Inside Sales Summit 2023 [Spring]イベントレポート #ISサミット
内勤営業とも呼ばれるインサイドセールスは、他企業の従事者と交流できる機会が多くありません。 加えて就業環境のオンライン化により、 相互のコミュニケーションを図ることが近年さらに難しくなりました。
当社SALES ROBOTICSは、こういった従事者の交流不足を解消すべく、 学びを共有・発散し、つながりを持つことができるオフラインイベント「Inside Sales Summit 2023 [Spring]」を2023年5月23日に開催いたしました。
スマタイでは、当日のセッション内容や懇親会の様子をレポートしていきます。
(執筆:高橋 裕大 編集:冨田 貴徳 撮影・動画編集:UUWorks)
当日のセッションの様子は、YouTubeにて公開しています。
※本動画は、一部音声が聞き取りづらいため、全編字幕を設けております。
Inside Sales Summitとは
Inside Sales Summitとは、SALES ROBOTICSのコミュニティブランド『※Inside Sales Hub』による、インサイドセールスを「学べる、交流する、発散する」すべての”つながり”を提供するオフラインイベントです。
セールスやマーケティングのリーダー、業界の専門家による最新のトレンドや事例、ビジネス成果を共有するセッションから参加者同士の交流など、ビジネスに役立つ関係を構築できる新たな「場」を目指すべく立ち上がりました。
※Inside Sales Hub
SALES ROBOTICSのコミュニティブランド。
「インサイドセールスに関わるすべての人や企業がつながる柱となる」をコンセプトに、インサイドセールスの新たな交流のカタチを創造し続け、インサイドセールス従事者が学び合い、つながることでインサイドセールスの更なる普及を目指す。
Inside Sales Summit以外にも様々なイベントを運営する。
記念すべき第一回目は、株式会社ユーザベース様のオフィスにて開催いたしました。
会場の設営から当日の運営までご協力くださったユーザベース社の皆様へ、この場を借りて御礼申し上げます。
第一セッション「インサイドセールス2.0時代 〜インサイドセールスに求められる変化と役割とは〜」
第一セッションでは、「インサイドセールス2.0時代 〜インサイドセールスに求められる変化と役割とは〜」と題して、インサイドセールスの在り方について言葉を交わしました。
登壇者(※並び順)
ウェルディレクション合同会社 CEO 向井 俊介氏(左)
約20年、IT業界において中小から大企業のB2Bの営業領域の職務に従事し、CxO等エグゼクティブに対するビジネスも多く経験。2019年に米App Annie日本法人のカントリーマネージャーに就任し、日本法人全体のビジネスを牽引。2020年7月よりウェルディレクション創業。B2Bセールスのアドバイザーとして上場企業からスタートアップまで、広く営業やマーケティングの側面から企業のビジネス成長に貢献している。
2023年社会構想大学院大学実務教育学修士号取得。営業の暗黙知を学術的に形式知化するための専門職研究を行う。
登壇者
株式会社RevComm 執行役員 営業統括 角田 潤彌氏(中央右)
慶應義塾大学環境情報学部卒業後、日本コカ・コーラやデロイトトーマツコンサルティングをはじめ、世界的なリーディングカンパニーにてマーケティングやM&A、事業再生を行う。その後、ベンチャー企業を中心とした新規事業開発や上場企業での取締役CFO/CHRO/CSOを歴任。
共著に「銀行員のためのM&A入門(銀行研究社)」
テーマ1「連携部署から見たインサイドセールス」
いいたか:
向井さんの思う「連携部署から見たインサイドセールス」は、どのような組織でしょうか?
向井:
私は、「インサイドセールスが思うように受注に繋がらない」という相談をよく受けますが、そのような組織に共通していることは、インサイドセールスの役割を「アポ取り(=テレアポ)」と捉えているということです。
インサイドセールスという仕事の概念が組織に定着していないと、どれだけセミナーや展示会でたくさんの名刺を獲得したとしても、思うような受注は創出できません。
まずは、自社の営業プロセスにおけるインサイドセールスの役割は何かを定めなければいけません。
連携部署の視点で言えば、インサイドセールスの役割が定まっていないとフィールドセールスはとにかく忙しくなり、疲弊します。アポイントはたくさん供給されるけど、お客様には冷たい反応ばかりされるという状況が続くからです。
しかし、一番不幸なのはお客様です。 情報交換という口実のもと、いきなり電話がかかってきたと思えば、半ば無理矢理アポイントに応じるよう迫られ、営業がいきなり売り込んでくる。こんな「最悪な顧客体験」をさせられたら、お客様は離れていきます。当然、メルマガを送ってもオプトアウト(配信停止)されるわけです。
このような誰も幸せになれない状況が、多くの企業で起きていると思っています。
いいたか:
向井さんの実体験を踏まえたお話だったと思いますが、インサイドセールスの役割がアポ取りになってしまっている企業は感覚値で、どのくらいいると感じていますか?
また、なぜそのような構図になってしまうのでしょうか。
向井:
感覚値ではありますが、7割8割ぐらいの企業がインサイドセールスにアポイント獲得の業務を課していると思います。「アポイントを獲得することがインサイドセールスの仕事ではない」と明言されている方は、極少数という印象です。
次に、そうならないためにどうすればいいのかという話ですが、インサイドセールスという役割を職業として捉えている会社がすごく多いです。
昨今、 インサイドセールスの雇用も増え、色々なジョブディスクリプションが書かれていますが、ここに書いてあることの多くは、「見込み顧客に対する接触を試み、そしてアポイントを獲得して商談の創出を手助けをする職業」といったものです。
しかし、インサイドセールスはただの職務(役割)でしかないです。職業で言えば、営業職です。受注をして直接的に「売り上げを上げる」という活動に関与している以上、営業職です。
つまり、営業職という職業の中で、役割として特定の職務に注力するという言葉の意味を理解してインサイドセールスを捉えていくことが、部門間の衝突を防ぐ解決策につながると思っています。
いいたか:
ありがとうございます。
マーケティングの立場から見たインサイドセールスの役割について、戸栗さんはどうお考えですか?
