インサイドセールス
KGI・KPI

インサイドセールスのKPI項目と設定方法を解説

インサイドセールスのKPIを設定することで生産性の向上や目標達成に必要なアクションを明確にしやすくなります。そのため、KPIに設定される項目や設計する方法を調査している担当者の人もいるのではないでしょうか。

インサイドセールスは顧客との関係値や信頼をストックしていくビジネスモデルであるため、KPIは信用を積み重ねるフェーズ毎に適切な指標を設定することが求められます。また、リード獲得から受注までは他部署との連携が必要になるため、都度話し合いをしながら定義をすり合わせ、KPIを見直していくことも重要になります。

当記事では、インサイドセールス導入企業で設定されるKPIや設計の方法を解説します。インサイドセールス部門の立ち上げや目標の見直しによってKPIの設計を検討している担当者の方は参考にしてみてください。

KPIはフェーズごとに設定する

KPIはフェーズごとに設定しましょう。フェーズによって顧客に対するアクションは異なってくるため、状況に応じたKPIを設定しなければ有効な施策を打てるようにならないからです。

【フェーズごとに設定すべきKPIの例】
アプローチ目的設定するKPI例
リード獲得・架電数
・会話成功件数
・会話成功率
・メール送信数
・メール返信数
・メール返信率
リード育成・選別・商談獲得件数
・商談獲得率
商談獲得・有効商談数
・有効商談率
商談・受注件数
・受注率
・受注金額
・受注単価
・失注数

たとえば、商談獲得のフェーズでは自社サービスに対するニーズが明確にあるなど有効な商談に繋げられた数やその割合をKPIとして設定するべきです。一方で、このフェーズにおいてもメールによる連絡は行われますが、顧客との関係性はある程度できあがっていることが想定されるためメールの送信数や返信率をKPIとして設定する必要はありません。

また、どのようなKPIを設定するかはビジネスモデルや企業文化によって異なります。架電によらずメールによってリードの育成をする企業では架電数や会話成功率の設定は不要であり、メールの送信数やメールの返信率についてKPIを設定して数字の管理をしていく必要があります。

設定したKPIはダッシュボードで管理しておきましょう。ダッシュボードで数値を管理することにより数値がリアルタイムで可視化されるため、各フェーズにおけるKPIの未達がすぐに判断できるようになり、対策をすぐに講じられるようになります。

【ダッシュボード例】

KPIと数値目標を設定する際はKGIから考える

インサイドセールスのKPIを設定する際は、企業の最終的な目標になるKGI(重要目標達成指標)から逆算して考えます。最終目標から段階的に考えることで、目標達成のために追うべき指標を明確にしやすくなるためです。

【KPI設定のイメージ】

参照元:インサイドセールス立ち上げ完全ガイド

たとえば、KGIを「売上1億円」に設定している場合、「受注件数40社」や「受注単価250万円」を最初の指標におきます。この場合、インサイドセールスのKPIになるのは、顧客数に繋がる、「有効商談数200件」などの項目です。

KPIを設定する際は、図【KPI設定のイメージ】のようなKGIを含めたKPIツリーの作成を検討してみましょう。KPIツリーを作成することで、自社が目標を達成するために必要なアクションを決めやすくなります。

なお、インサイドセールスを立ち上げでKPIの設定を検討している場合は、KPI設定のほかに役割の明確化やシナリオの作成などが必要です。インサイドセールス立ち上げからKPIの設定までに必要なことについては「インサイドセールスを立ち上げるための5つの手順【事例あり】」を確認してみてください。

どのようなKPIを設定すべきか迷う場合はSMARTを活用する

自社にどのようなKPIを設定すべきか迷う場合は、SMARTと呼ばれるフレームワークを活用してみましょう。SMARTとは目標設定のために活用されるフレームワークであり、KPIを設定する際に意識すべき考え方の一つです。

