インサイドセールスの効果的な手法とは?特徴と選び方を解説
電話やメール、Web会議ツールなどを活用して非対面で営業活動を行うインサイドセールスが様々な企業で導入されています。インサイドセールスを始めたい方や既存のインサイドセールスの成果を上げたい方の中には、インサイドセールスの効果を上げる方法が知りたい方も多いと思います。
この記事では、インサイドセールスの効果的な手法を解説します。選ぶ際のポイントや事前準備も説明していますので参考にしてみてください。
インサイドセールスの手法は業務範囲や営業対象に応じて分類される
インサイドセールスの手法は、インサイドセールスが担当する業務の範囲や営業アプローチのターゲットとなる顧客の対象に応じて分類されます。導入する企業の規模や抱えている課題に応じてインサイドセールス導入後に構築可能な組織体制や営業戦略が異なるためです。
1 業務範囲別の分類 |
・分業型 ・独立型 ・協業型 |
2 営業対象別の分類 |
・BDR(新規開拓型) ・SDR(反響型) |
インサイドセールスの手法は、業務範囲別に分けると「分業型」「独立型」「協業型」に分類されます。同様に、営業対象からインサイドセールスの手法を分けると「BDR」と「SDR」に分類されます。
これらの手法を企業の営業スタイルや顧客のニーズに当てはめて活用するとインサイドセールスの効果向上が期待できます。自社に合ったインサイドセールスの効果的な手法を選ぶために、それぞれの手法の特徴を理解しておきましょう。
業務範囲で分類した手法の特徴
インサイドセールスの手法は、業務範囲別に分けると「分業型」「独立型」「協業型」に分類されます。それぞれの手法は、インサイドセールスが担うべき役割や業務負担が異なります。
手法 | 特徴 |
分業型 | 業務部門ごとに営業活動を行う |
独立型 | インサイドセールスが一貫して営業活動を行う |
協業型 | 状況に応じて分業型と独立型を切り替える |
インサイドセールスの手法は必要となる人員やスキルなどが異なるため、企業によっては向き不向きがあります。現状の営業体制でできる手法を探したり、希望する手法に必要な条件を洗い出したりして、自社に適したインサイドセールスの手法を選びましょう。
分業型は業務部門ごとに営業活動を行う手法
インサイドセールスが他の業務部門と営業活動を分担する手法を「分業型」といいます。分業型はマーケティングやフィールドセールスと連携しながら営業活動を進めていきます。
比較項目 | 特徴 |
適している企業 | ・比較的大規模な企業や営業組織 ・標準~高単価商材を扱っている企業 ・ターゲットが中堅企業~エンタープライズ(大企業) |
メリット | ・業務の細分化によって営業活動が効率化する ・業務部門ごとの顧客対応で商談化率や受注率が高まる ・マニュアルの構築で営業ノウハウの属人化が防げる |
デメリット | ・各部門に人手が割かれるため、人員の確保が必要 ・労働集約モデルからの脱却がしにくい ・各部門との連携を怠ると成果を上げにくい |
導入効果 | 業務負担やコストの削減、対応件数の増加、業務フローの改善など |
分業型のメリットは営業活動の効率化や商談化率・受注率の向上などです。たとえば、分業型を取り入れ営業業務を細分化することで、各業務部門の活動量と専門性が向上します。これにより、パーソナライズされた顧客対応が可能となり、見込み顧客の受注確度を高めて成約につなげています。
一方で、分業型のデメリットは人員の確保が必要となる点です。たとえば、人材が不足している企業では業務の細分化が難しく、無理に人員を増やすと売上に対する人件費の割合が高い状態に陥る恐れもあります。
したがって、分業型はリソースに困らない比較的大規模な企業や営業組織での導入に適しています。ただし、インサイドセールスと各業務部門の組織構造が分離していると情報の分断や伝達ミスが生じやすくなるため、各業務部門との連携を怠らないようにしましょう。
独立型はインサイドセールスが一貫して営業活動を行う手法
インサイドセールスが一貫して営業活動を行う手法を「独立型」といいます。対面営業を行わずに全ての営業活動をWeb上で行うことから「オンラインセールス」とも呼ばれます。
比較項目 | 特徴 |
適している企業 | ・中小規模の企業や営業組織 ・低単価商材を扱っている企業 ・ターゲットがSMB企業 |