戸栗:
向井さんのお話にもあった、インサイドセールスがアポ取り部隊になってしまうのは、リード不足という背景があるからだと思っています。そういったインサイドセールス部門の方たちは、マーケティング部門と連携をした方が良いです。
インサイドセールスは、お客様がどういう情報を求めているのかをキャッチしやすい部署です。その情報をマーケティングへフィードバックすることで、リードの質は徐々に改善します。リードの質が改善されれば、1回の電話でお客様と長く話せるため、お客様の状態に合わせて、次の部門へパスするかしないかの判断ができるようになります。
アポ取り部隊なのであれば、件数をこなすことはすごく重要かもしれないです。
一方で、そこから脱却するためには、インサイドセールスとマーケティングが、「お客様がこういう状態だから、こういうコンテンツが必要なんだよ」といったコミュニケーションをする必要があると思います。
向井:
マーケティングとインサイドセールスの連携が必要だということは分かっていても、連携が上手くいかないという企業も多く存在します。その背景には、組織間の壁やレポートラインの違い、KPIの違いなどが挙げられますが、どうすれば連携が上手くいくのでしょうか?
戸栗:
私が上手く連携できているなと思う企業は、インサイドセールスがマーケティング部門内に所属しているというケースです。部門の責任者同士で話をしたり、現場間でコミュニケーションを取ることができる体制です。
逆に、インサイドセールス部門が営業部門に所属していた場合、営業部門長からマーケティング部門長への連絡を経て、現場のマーケターへ情報が届くので、組織間の距離が遠くなります。
少し特殊ケースかもしれないですが、創業期のハブスポット社(日本法人)では、営業メンバーが自分たちでマーケティングを模擬体験するということをやっていました。
具体的には、どういう風にリードが入ってくるのか、 コンテンツを作るのはどれくらい大変なのか、どうすれば実際にお問い合わせが来るのかといったことを擬似ビジネスという形で行っていました。
そういった理解が深まれば、インサイドセールスの方たちもマーケティングが実行している施策ごとに、すぐにリードパスされるのか、リードの質が低いのか高いのかといったことが想像しやすくなります。
このように互いの組織の理解を深めていくと、連携もうまくいくと思います。
いいたか:
私の前職である、ホットリンク社にはCMOとして入社したのですが 、マーケティングとインサイドセールスが分業されてることにすごく違和感を持っていました。私が入社するタイミングで、「絶対に一緒にしなければいけない」と役員陣を説得して同じ部署にしたことを覚えています。
インサイドセールスのKPIは、リード数やアポ数など、数字として分かりやすい指標を置きたくなってしまいますが、ホットリンク社は有効商談数をKPIに置いていました。
ただ、有効商談数を追うことで商談の確度は上がっていくのですが、母数は減ってしまうため、役員陣は不安を抱いていました。私の場合は、あるべき論から伝え、全ての組織体制を変えていきましたね。
このような意思決定は、トップ層がいかに推進していくかが重要だと思います。
角田:
役員陣はデータを見て意思決定をします。 データを見ることで、THE MODEL型の組織で何が問題になっているのかが分かるため、企業として答えを共通言語化できます。これができているからこそ、組織を変える機会がやってくると私は信じています。
いいたか:
DXしているという企業は多いですが、実態は※デジタイゼーションということもしばしばありますよね。
角田さんは、連携部署から見たインサイドセールスをどう捉えていますか?
デジタイゼーション
アナログで行っている特定の業務(データ)をデジタル化させること。
デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するために必要な要素。その他の要素として、デジタライゼーションがある。
角田:
実は私、結婚相談所で役員だった経験があるんですが、インサイドセールスも結婚相談所と全く同じだと思っています。結婚相談所は、互いに幸せになれる人をマッチングさせる役割を持っていますが、それが上手くいかなければ結婚しても不幸になるだけです。
インサイドセールスも同様に、自社と顧客のマッチングが上手くいかなければ、向井さんが仰っていた不幸な人(顧客)を作ってしまいます。
インサイドセールスはマーケティングと話をして、どういう人たちに対してコンタクトするべきなのか、なぜ自分たちが幸せな結婚を作れるのかということを確固とする役割を持っています。
それができていないと、バリュー”レス”チェーンになってしまうわけです。
これらの理由から、連携部署から見た時のインサイドセールスは、ただのアポ取り部隊ではなく、マーケターであって欲しいですし、本当にいいものを提供できるお客様たちのことを理解して、アポイントを獲得して欲しいですね。
向井:
米国では、マーケティングは「商売全体の設計」という広い意味で作られており、営業活動はマーケティングの下位概念だったのですが、日本では「プロモーションを担う」という意味になってしまっています。
角田さんが仰ったマーケターというのも、いわゆる広い意味でのマーケティングの意味なので、営業職とほぼ同義と捉えていただけると良いと思います。
いいたか:
角田さんのお話にあった結婚相談所の話の例えで言うと、お客様は「結婚したい」というニーズが顕在化されており、結婚のための予算もある状態です。この前提があると、売り手側は「お客様と真摯に向き合うべきだ」という共通認識を持てるはずです。
しかし、なぜかBtoBになると、顧客を無視し始めるということが度々起きてしまっているなと感じてしまいます。
テーマ2「インサイドセールスに何が求められているのか」
いいたか:
インサイドセールスには何が求められているのかについても、それぞれの視点があると思っていますので、ぜひ皆さんの考えをお聞かせください。
今回は挙手制にします(笑)。
向井:
(無言で手をあげる)
いいたか:
さすがです。
向井:
これからする話は、全ての営業活動において通用するわけではないです。どちらかというと、購買難易度(営業難易度)が高い商材は特に、顧客体験を意識した方が良いと思っています。
お客様の立場から見た購買は、大きく分けて3つあります。
1つ目は、「これがないと仕事にならない!」というものです。
2つ目は、「連続性のある成長を担保する購買」です。店舗を増やせば売り上げ増える、たくさん作ればその分売れるから生産設備をたくさん購入する、といった購買です。
3つ目は、「DXの文脈で語られることも多いSaaSプロダクトの購買」です。SaaSは、非連続の成長や改革をもたらすものなので、お客様は何をもって購買すればいいかわからないことが多いです。
そのため、売り手のみなさんには、お客様はどういう判断基準でどのように購入して設定すればいいのかがわからないという前提に立って欲しいです。一方的にプロダクトの話を伝えたとしても、お客様は「なぜ今これを買うべきなのか」という合理性や納得性を社内で合意形成できません。
合意形成をとってもらうプロセスが「顧客体験」であり、コンテンツや営業からのコミュニケーション、ウェビナー・ホワイトペーパーの中身、その後のインサイドセールスからの話の内容もすべて、合意形成の手助けとなる体験(コンテンツ)です。
このように顧客体験を設計していくことは、現代において大事なポイントだと思っています。
戸栗:
マーケティング視点ではありますが、良くも悪くもインサイドセールスと境界線を曖昧に(部分的に融合)した方がいいのではないかと感じています。