【SMARTの概要】
SMARTの内容概要
Specific(具体的か)具体的で明確な目標として掲げられているかどうか
Measurable(計測可能か)数値として定量的に度合いを判断できるようになっているか
Achievable(達成可能か)机上の空論ではなく現実的に達成できる可能性があるか
Relevant(関連しているか)より上位のKGI(経営目標)に貢献する形で設定されているか
Time-bound(期限は決められているか)いつからいつまでに達成すべきかという期限が決められているか

たとえば、来月までにメール返信率を35%から40%に向上させるというKPIはSMARTの条件をすべて満たしていると言えます。一方で顧客満足度を向上させるなど抽象度が高く計測が難しい指標は数値として追いにくいため、KPIとして設定するべきではありません。

不適切なKPIの設定は、担当者のモチベーションやパフォーマンス低下を招いてしまう恐れがあります。そのため、各フェーズでKPIとなりそうな指標をSMARTに合致しているか確認することで、適切なKPIだけを残していていくようにしましょう。

インサイドセールスがKPIを設定するべき理由

インサイドセールスにおいてKPIを設定するべき理由は、数値を可視化することでデータドリブンな施策を打てるようにするためです。データドリブンな施策を打てるようになると、次のような点が改善されるようになります。

  • ボトルネックになっている工程を特定できるようになる
  • データに基づいたリソース管理を行えるようになる
  • メンバーの成長とスキル向上に繋がる

KPIを設定せずにインサイドセールスを推し進めてしまうと、感覚的な分析から施策を決定してしまい本質的な改善に至らないケースが多いです。インサイドセールスを導入する際はKPIを設定し、データを基に改善点を特定し具体的な施策を打てるようにしていきましょう。

ボトルネックになっている工程を特定できるようになる

KPIを設定することで、ボトルネックになっている工程を特定できるようになります。具体的にはKPIとして設定した割合に関する目標値と実数との差分を確認することで、どの工程が受注の妨げになっているか確認できるようになります。

KPI目標値実数
会話成功率40%35%
商談獲得率50%60%
有効商談率50%55%
受注率20%20%

上記のようなKPIを設定した状況であれば、受注までの流れの中で会話成功率がボトルネックになっていることが明確になります。この場合、なぜ有効な会話が生まれないのか架電時のトークや架電対象を見直すことによって受注数を伸ばせる可能性が出てきます。

一方、KPIを設定せずに受注件数を増やそうとしてしまうと、本来なら課題の無いフェーズに対して無為な対策を講じてしまい、返って数字が悪化してしまう自体も引き起こしかねません。

もし複数のボトルネックが存在する場合は、会話成功率や商談獲得率など初期のフェーズを重点的に改善していきましょう。初期フェーズの改善がされれば全工程において社内に知見が溜まっていくため、各フェーズにおけるボトルネックがより明確になっていきます。

データに基づいたリソース管理を行えるようになる

KPIを設定することで、データに基づいたリソース管理が行えるようになります。具体的には特定期間におけるKPIに対して未達の数字を確認することで、リソースが不足しているフェーズを確認できるようになります。

【リソース管理を見直すKPI例】
KPI目標値(月間)実数(月間)
架電数1,000件1,200件
商談獲得件数400件320件
有効商談数200件160件
受注40件32件

上記のようなKPIを設定した状況であれば、商談獲得件数不足が原因で有効商談数も目標値に達していないことが明確になります。この場合、架電数の目標は達成しているため、商談を獲得するまでの過程に問題がある可能性が高いです。

まずは不足している工程のリソースを見直し、不足しているようなら充填するようにしてみましょう。併せて、架電結果を分析し、トーク内容の改善や商談の獲得条件の見直しを行うことで、全体の数値の改善が見込めるようになります。

一方、KPIを設定せずにリソースを管理してしまうと、十分な数に達している架電数を増やそうとして商談獲得件数が余計に減ってしまうなど、間違った人員配置をしてしまいかねません。

KPIの設定によりデータドリブンな管理を行えば、過不足を確認をしながらリソースを管理できるようになります。とくにリソース不足が確認出来たら、目標数が達成している部門からリソースを移動させるなど、全体のKPI達成のための調整をしていきましょう。