メリット | ・非対面営業によって移動の負担がなくなり業務に集中できる ・他部門への引き継ぎがなく案件や商談の管理がしやすい ・遠方の顧客とも商談ができる |
デメリット | ・インターネット環境に影響される ・信頼関係の構築に時間がかかる ・高額な商材や実物の確認を求められる商材などは売りにくい |
導入効果 | スタッフ1人当たりの営業効率アップ、移動コストや時間の削減など |
独立型のメリットは案件や商談の管理がしやすいことなどです。たとえば、客先への移動の負担や情報の伝達ミスが生じないため、スタッフ1人当たりの営業効率が上がります。これによって売上や利益目標を明確に設定できるようになり、商談が管理しやすくなります。
一方で、独立型のデメリットは信頼関係の構築に時間がかかる点です。商談成立までの全ての営業活動を非対面で行うため、信用度が重視される高額商材や実物を確認しないと購入の判断が難しい商材などは売りにくい傾向があります。
独立型は低単価商材で薄利多売を狙う場合や少数精鋭のインサイドセールスを希望する中小規模の企業や営業組織での導入に適しています。ただし、画面越しで行う商談は対面よりも顧客の反応が掴みにくくなるため、慎重なアプローチを心がけましょう。
オンラインセールスについて詳しく知りたい方は「オンラインセールスとは?向いている企業や導入の流れも解説」も参考にしてみてください。
協業型は状況に応じて分業型と独立型を切り替える手法
営業活動の状況に応じて分業型と独立型を切り替える手法を協業型といいます。企業規模やエリアに合わせて営業アプローチを変え、状況に応じてフィールドセールスへ引き継ぐか、あるいはインサイドセールスがクロージングまで行うかを判断します。
比較項目 | 特徴 |
適している企業 | ・高単価商材や商品展開が豊富な商材を取り扱っている企業 ・顧客単価向上を目的とする企業 ・ターゲットがエンタープライズ(大企業) |
メリット | ・分業型と独立型のそれぞれの強みが生かせる ・顧客規模や検討段階によって柔軟な対応ができる ・高額商材の売り込みや顧客単価向上を狙う場合に適している |
デメリット | ・状況に応じた臨機応変なパターンの想定が求められる ・業務フローの設計などの難易度が高い ・連携や引き継ぎが難しく責任の所在が不明確になる場合がある |
導入効果 | ・営業活動の増幅、顧客対応の柔軟化、顧客単価向上など |
協業型のメリットは、分業型と独立型の強みが生かせる点です。顧客のニーズに合わせて手法を切り替えることで営業活動の幅が広がり顧客対応が柔軟化します。また、見込み顧客の育成を行いながら状況に応じて商談まで進められるため、成約率の向上が見込めます。
一方で、協業型のデメリットは業務フローの設計などの難易度が高く、実用までに時間がかかる傾向がある点です。状況に応じて臨機応変な対応が求められるため、各業務部門がどこまでの範囲を担当するかなど現場感覚で決めていく必要があります。
協業型は高単価商材を扱っている企業やクロスセルやアップセルなど顧客単価の向上を目的とする企業での導入に適しています。まずは分業型か独立型でインサイドセールスの運用基盤を確立し、段階を踏みながら協業型に移行するとよいでしょう。
営業対象で分類した手法の特徴
インサイドセールスの手法は、営業対象別に分けると「BDR」と「SDR」に分類されます。BDRとは自社から顧客へアプローチするアウトバウンドを対象とした新規開拓型営業のことで、SDRとは顧客からの問い合わせなどのインバウンドを対象とした反響型営業のことです。
手法 | 特徴 |
BDR | ・「Business Development Representative」の略称 ・アウトバウンドを対象とした新規開拓型営業(PUSH型) ・ターゲットを決めてアプローチし、獲得した新規リードを商談につなげる |
SDR | ・「Sales Development Representative」の略称 ・インバウンドを対象とした反響型営業(PULL型) ・アクションを起こした新規リードや休眠・失注リードから商談を獲得する |
BDRは自社がターゲットとする企業に戦略的なアプローチを行い、新規リード(見込み顧客)の獲得を目指します。企業規模やエリアなどの対象区分を見定めて積極的なリサーチやアウトリーチを行い、自社の商材を効果的にアピールして商談につなげます。
一方で、SDRは問い合わせや資料請求、展示会やセミナーへの参加など自らアクションを起こしたリードに応対し、商談獲得を目指します。SDRの対象リードは自社の商材への関心が高く、迅速かつ適切な案内や提案を行えれば受注につながる可能性が高くなります。