お客様や部門間でフリクション(衝突)が発生しないようにする方法として、THE MODELはすごく良いと思っています。横串の図を見ると部門との距離がスパッと切れているように見えますが、循環しているようなサイクル図を思い描いてみてください。
インサイドセールスとマーケティングがなるべく近くで働いて、それぞれのKPIを改善するために、部門同士で真剣に向きあっていけば、自然とお客様の期待を裏切ってしまうといったことも減らせると思います。
いいたか:
THE MODELは、分業化しましょうとは書いていないですからね。部門をしっかりと分けた方がそれぞれでKPIを追いやすいからという理由で、そのような組織体制にしてしまっている印象です。
戸栗:
あくまで、分業の図はそれを見やすくするために横並びになっているだけだと思いますね。
角田:
向井さんがおっしゃっていた通り、私もコンテンツを用意しなければいけないと思っています。そのコンテンツが行き着く先は、購買してくださる方の幸せです。その幸せを実現するためには、その人の価値観を徹底的に理解しなければいけません。
一方で、セールスやマーケティングの時間は有限なので、いかにそこへ最短距離でいけるのかということがTHE MODELが広まった理由だと思っています。
そのためには、過去の統計データを見て「人間理解」を深めていくことが重要であり、それぞれのコンテンツにおいて何を提供するのがベストなのか考えていく必要があると思います。
向井:
お客様に聞けば、困ってることは分かりますが、なぜ困っているのかという原因はお客様も分かっていないです。実は、これがすごく大きなボトルネックになっています。
例えば、原因不明の腰痛に悩まされたとしても、自力でその原因を特定するのは難しいですよね。これはお客様も同じで、売り上げが伸びないという問題は分かっているけれど、なぜこうなっているのかという原因探求はすごく難しいんです。
その原因を特定しに行くために、私たちは営業活動としてどういう体験を提供できるのか、どういうコンテンツが原因特定にお役立ちできるのかと考えていただくと、具体的なコミュニケーションイメージが湧くと思います。
いいたか:
営業パーソンやマーケターがコンテンツを出し分けるときに、そのお客様が求めていることに対して、どれだけ正しい問いを出せるかが重要ということですよね。
向井:
そうそう。「痛い」って言った時に、この薬効きますよと言われると、すごく怪しいじゃないですか。
そうではなくて、「なんでそうなったのか」「どう解決したいのか」とか、問いを投げかけ、似たような問題を抱えていた他社は、どうやって解決したのかを提案して欲しいんです。
そのような対話が、部門間を跨いで行われているかどうかは、ぜひマネジメント層の方には意識して取り組んでいただきたいと思っています。
いいたか:
一人の顧客を見ていくというのは分かっているものの、どう実行すればいいか分からない方も多いと思います。ユースケースなどはありますか?
戸栗:
弊社がマーケティング支援をする際は、とにかくペルソナやカスタマージャーニーを作っています。
ペルソナを作る上で気をつけて欲しいことは、必ず相手の職責を書くということです。職責が書いてあって、何を解決したいのかということを明確に書かないといけない。これができていないと「弊社のソリューションは〜」という話をしてしまうんです。
こういったペルソナを作るためには、お客様と対話して仲良くなるしかないと思っています。お客様の業務に対して、解決できることがあるのかをとにかく言語化していくんです。
これができれば、インサイドセールスやマーケティングの精度は高まりますし、お客様とのフリクションが起きて失注ということも無くなります。
いいたか:
毎回そういう話に行きつくなという感覚はありますね。
自分たちのプロダクトが、誰の何をどう解決できるのかという解像度を上げて、一人のお客様と向き合うことが大切ですよね。その方を幸せにすれば、そこから輪が広がっていくということに気づけていない企業はまだまだ多いと思います。
角田:
「お客様のことを『知っている』『理解する』『行動する』」というフェーズに分けたときに、『知っている』で止まってしまっている方がすごく多いなという印象です。
うまくいってる人たちに共通していることは、解決するに至るまでに自分の思い込みだけで動いていないということです。
思い込みで「これが課題です」と言って蓋を開けてみると、全然違ったという経験をしている方も多いと思います。
一方、うまくいっている方は、早い段階でお客様に聞くんですよね。
向井:
私は、ICCというイベントで営業のワークショップ担当しているのですが、参加者40名の方に皆さんの顧客は誰かを書いてみてください、というお題を出しました。
そうすると、38名の方が「年商△△億円以上の〇〇業の××部門」という回答だったんです。実はこれ、顧客じゃないです。顧客どころかターゲットですらなくて、ただのセグメントなんです。
何が言いたいかというと、BtoBにおいてもお客様は「ヒト」です。
どの人に対して何をしたいのかということを明確に定義するところが一歩目なので、皆さんも特定の個人を特定するというところに集中してみてください。
いいたか:
お客様の解像度を上げるというのは、顧客となるヒトを見るという意味ではすごく良いですし、プロモーションでもポジティブに作用します。
なんとなく言ってることはわかるけど、よくわからないみたいなホームページの会社って多いじゃないですか。顧客解像度が低いから、表現がふわっとしたり、なんとなくこの辺の課題がありそうだなという、抽象課題も入れていくケースが非常に多いなと。
お客様からすると、どこに頼めばいいのかわからない問題が発生するんですよね。
顧客解像度が低いと、本当に来てほしいお客様が来ないですし、実際にこういうことはよく起きているんだろうなと今の話を聞いて思いましたね。
質疑応答
マーケティングチームが顧客解像度を高めるためには
質問者A:
弊社のマーケティングチームは、顧客解像度が低いという課題があります。どうすれば、顧客解像度を高められるのかをお伺いしたいです。
戸栗:
マーケティング部門は、顧客解像度が低くなりがちです。私も過去、マーケティング部門にペルソナを書いてもらうことがありましたが、職種すら間違っており、驚いたことを覚えています。
前提として、顧客解像度はそれくらい低いものだということを理解していただきたいです。
なぜこのようなことが起きるかというと、お客様との接点が少なすぎるからです。営業に同行させた方が良いという話もよくありますが、絶対に同行させた方が良いです。商談同行が難しいのであれば、商談録画をとにかく見ることをおすすめします。
お客様のことを理解していないと、いいたかさんのお話にもあった「よくわからないホームページ」ができてしまいます。なぜなら、お客様と会っていないから。お客様がどういう場所で仕事をしているのか、どういう瞬間に困るのかも分かってないため、できるだけマーケティング担当者を外に連れ出すと良いです。
当たり前ではありますが、解決方法はこれしかないと私は思っています。
角田:
マーケターにカスタマーサクセスを兼務させると成果が出るという面白い事例もありますよね。
戸栗:
これはいいですね。
角田:
その人のミッションを50%ずつに分けて設計していくというものですが、THE MODEL型の組織などでいう隣の部門と兼務させることで、当人は自分ごとに捉えるようになります。
実際に成果が出ている事例なので、ぜひ試してみてください。
質問者A:
参考になりました!ありがとうございます。
お客様のペインを解決していくための営業活動で意識することとは
質問者B:
弊社は、建設業界への人材派遣会社ですが、人がいないという課題に対してソリューションを押し付けてしまいがちです。このような業界で、お客様のペインを解決していくためには、どのような営業活動を行えば良いのでしょうか?