メンバーの成長とスキル向上に繋がる

KPIを設定することで、インサイドセールスに関わるメンバーのメンバーの成長とスキル向上に繋がります。KPIによってメンバーの得意、不得意が数字として現れるため、どのようなスキルを伸ばすべきか、または補うべきかが可視化されるからです。

【あるメンバーのKPIの目標値と実数】
KPI目標値(個人/月)実数(個人/月)
架電数100件80件
会話成功率40%30%
メール送信数1,000件1000件
メール返信数 100件150件
メール返信率10%15%

たとえば上記のメンバーの場合、メールマーケティングでは成果を上げられる一方で、架電に関して問題があることが明確になります。架電を重視しているビジネスモデルであれば、このメンバーにはコミュニケーションスキルやリスニングスキルを伸ばしてもらうことで事業に必要なスキル向上が見込めるようになります。

重視するべきKPIは企業のビジネスモデルやインサイドセールスの成熟度具合によって異なるため、メンバーの長所を伸ばすべきか短所を伸ばすべきかは状況によって変わってきます。とくに重視しているKPIが未達のメンバーは短所を補い、達成しているメンバーは長所を伸ばすように指導することで、部署全体でのパフォーマンスを改善していけるでしょう。

KPIに関わる言葉の定義を部署間で共有しておく

KPIに関わる言葉の定義を部署間で共有しておきましょう。インサイドセールスはマーケティング部門や営業部門と連携することが多いため、部署間で言葉の定義を共有しておかないと認識違いが起こり、組織全体で達成すべきKPIがズレていってしまうためです。

【共有しておくべき定義】
定義共有すべき部署概要
ホワイトリストマーケティング自社と接点のない企業一覧のこと
リードマーケティング将来的に自社の製品やサービスを導入する可能性のある見込み顧客。主に企業名、担当者名、メールアドレス(または電話番号)など連絡の取れるデータを最低限取得している場合を指す
有効リード(Marketing Qualified Lead,MQL)マーケティングリードの中でも注力顧客や課題感が回収できているなど優先的に商談化したい/商談化しやすいリードを指す
商談マーケティング
営業
自社製品やサービスの購入意欲に関わらず面会の約束を取得した時のこと
有効商談(Sales Qualified Lead,SQL)マーケティング
営業
自社製品やサービスに興味関心を抱かれている状態で提案や見積もりの機会を取得できた時のこと
受注マーケティング
営業
契約の意向をもらい発注書の受領をできた状態のこと
失注マーケティング
営業
提案した製品やサービスの購入が見送られる、キャンセルされる、または返信が無くなった場合などを指す

定義を部署間で定義を共有しておく例として、リードと有効リード(MQL)の違い、または商談と有効商談(SQL)の違いが挙げられます。見込み顧客を有効かそれ以外で判別する基準がインサイドセールスの一方的な考えや感覚に依存してしまうと、他部署とのやり取りに齟齬が生じるため、共通認識を持っておく必要があります。

リードと有効リードの明確な違いを部署間で定義できていない場合、マーケティング部門は自部門の目標達成のために、とにかくリードを集めてきてしまい、ほとんどのリードが商談に繋がらないまま全体の目標を達成できなくなってしまう恐れがあります。

また、商談と有効商談も同様に明確な違いを定義していない場合、インサイドセールス部門が有効商談だと思っているものが、実は有効商談ではなく、商談の効率が落ちて最終的な目標とする受注数に達成しない恐れもあります。

部署間で定義の共有ができていれば、マーケティングが集めるリードの質が上がったり、営業も有効商談に時間をかけたりするなど、組織全体でのパフォーマンスの改善が見込めるようになります。

その他、失注の定義についても部署間ですり合わせておくと良いでしょう。失注した商談を分析することで、どのようなリードを有効リードとすべきか、またどのような商談を有効商談にするか見直しをすることで、インサイドセールスがリードや商談を他部署と連携しやすくなるためです。

