を取りながら、日々改善活動をされていることがわかりました。

特に、メールマガジンの部分などは、読者の皆様もすぐに実践していただけるのではないかと思います。

上谷さん、本日はありがとうございました。

#THELEADERS ウィルオブ・ワーク インタビュー

今回の「THE LEADERS」は、お楽しみいただけましたか?本シリーズでは、今後も各業界で活躍するインサイドセールスのリーダーをお招きして対談を行ないます。次回もぜひ、ご覧ください。
過去のインタビュー記事はこちらから

この記事の著者WRITTEN BY...
スマタイ編集部
スマタイの記事を制作している編集部です。
不定期でマーケティング、インサイドセールス、営業支援に関する最新の情報を発信していきます。

インサイドセールス支援のサービスについて知る

インサイドセールス運用支援

リードの発掘や商談化、既存顧客への継続的なアプローチまでお任せください。インサイドセールスのスペシャリストがお客さまに代わって施策を提案・実行します。

インサイドセールス立ち上げ構築支援

お客さまの事業戦略や組織体制に必要なインサイドセールスの仕組みを早期に立ち上げ。自社でテストを行い、成果が出た内容を用いて組織基盤の構築を支援します。