向井:
そこまで特殊な話でもないと思っています。例えば、「たくさん受注したけど現場が回らない」といったものは、大問題ですよね。お客様はその問題を解決しなければいけないわけですが、解決のための選択肢は派遣の人を雇うことだけではありません。
人が足りないというのは1つの要素です。
原因として考えられるのは、オペレーションや工事を遂行するプロセスかもしれません。
つまり、1番最初にやらなきゃいけないことは何かと言うと「 自分たちの売り物はお客様の問題を解決する選択肢の1つにすぎない」と思うこと。
もう1つは、お客様が抱える大きな問題の原因になっているものは他に何があり得るのかをお客様に聞くことです。
インサイドセールスがコミュニケーションを取るときには、「自分たちはどういうビジネスをしている者です」という自己紹介は必ずしてほしいのですが、「人が足りなくて困っていませんか?」という質問はNGだと思っています。他に困っていることがないかを聞いて欲しいです。
仮に、自分たちで直接サービスを提供できなかったとしても、お客様に解決策を1つでも提供できたのであれば、良い営業活動です。
これは、どの商材にも通用するアプローチ方法なので、ぜひ参考にしてみてください。
質問者B:
ありがとうございます。非常に参考になりました。
会えないお客様を知るためには、どうすればいいのか
質問者C:
個人の特定が重要なインサイドセールスとしては、今回のような交流会の場は相手の情報を細かいレベルまで理解できるため、非常にありがたいと思っています。
一方で、このような場では会えない方達にアプローチをする際、Webで探しても職責やミッションなどが見当たらないため、個人の特定やアプローチ先の選定が難しいと感じております。これらを解決するテクニックなどあればお伺いしたいです。
向井:
既存のお客様がいる場合といない場合で、大きく分かれると思っています。
まずは、ペルソナを定める必要があります。ペルソナの解像度を上げていくプロセスとしては、既存顧客の中でペルソナに最も該当する方に、とにかく話を聞いていきます。FBIのプロファイリングのように、好きなお酒や乗ってる車、週末の過ごし方なども含めて、既存顧客とコミュニケーションを取っていきながら解像度を上げていくイメージです。
ペルソナを定めてしまえば、その人の意識変容と行動変容をこちらで設計していけば良いだけです。
一方で、新サービス立ち上げや新規事業、スタートアップなど既存顧客がいない場合は、一旦ペルソナを描いて、お客様と対話していくしかないと思っています。
描いたペルソナに対して、コンテンツや情報提供を行なっていき、何かしらのリアクションをしてくれた方に、「なぜこのコンテンツを読んでくれたんですか?」と質問を投げかけながら、ペルソナの解像度を地道に上げていく方法です。
まずは「誰をお客様にしたいのか、それはなぜなのか」という視点で考えることを軸として持っておくと良いと思います。
角田:
私は、どこかしらでお客様に会っていると思います。
こういう場には来ていなくとも、居酒屋で『百年の孤独』を飲んでるかもしれません。であれば、そのマーケットにアクセスすれば良いのです。
既存顧客であまり表に出ない人たちの多くが『百年の孤独』を飲んでいるのであれば、『百年の孤独』と一緒にプロモーションすれば良いわけです。
要するに、その人たちの行動のどこにフックがあるのか、どこで関係を作れるのかを考えるということです。お客様の行くところを特定して、そこに対してコミュニケーションをすれば、今日この場で会わなかったとしても、どこかで必ず会えると思います。
質問者C:
ありがとうございます!参考になりました。
お客様と対話するタイミングは、いつがいいのか
質問者D:
私は、インサイドセールスからカスタマーサクセスまで担当しており、顧客解像度を高めたいと思っています。その中で、ユーザーと仲良くなる必要性を感じていますが、 どのタイミングで、いつ対話するのかをイメージできていません。
カスタマーサクセスが打ち合わせの時に聞けたら良いなと思いつつ、それが本来の打ち合わせの目的とは違うので…。また、他のメンバーにもやってもらう場合、どのようにすれば良いかもお伺いしたいです。
いいたか:
タイミングは気にしていないです。お客様である以上、自分たちのプロダクトを使っていただいているので、 良い話を聞こうというのであれば、タイミングは重要だと思います。
一方で、「悪い声」も聞くべきなので、タイミングは一切考えずにリストアップして全員に聞いていった方が良いとは思いますし、私はそうしています。
向井:
目的によりますよね。今の質問は、仲良くなるというのが目的のコミュニケーションですか?