マーケティングや営業と言葉の定義を共有しておくことで、インサイドセールスがどのようなリードを受け取るべきか、またどのような商談を強化するべきかが明確になります。KPI設計はインサイドセールスだけで進めず、他部署と連携をしながら共通認識を持つことを意識すると良いでしょう。

設定したKPIは定期的な見直しが必要になる

KPIを設定した後は定期的に項目や数値目標の見直しをする必要があります。KPIの指標が適切な数値に設定されていない場合、KGIの未達成や社員のモチベーション低下などに繋がることがあるためです。

【KPIの見直し方法】
取り組み項目概要
①関連する目標を確認するKPIを見直すために、自社や営業部門などKPIに関連する目標を明確にする
②現行のKPIを評価する現行のKPIを評価し、目標達成に必要か判断する
③適切なデータを収集する売上や顧客のデータなど現行KPIに関連するデータの収集を行う
④KPIの妥当性を評価する収集したデータをもとにKPIが目標の達成に向けた項目として妥当であるかを判断する

また、市場の変化による影響がないかを確認し、必要に応じて有効リードや有効商談の定義も見直す
⑤新たなKPIを設定する目標の達成に向けて測定するべき指標が不足していると判断した場合は新たなKPIを設定する

KPIを見直す際は、現行のKPIが目標に向けて適切に設定できているか評価するために、自社や営業部門全体の目標を確認します。また、KPIの項目を評価するために、売上や獲得した顧客リスト、架電実積など必要なデータを集めておきましょう。

なお、KPIを見直すタイミングに特に決まりはありませんが、四半期ごとや会計年度などの期間を決めておくことで効果を図りやすくなります。加えて、自社のKGIやビジネスモデルに変化があった際は、中間目標であるKPIも見直してみてください。

成長度合いに応じてKPIを見直す方法もある

インサイドセールスのKPIを見直すタイミングとして、インサイドセールス部門の成長度合いに応じて行う方法もあります。この方法は、インサイドセールスの立ち上げ初期段階や中期の会社に取り入れることで適切なKPIの維持に繋がります

【成長度合いにあわせたKPI設定例】

参照元:インサイドセールス立ち上げ完全ガイド

たとえば、インサイドセールスの立ち上げ期には、商談数のような計測しやすくアクションプランの用意しやすいKPIを設定します。立ち上げ期に設定したKPIが達成されるため、中期には有効商談数のような受注や成約に近いKPIも加えることで、徐々に企業の売上に近い指標を持つことが出来るようになります。

また、有効商談の供給が安定してきたら、より受注に近い目標として、受注までの一連の流れである「パイプライン」の管理も行います。その際、事業部が持っている目標受注金額に対して、足りていない金額を埋めるための見込み金額のうち、〇〇%の創出責任を負う、という考え方で合意をとります。

なお、インサイドセールス部門のKPIを見直し再設定する際は、商談を担当する営業部門や事業部との連携も重要です。KPIを見直す際は、最終的な目標を達成するために必要な商談数などのKPIを事業部全体ですり合わせ共通認識を持つようにしておきましょう。

まとめ

インサイドセールスのKPIは顧客のフェーズ毎に設定しましょう。具体的な指標に関しては、達成すべきKGIから逆算する、またはSMARTのフレームワークを利用して剪定していきます。

また、KPIに関わる言葉の定義は部署間で共有しておきましょう。KPIを定めてからビジネスを走らせて、目標値と実体との間に乖離がある場合は、都度インサイドセールスの成長度合いに合わせてKPIを再設定していきましょう。

KPIを設定することでデータが可視化され、受注までの流れの中で問題となっているフェーズに対して適切な施策を打てるようになります。設定したKPIはダッシュボードで管理し、すぐにボトルネックやリソース不足、メンバーの不足しているスキルを確認できるようにすると良いでしょう。

この記事の著者WRITTEN BY...
スマタイ編集部
スマタイの記事を制作している編集部です。
不定期でマーケティング、インサイドセールス、営業支援に関する最新の情報を発信していきます。

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