このように、BDRとSDRとでは営業対象が異なり、営業活動のアプローチ方法も大きく違ってきます。自社に適したインサイドセールスの効果的な手法を選ぶためにBDRとSDRのそれぞれの特徴をさらに詳しく把握しておきましょう。
なお、BDRとSDRの違いは「BDRとSDRの違いとは?インサイドセールスの分類や導入時のポイントを解説」でも解説しています。
BDRはアウトバウンドを対象とした新規開拓型の手法
BDRは過去に接点のない顧客に対してアウトバウンドコールやDM(ダイレクトメール)などで積極的にアプローチする手法です。新規開拓型やPUSH型のインサイドセールスとも呼ばれ、新規顧客の開拓を目的として戦略的な営業アプローチを実践していきます。
比較項目 | 特徴 |
主となる取引先 | ・エンタープライズ(大企業) |
メリット | ・顧客単価が高くなる傾向がある ・長期的な売り上げが期待できる ・複数の成約を獲得できる場合がある |
デメリット | ・ターゲットの調査や選定に時間がかかる ・商談化までに時間がかかる ・信頼関係の構築が必須となる |
主な戦略 | ・ABM(アカウント・ベースド・マーケティング) |
適している企業 | ・エンタープライズ向けの商材を取り扱っている企業 ・自社のリソースを豊富に持つ企業 ・自社の商材と親和性の高い取引先を分析・特定できる企業 |
BDRのメリットは、ABMの採用によって顧客単価を上げやすく、長期的な売り上げが見込める点です。顧客にあわせた提案を行えるため、利益率が高く解約率が低くなる傾向にああります。顧客に寄り添ったフォローを定期的に行えば、他部署での追加契約など新たな成約の獲得も期待できます。
一方で、BDRのデメリットは商談化までに時間がかかる点です。契約交渉や調整など購買意思決定までのプロセスは複雑で長期化する傾向があります。顧客の関心を維持するために顧客のニーズや要件の理解を深め、フォローアップ体制を強化することが重要です。
BDRは自社のリソースを豊富に持つ企業やエンタープライズ向けの商材を取り扱っている企業での導入に適しています。高確度の潜在顧客を絞り込むABM戦略などで自社の商材と親和性の高い取引先を分析・特定し、戦略的なアプローチを実践しましょう。
SDRはインバウンドを対象とした反響型の手法
SDRは顧客から自社へ受信するインバウンドを対象に自らアクションを起こした新規リードや休眠・失注リードから商談を獲得する手法です。反響型やPULL型のインサイドセールスとも呼ばれ、成約率の向上を目的として戦略的な営業アプローチを実践していきます。
比較項目 | 特徴 |
主となる取引先 | ・SMB(中小・中堅企業) |
メリット | ・市場規模が大きい ・大企業に比べて決裁者と接点を作りやすい ・短期間で商談化しやすい |
デメリット | ・見込み顧客を獲得する手段が必要になる ・顧客単価が低くなる傾向がある ・商談成約率が低くなる |
主な戦略 | ・インバウンドマーケティング |
適している企業 | ・SMB向けの商材を取り扱っている企業 ・問い合わせが一定数あり、タイムリーにアプローチできる企業 ・リードのフォローに専念するスタッフをアサインできる企業 ・休眠顧客や失注商談を抱えている企業 |
SDRのメリットは市場規模が大きく短時間で商談化しやすい点です。日本企業の多くがSDRを導入しているように、SMB(中小・中堅企業)は市場規模の大きさからリードや商談が獲得しやすく決済フローも短いため、少ない商談数で受注につながります。
一方で、SDRのデメリットは見込み顧客を獲得するための施策が必要になる点です。具体的には、メディア運用や広告を活用したインバウンドマーケティング、営業担当者によるセミナーの開催など、営業活動以外のリソースが求められます。
そのため、SDRはSMB向けの商材を取り扱っている企業やリソースが豊富な企業での導入に適しています。SDRを導入する際は、3C分析で市場環境を把握し、リードが確保できる仕組みを構築しながらインバウンドマーケティングを効率的に進めましょう。
手法を選択する際は自社の状況を考慮する
インサイドセールスの手法を選択する際は、自社の状況を考慮しましょう。インサイドセールスの手法の選択はスタッフのスキルやキャパシティ、営業方針、課題などに影響されるためです。