質問者D:
仲良くはなっている前提で、何が自社サービスの価値なのかを見極めたり、自社サービスを磨いていきたいという観点です。
向井:
であれば、タイミングは「すぐに」だと思います。
いいたか:
ただ、そこで本当に良い問いができているかが重要だと思います。自分たちに都合の良い回答を求めると、そのための質問になってしまうため、真の声をもらえないです。そのため、どちらかというと問いの設計が重要かなと思います。
角田:
何のために聞きたいかという説明がきちんと自分の中で言語化できているのであれば、お客様は必ず答えてくれると思います。
前提として、お客様の幸せを考える必要があります。評価制度をもとに部門のミッションを把握し、「だからこうしなければいけない」と考えを述べることができれば、お客様は心を開いてくれますし、自然と回答も得られると思います。
このような設計ができるのであれば、今この瞬間に聞けば良いと思います。
戸栗:
私は、お客様側の現場担当者や上長のMBO(マネージメント・バイ・オブジェクティブ)、職責のゴールの定量的な数値評価を全部見せてもらっています。お客様の得手不得手や、会社として何をしなければいけないのかを頭に入れた上で、自分が話している内容はどこに対応するものなのかを意識しています。
そうすると、自分の提供するプロダクトやサービスに拡張性を持たせることもできるようになるので、お客様に適したコミュニケーションが取れるようになるのではないかと思います。
向井:
実は、そこで気を付けてほしい大事なポイントがあります。
カスタマーサクセスという組織がある企業も多いですが、その人たちの目の前にいる方々は、「使う人」です。使う人たちにとっては、日々の仕事が楽になったり、怒られなくなったり、求められた仕事がミスなくできたり、といったことを求めています。
一方で、「買う人」もいます。買う人は、日々の業務が楽になるとかはどうでもよくて、 この「ツール・サービス・プロダクト」を入れることで、自分たちの会社にどんな利益がもたらされるのかという観点で見ています。
使う人に対しては、「使っていて不便なことはありませんか?」「どのように使うとより良いですか?」という観点でコミュニケーションを取れば良いだけです。
しかし、重要なのは買う人です。買う人からどんな期待をされていて、何が足りていないのか、それはなぜかという観点が必要です。契約当初に目指していた利益や解決したい問題は、買う人からはどう見えているのかを埋めていかないと、突然チャーン(解約)が発生します。
ぜひ、買う人の意見を反映することを意識してみてください。
角田:
英語の書籍ですが「Strategic Selling」が、まさにそれを示していますね。※エコノミックバイヤーや、コーチという組織内の情報を教えてくれる人などが出てきますが、その人たちの利害関係をうまく調整すること自体が1つの仕事だと記されています。
エコノミックバイヤー
組織において「購入するための予算」「それを支出する権利」を持っている人のこと。
向井:
利害関係者が増えると、いつ会いに行った方が良いか、どのぐらいのターム(期間)で会いに行った方が良いのかといった、利害を判断する時間軸が違ってきます。
そのため、利害関係者が多くなると、その人たちがどのような判断軸や時間軸を持っているかによって、自分たちの活動を判断していただくと良いと思います。
質問者D:
ありがとうございます。
いいたか:
最後に私から一言お伝えして終わりたいのですが、 ご登壇いただいた3名とも「お客様」という言葉を使っていますよね。相手のことをちゃんと想っているからこその言葉だと思っていますし、そういう方はお客様の解像度が高いなという印象がありますね。
「客」「リスト」といった言葉は個人的に好きじゃないですし、お客様と向き合っている方の言葉にこそ意味があるんだなと再認識できました。
向井さん、戸栗さん、角田さん、本日はありがとうございました。
第二セッション「今、考えるべきインサイドセールス成功と失敗の変遷」
第二セッションは、「今、考えるべきインサイドセールス 成功と失敗の変遷」をメインテーマに、各社の実体験を交えてお話しいただきました。
登壇者(※並び順)
ベルフェイス株式会社 事業戦略本部長 岩田 恭行氏(左)
リクルートで広告営業からキャリアをスタートし、営業マネジメント業務を経験したのち、セールスフォース・ドットコムにてSFA・CRMを提案するインサイドセールスとフィールドセールスに従事。その後、BtoBセールス&マーケティングのコンサルティング会社である2BCの立ち上げに参画、執行役員兼コンサルタントとして営業変革/営業DX化プロジェクトを担当。
2019年よりベルフェイスへ参画。インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス部門を統括したのち、現在は事業戦略本部にて事業戦略構築・レベニュー管理を担当。
登壇者
株式会社マクニカ コーポレートマーケティング統括部長 堀野 史郎氏(中央左)
国内外のエンタープライズ向けソフトウエア・クラウドベンダーにてマーケティング・事業開発にマネジメントとして長く従事。2018年マクニカに入社し、現在は、コーポレート部門と事業部門の両方のマーケティング組織のマネジメントを担当。日本データマネジメントコンソーシアム表彰部会のリード役、皇學館大学特別招聘教授を務める。
成城大学文芸学部芸術学科卒業。UK, Aberystwyth大学 MBA。
登壇者
コニカミノルタジャパン株式会社
マーケティングセンター マーケティング企画部 部長 富家 翔平氏(中央右)
「営業プロセス改革×マーケティング推進」プロジェクトを牽引し、マーケティング組織の立ち上げを担う。マーケティングセンターの新設に伴い、全社マーケとして、事業部と連携した戦略的なマーケティング施策の実行による事業貢献に挑戦している。
BtoBマーケティング・セールスをテーマにしたイベントやセミナー、メディアへの登壇実績多数。
モデレーター
SALES ROBOTICS株式会社 代表取締役社長 CEO 有馬 康平(右)
ITベンダー企業の事業責任者を経て、SALES ROBOTICS社の「テクノロジーで日本の法人営業を変える」という理念に共感し、2017年1月に参画。取締役COOとして、マーケティング部門やアライアンス部門を管轄。セールスフォース・ジャパン社をはじめ多くのパートナー企業との連携強化に携わる。
2022年7月よりSALES ROBOTICS 代表取締役社長 CEOに就任し現職。
各社のインサイドセールスの取り組み
コニカミノルタジャパン株式会社
有馬:
まずは、各社からライトニングトーク形式で事業内容とインサイドセールスに関する取り組みについてお話いただきたいと思います。
富家さん、よろしくお願いします。
富家:
はい、よろしくお願いします。
富家:
早速ですが、弊社は営業と事業部に分かれており、事業部の中に営業がないという特徴がある会社です。私は、マーケティングセンターに所属しており、こちらも同様に独立した組織になっています。
富家:
インサイドセールスを2017年に立ち上げたのですが、一言で言うと「適応」の6年間でした。
弊社は、ニーズに応じてインサイドセールスの役割も変わっています。
最初は商談獲得だけが役割でしたが、そこからリード獲得や商談対応、商談支援など業務範囲が広がっていき、最終的には受注まで見るようになりました。今では、全範囲をカバーしている状態です。
富家:
事業フェーズによって、マーケティングやセールスを兼ねることがあったため、役割も変化しているイメージです。
リードを作る部署のほとんどがマーケティングですが、この部分もインサイドセールスでやると決めた事業があったり、商談や商談支援は事業部で行うところがある反面、インサイドセールスが担ってしまうこともあります。
このインサイドセールスの領域は、成熟している事業ほど、Aになります。
そして、新規事業であればあるほど、C, Dのような形になっていきます。特に、Dはチームに3人しかいないといった新規事業の立ち上げフェーズなため、インサイドセールスで全てカバーしています。
このように事業別でインサイドセールスの形態が異なっているのが、弊社のインサイドセールスの特徴です。
富家:
今現在、リードフォローの数が明らかに増えているのですが、相手からきちんと「認知」された状態で商談に「期待」と「信頼」を持たせるということに苦戦しています。
そもそもこれらができていないと、なかなか商談には繋がらないです。
マーケティング的な発想ですが、「認知、貢献、信頼・期待、商談」というこの4つのフェーズに合わせて色々なことをやっているのが、弊社の今のインサイドセールスです。
富家:
「セミナーに参加してくれたからフォローする」という流れを変えたいと思っています。つまり、弊社から能動的にコミュニケーションをするインサイドセールスにしていきたいということです。
一般的な定義とは少々異なりますが、SDRは「『コンテンツ』からさらに人を想起してアプローチするインサイドセールス」、BDRは「『人』からコンテンツを想起してアプローチするインサイドセールス」という形を目指しています。
例えば、SDRは「このコンテンツだったら富家さん喜んでくれるかも」という想起でコミュニケーションを行えるインサイドセールスを目指すことが、現在弊社がチャレンジしている部分です。
富家:
マーケティングセンターは、全社のコンテンツを拡充していく部署として、去年立ち上げました。この部署では「誰に・何を・どうやって」を軸にしたコンテンツ戦略と営業活動を実現していきたいと思っています。
富家:
商談機会を獲得するための超えるべきハードルに対しては、それぞれ軸を区切ってコンテンツを用意したうえで、コミュニケーションをしていきます。
上図右側にある、「商談」に近づくほど、セールスやインサイドセールスがコンテンツを個別でカスタマイズします。反対に「認知」に行くほど、対象の幅を大きく広げながら、マーケティングが多くの人にコンテンツを届けていくという線引きでやっています。
有馬:
5月18日にインサイドセールスプラスに掲載された、コニカミノルタ社の記事を読んだのですが、「顧客体験の向上こそがインサイドセールスの価値」という部分、我々としても非常に共感できる部分でした。
ベルフェイス株式会社
岩田:
弊社は、今でこそ「5年連続No.1!金融業界のシェアも約7割!導入企業多数!」とお話しできるのですが、コロナによる大逆風を受けました。
コロナ禍の直後は、オンラインの営業ツールとして、月に1万件近くオーガニック(自然検索)から流入があるという時期もありましたが、徐々にホリゾンタルな領域では戦えなくなっていきました。
オンライン営業は、Zoomなどのウェブ会議システムが市場をとっている中で、弊社は、BtoBtoCの領域や金融業界といったバーティカルな領域に事業をピポッドして、何とか立て直しました。
岩田:
上図のメディアでは、インサイドセールスのやり方を変えつつ、新しいプロモーションを見つけて、復活したというところを経営含め、全社で取り組んできたということが書かれていますので、機会があればご覧ください。
当時、非常にピンチな状況下にいたため、そもそもの顧客の価値やコアバリューのところからプロダクトの移り変わり、マーケティング・インサイドセールスの改革を短期間で行うなどしていきました。
岩田:
前提としてですが、弊社は事業自体がホリゾンタルに提供するサービスでしたが、直近1年半の間で金融・リテールなど、BtoCの領域へとマーケットを根本から変えてバーティカルに尖らせていきました。
弊社のインサイドセールスモデルは、顧客の大半であったSMB企業のインバウンドリードの対応をするSDRの形から、エンタープライズ企業へのBDRへと対極に変化しました。
また、事業のKGIも「売上を伸ばす」というところから、「いかに利益を出せるか、生産性の高い組織でいられるか」へとシフトしたのも大きな変化です。
有馬:
先程、岩田さんから紹介のあった、ベルフェイス社中島社長のハードシングス、個人的に大変興味深い話でした。この危機的状況を乗り越えた中で、インサイドセールスがどういう役割を果たしてきたのか、失敗談を踏まえてこの後お話いただきたいと思います。
株式会社マクニカ
堀野:
上図は、弊社のインサイドセールスの変遷図です。私が入社した2018年に、新事業のチームとサイバーセキュリティ事業のチームと一緒に、リードマネジメントのプロセスを立ち上げようとしました。
2018年以前はカンパニーが7つあり、MAツールやWebサイトはバラバラで、隣の部門は敵みたいな状態でした(笑)。このように、社内でもやっている内容がバラバラだったのですが、これを1本にまとめていくことになりました。
リードマネジメントを立ち上げるということで、MAツールとインサイドセールスをセットで立ち上げた方が良いと説得しながら推進していきました。
長期休暇明けの営業メンバー2名から「インサイドセールスだったら営業職のまま活躍できるんじゃないか」との相談を受けて、3名体制で立ち上がりました。外部支援を通じて教えていただいたノウハウを取り込んだり、トレーニングしていただいたりする中で、徐々にインサイドセールスが形になっていきました。
堀野:
弊社では、BDRはアウトソーシング、SDRは内製という形で運用しています。
また、業務ツールも共通基盤化したり、若手のフィールドセールスを巻き込むというところも、インサイドセールスの1つの役割としてあると思っています。
マーケティング・インサイドセールス・セールスで役割分担をして、上図のようなフローで運用しています。
堀野:
上図のようにリードの状態を定義・構造化もしています。
私自身が、コンサルタントの方のようにノウハウがたくさんあって実装していったというよりは、事業ごとに現場の人と会話をしながら、各部門でそれぞれの事業に合うインサイドセールスチームが立ち上がるような支援を行ってきました。
有馬:
今回、堀野さん、富家さんはマーケティング専門領域のため、マーケターからの立場で、岩田さんは全てをご経験されていますが、営業が主戦場とのことで、マーケティングとセールスの両方の視点からお話を伺いたいと思います。
テーマ1「マーケティングとインサイドセールス ナーチャリングの違い」
有馬:
1つ目のテーマの『マーケティングとインサイドセールスのナーチャリングの違い』についてですが、お申し込みいただいた際の事前アンケートでも、ナーチャリングに困ってるという方が圧倒的に多かったです。
「そもそも顧客育成やナーチャリングはどういうものなのか 」という部分は、企業によって定義が異なると思います。各社の定義であったり、それに対する取り組みや、データ活用をどう行っているのかなどもお話をいただきたいです。
富家:
ナーチャリングの意義は本当にシンプルで、「お客様が困った時に、第一想起してもらえる存在になるために、貢献すること」これに尽きるかなと思っています。
マーケティングが言うナーチャリングと、インサイドセールスが言うナーチャリングで違うのは、1人1人のお客様と向き合うこと(バイネームでのフォロー)が必要かどうかだと思います。
例えば、「富家さんに向けて」という形で、バイネームでこの活動をどれだけやりきるかということが、インサイドセールスが考えるナーチャリングだと思っています。
一方で、マーケティングの場合は、アプローチする対象がかなり大きくなります。もっと言うと、ハウスリストの外にいる人たちに対して仕掛けていくというのが、マーケティングの大きな役割かなと思います。
有馬:
堀野さんはいかがですか?