たとえば、ナーチャリングに力を入れたいなら分業型が適していますが、営業人員が不足している場合はリソースの確保から考えなければなりません。リソース不足のまま業務を進めようとしても成果は上がらず、運用が滞る恐れも出てきます。インサイドセールスの手法を効果的に活用するためには、商談創出のための活動量を担保することが重要です。
そのため、インサイドセールスの手法を選ぶ際は、リソースを増やしたり、インサイドセールス業務を外注したりして、自社の規模感や課題を考慮した選択をしましょう。
インサイドセールスの効果を上げるための事前準備
インサイドセールスの効果を上げるためには、事前準備を行うことが重要です。インサイドセールスの課題としてツールの性能を発揮できていなかったり、営業活動のシナリオ設計が不十分であったりすることが挙げられるためです。
・自社に合ったツールを導入する ・BANT条件やトークスクリプトを作成する |
インサイドセールスの課題や想定される問題への対策を事前に把握しておけば、インサイドセールスの手法がより効果的に活用できるようになります。
自社に合ったツールを導入する
インサイドセールスの効果を上げるために自社に合ったツールを導入しましょう。DX化が進むにつれてデジタルアダプションの重要性が求められています。デジタルアダプションとはツールを最大限活用できている状態のことで、デジタルアダプションの実現によって顧客満足度や生産性が高まりインサイドセールスの効果向上につながっています。
ツールの性能が進化するにつれて機能や設定は複雑化しています。インサイドセールスでは導入したツールが使いこなせずに期待していた成果が得られないといった課題も少なくありません。この課題を受けて、最近では従来の顧客情報管理に加え、CRMやSFAとは異なる視点から顧客との関係性を強化する機能を備えたツールが開発されています。
ツールの性能を活かした営業活動ができれば営業課題解決や業務目的達成につながります。デジタルアダプションの実現を目指して自社に合ったツールを導入しましょう。
なお、ツールの特徴や選び方が知りたい方は「インサイドセールスツールはどれを選ぶ?ツールの特徴や選び方のポイントを解説」を参考にしてみてください。
BANT条件やトークスクリプトを作成する
インサイドセールスの効果を上げるためにBANT条件やトークスクリプトを作成しましょう。営業方針を明確にしたうえで必要な準備を整えておくと顧客とのコミュニケーションが効率化でき、成約率の向上が見込めるようになります。
BANTCH(バントチャンネル)は見込み顧客の購入意欲を判断するためのフレームワークです。営業活動のヒアリングで重要となる6つの条件(予算、決裁権、ニーズ、導入時期、競合相手、人的資源)を示しています。これらの条件を把握することでフィールドセールスへ引き継ぐタイミングや提案に必要なアプローチ方法などを明確にしています。
トークスクリプトは顧客対応で使用する営業マニュアルのことです。主に電話営業や問い合わせ対応に利用され、トーク品質の標準化や新人教育に役立っています。定期的な改善を行いながらテンプレートやAI、チャットボットなどを活用して顧客対応を最適化し、商談率や成約率の向上を実現しています。
インサイドセールスのやり方や必要となる準備は導入する手法によっても変わりますが、基本的な手順を把握しておくことはインサイドセールスの効果を高める第一歩です。インサイドセールスの詳しいやり方を知りたい方は「インサイドセールスのやり方を解説」を参考にしてみてください。
まとめ
インサイドセールスの効果的な手法を選ぶためには、特徴や選び方を把握することが大切です。インサイドセールスの手法は、業務範囲別や営業対象別に分類され、それぞれの手法によって役割や業務負担、営業活動のアプローチ方法が異なります。
インサイドセールスの手法を選択する際は、自社の状況を考慮しましょう。スタッフのスキルやキャパシティ、営業方針、課題などを踏まえ、自社の規模感や課題を考慮した選択が必要です。
また、インサイドセールスの効果を上げるためには、事前準備を行いましょう。自社に合ったツールを導入したり、BANT条件やトークスクリプトを作成したりして、課題や問題への対策をしておくとインサイドセールスの手法がより効果的に活用できるようになります。
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