堀野さんがよく言われる、「BtoBマーケティングにカスタマージャーニーはない」というお話しも記憶に残っているのですが。
堀野:
私は、カスタマージャーニーを設定しても自分の思った通りに全然いかないですし、お客様も思った通りには動かないと思っています。
ナーチャリングは、アカウントの発想だと思っています。
弊社のマーケターはマスマーケティングで動くことを求められていて、インサイドセールスの方は、アカウント(ターゲット企業)に対してしっかりコミュニケーションをとっています。
いい点も悪い点もありますが、それぞれの得意な領域を駆使しながらナーチャリングにコミットしているのではないかなと思います。
有馬:
富家さんがおっしゃっていた、コンテンツをどうお客様に訴求していくのかといったことが重要だということですね。
岩田さん、先ほどもお話がありましたが、ホリゾンタルからバーティカルにターゲット設計を変えたり、直販からパートナーセールスにセールスモデルが変化した過程で、インサイドセールスの役割も変わってきていると思います。ABMを実践されていると思うのですが、その中でもナーチャリングの概念や定義に変化はあったのでしょうか?
岩田:
ありがとうございます。おっしゃる通り、バーティカルで業種を絞り込んで、かつ、規模を大きくしていくというターゲティングをしたことにより、 社内では「ナーチャリング」という言葉を全然使わなくなりました。というのも、マーケティングとインサイドセールスの垣根をなくしているので、この「ナーチャリング」というテーマ自体がなくなっています。
基本は、会社が定めた企業にのみに1年間営業すると決めるので、営業が全ての企業のアカウントプランを作ります。そして、そのアカウントプランに書かれてる内容の一部をマーケティングやインサイドセールスにお願いして遂行していきます。
アプローチした結果によって、アカウントごとの次のアクションがそれぞれ変わり、各部署で担う役割も変わっていくという方針です。それがある意味「ナーチャリング」と呼べるかもしれません。
重要なことは、富家さんがおっしゃったように、アカウントプランで「その企業の、どのセクションの、誰に、今何を届けたらよいのか」というところを考え尽くすということだと思います。
そのため、いつかそのターゲット企業が、我々が描いてるプランに振り向いてもらえるように、 あの手この手でやっていくというところを価値観として大事にしています。
有馬:
ありがとうございます。各社のナーチャリングの定義や考え方のイメージが湧きました。
テーマ2「インサイドセールスしくじり談」
有馬:
それでは、次のテーマである「インサイドセールスしくじり談」に移りたいと思います。
各企業がさらにインサイドセールスを発展させている状況の中で、改めて「インサイドセールスのしくじり」について深掘りできたらと思います。組織面や扱ってるツール、人の育成・評価などからカテゴライズしてしくじり話をいただければと思っています。
岩田:
しくじりは、本当に山ほどありました。事業がピンチになった時でいうと、コロナによってビジネスが大きく変わった当時は、当月に非常に多くの商談を獲得できているのに、解約が山ほど生まれるといった時がありました。
この状況は異常だと思っています。
ただ、インサイドセールスからすると、問い合わせも来ているし、商談も取れるし、数字も達成しなきゃだし、営業も待っているし…といった考えが生まれるわけです。
その時は、売ることだけに意識が向いてしまっていたため、顧客の声を聞いたり、受注後の成功体験を提供するなど、継続していただくということに本気で向き合えていませんでした。
インサイドセールスは実際に顧客とコミュニケーションをとる最初のフロントの役割もあるので、顧客の声からマーケットの変化にいち早く気付くとか、事業の歪みみたいなものにインサイドセールスが気づけていたら、傷は浅く済んだかもしれないなと。
極端ではありますが、インサイドセールスの役割には、経営やプロダクトへいち早くお客様の反応や要望を伝えられる機能もあると思います。当時は、アポ数などをKPIにおいていたこともあり、目の前の人に集中しすぎてしまっていました。
有馬:
部門のKPI、KGIは達成しつつ、セールス、マーケティング、カスタマーサクセスを含めた、共通のゴールが設定されていなかったということですか?
岩田:
おっしゃる通りです。
当時は、インサイドセールスチームは300%達成しているけれど、契約更新の部分はとんでもなく未達という異常な事態を招いてしまっていました。それが、申し訳なかった失敗の1つですね。
ちなみに今期はインサイドセールスの目標の一部に「事業計画の達成」というものも入れました。
有馬:
富家さんのnoteを拝見しましたが、KGI,KPIの部分に触れていたと思います。そのあたりで、しくじりの経験はありますか?
5年間やってわかった、BtoBマーケターがやるべき仕事の全体感
富家:
ありがとうございます。
しくじりのお話をする前に、ぜひ皆さんに聞きたいのですが、「コールしないインサイドセールス」は存在してもいいと思いますか?
これがKGI, KPIという話に繋がるのですが、商談数やコール数などのKGI, KPIを立てなければならないという幻想に囚われてる人がたくさんいると私は思っています。
インサイドセールスを立ち上げ後、さまざまな状況が変化していく中でアンラーニングする瞬間(新陳代謝をはかる時間)とそれに合わせた目標の再設計が必要なのに、その適応に遅れを取ってしまうことがあったのも事実です。
そうすると、やはりKGI, KPIに対して進捗を見て、数字がどうだったかという部分だけに対してフィードバックを始める。
本来、インサイドセールスの役割というものは、お客様から商談機会を頂くことで、その手段というのは何でもいいはずなのに、コールしないインサイドセールスというものが許容できなくなってきます。
目的に合わせてKGI, KPIをセットしないといけないにも関わらず、インサイドセールスに関する理解が深まったからこそ、そこから脱却できないっていうことが今まさに弊社で起こっていることですね。
堀野:
すごいですね。
弊社でもたくさんありますが、もっと根本的な失敗について話したいと思います。
ある日、マーケティングから渡したリードを見ていると、インサイドセールスがフォローコールするタイミングが異様に遅かったんです。疑問に思って、「プロセス見せて」と現場に聞いたら、7営業日くらいかけてやっとコールするという驚きの状態でした。
なぜ、ここまで遅れたのかというと、プロセス上にいる営業やプロダクト担当営業、インサイドセールスが「このリストに、このデータ情報を付与してほしい」など、それぞれリクエストをしていたんです。フォローコールはすぐにするべきなのに。
時間の無駄なのでプロセスを変えたのですが、これはものすごい失敗ですね。
架電する時に、色々な情報が付加されてないと怖い気持ちは理解できますけどね。とはいえ、スピードに勝るものはないなと。
有馬:
ありがとうございます。
富家さんから、インサイドセールスって電話しないといけないの?といった質問がありましたが、色々な変遷を経て、様々な工夫をされてきたんだと思います。
富家さんは、どういう経緯を通じて今の考えに行きついたのでしょうか?
富家:
コール後に商談を獲得できる難易度が、明らかに上がっているなと感じています。
コールの接続はもちろんのこと、接続してからのコミュニケーションも難しいですし、とはいえコール数を増やすというのもしんどいですよね。この改善策として考えられることが、個人単位での工夫や努力なのかなと思います。
いきなり「初めまして」と言われた人から商談を打診されるのは、顧客体験としても気持ちよくないですし、こういうことを1個ずつやめていこうよって思っています。こういった違和感を減らして、いきなり商談獲得ではなく、色々なバリエーションがあった方が良くなる。
また、自分たちだけで提供できるものを考えるのではなく、営業やコンサルタントの方に協力してもらって、本来はお金がかかる商材の一部だとしても、無料でお客様に何か提案できないか、ということに時間を使う。
もちろん、数字で見れば活動量は下がりますし、 活動量が下がると成果も下がります。
しかし、インサイドセールスに従事される方がどんどん増えていく中で、それぞれ得意なことで、インサイドセールスとして活躍できる環境を作らないと組織がスケールしていかないし、持続可能性のある頑張りに繋がらないと思っています。
そのため、お客様に対して適切な選択肢を用意するということは、「インサイドセールスとして活躍できる幅が広がること」になります。
私は、これがすごく理にかなっているのではないかと思っています。
有馬:
どの企業も意外と泥臭く、地道な努力や改善を積み重ねていきながら今の組織が出来上がっているんですね。
堀野さん、岩田さん、富家さん、本日はありがとうございました。
茂野さんの乾杯の挨拶から始まった懇親会
懇親会では、イベント参加者100名と登壇者たちが、ドリンク片手に名刺交換や情報交換など活気に満ち溢れました。参加者の中には、SNSを通じて認知していた有名人と実際に会えて、話すことができたと喜ぶ方も。
まだまだオフラインの交流の場が少ないインサイドセールスだからこそ、新たな出会いや発見があったようです。
(セッションが白熱し時間が少なくなってしまったのは反省です・・・。)
参加者からの声
Inside Sales Summit 2023 [Spring]は、Twitterでも盛り上がりを見せました!
参加者のリアルな声は、#ISサミットでご覧いただけます。
来ましたー!🤍
— あべはる⚾️ / Abe Haruna (@Haruna_abeSS) May 23, 2023
ユーザベースさんの新しいオフィス初!#ISサミット pic.twitter.com/o6iTuz0B5L
おはようございます☀️
— 名嘉(なか)@しまんちゅ×インサイドセールス🤙_識学 (@naka_story) May 23, 2023
今日はスッキリ晴れて最高です!
昨日の #ISサミット はTwitterで一方的に知ってる方も多くて、数名の方には直接ご挨拶できて良かった!ただ、できなかった方も多くいて残念。昨日学んだことは今日からでも地道に実践ですね。ユーザーベースさんのオフィスカッコよかったなー! pic.twitter.com/z3hYtcvpy2
ISサミットに参加して思ったのは、登壇者の方々みたいな思考を当たり前のように持ちたいということ。聞いて気付かされることが多いうちはまだまだ足りず伸びしろがあるので、その思考回路を自分の頭に根付かせて行動にも紐づけられるようにしたい。そしてさらに磨きをかけ発展させたい。#ISサミット
— 小村麻衣 | リフレクトル | 営業育成のマネジメントツール (@mk_cogrowth) May 27, 2023
昨日は #ISサミット に参加させていただきましたっ🥹✨ セッションから得た学びを早速社内に共有しました。色々な方とお話もできたので本当に楽しかった&嬉しかったです🥰
— 嶋﨑 愛咲美@iCARE IS (@81x_redx) May 24, 2023
素敵なイベントの企画運営、ありがとうございました!!
Special Thanks!
今回のイベント開催にあたり、ご協力いただいたパートナー企業をご紹介いたします。
「Inside Sales Hub」および「Inside Sales Summit」は、メディアパートナーを募集しています。詳しくは広報担当までご連絡ください。
SALES ROBOTICS株式会社 広報担当 中山宛
メールアドレス:pr@salesrobotics.co.jp
株式会社ユーザベース
株式会社ユーザベースは、経済情報プラットフォーム「SPEEDA」、営業DXソリューション「FORCAS」、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」など、企業活動の意思決定を支えるビジネス情報インフラの提供企業。
パートナー企業として、今回の会場をご提供いただきました。
Sales Zine
Sales Zineは、株式会社翔泳社が運営する、Sales Tech関連の情報を発信する無料のウェブマガジン。
メディアパートナーとして、イベントの様子を掲載いただきます。
質問「マーケチームの顧客解像度が低い。インサイドからどうアプローチできる?」
— MIYATA Hanae@SalesZine編集長 (@miyatahanae_sz) May 23, 2023
戸栗さん「なぜ起きるか。お客様の接点が少なすぎるから。営業同行はマスト。商談録画を見るでも。業界図解丸わかり的な書籍を読んで勉強するなど、最初の2ヵ月はとにかく顧客理解をしてもらう」
#ISサミット
その時々で正しく評価できる人がいるか……難しそうですね。それが分業で摩擦が生まれる問題にも通じる気もしてきた。リソースとマネジメントだ…… #ISサミット
— MIYATA Hanae@SalesZine編集長 (@miyatahanae_sz) May 23, 2023
Inside Sales Plus
Inside Sales Plusは、株式会社インサイドセールスプラスが運営する、具体的なナレッジ提供と各種サービスの比較を行う専門サイトです。
メディアパートナーとして、イベントの様子を掲載いただきます。
今日はとても久しぶりに大きなオフラインイベントへお伺いしたのですが、やはりエネルギーがあってとても良かった。(勝手に思っているが)友達にもたくさんあえて嬉しかったけど、時間がなくて先に失礼することになってしまったことが悲しい。皆さん、またお願いします。 #ISサミット
— しげの_インサイドセールスプラス (@insidesales_job) May 23, 2023
終わりに
インサイドセールスの新たな交流の場として開催した、第一回目のInside Sales Summitの様子をお届けしました。
本イベントに関するご意見や感想もお待ちしております。ぜひ、#ISサミットで皆さんの想いを届けてください!
今後も、インサイドセールスを盛り上げていくために、さまざまなイベントを開催してまいります。
次回の開催予定日は、秋頃です。乞うご期待ください!
不定期でマーケティング、インサイドセールス、営業支援に関する最新の情報を発信していきます。
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