インサイドセールスとは?役割やメリットデメリットを解説

働き方改革の一環としてインサイドセールスを導入する企業が増えています。デジタルツールの進化やリモートワークの普及から営業の分野でもDX化が推進されているためです。
当記事では、インサイドセールスの役割について解説します。メリットやデメリットも説明しますので、インサイドセールスに興味のある方は参考にしてみてください。
インサイドセールスとは非対面で行う営業活動のこと
インサイドセールスとは、非対面で行う営業活動のことです。従来の一気通貫型の営業スタイルを分業化して専門性を高めることで営業活動の活性化を実現しています。
インサイドセールスは、電話やメール、Web会議ツールなどを活用し、客先に訪問しない間接的なコミュニケーションによって商談獲得を目指します。その業務スタイルから非対面営業や内勤営業とも呼ばれています。
インサイドセールスの成り立ちは、1990年代に米国が専門職としての道筋を確立させたことに由来します。日本では2005年頃から次第にインサイドセールスの営業手法が認知されるようになりました。今では、少子高齢化による就業人口の減少や営業職の人気低迷といった要因からもインサイドセールス導入の必然性が高まっています。
インサイドセールスの起源について詳しく知りたい方は「インサイドセールスの起源とは?歴史と共にツールや市場規模の成長を解説」をご覧ください。
マーケティングやフィールドセールスをつなぐ役割がある
インサイドセールスは、マーケティングやフィールドセールスをつなぐ役割があります。インサイドセールスは商談の糸口を見つける重要な役割を持ち、マーケティングとフィールドセールスを橋渡しするポジションを担っています。
【役割分担と業務フロー】

インサイドセールスは、間接的なコミュニケーションによって顧客との商談の機会を創出します。マーケティングによって収集された見込み顧客(リード)の中から購買の期待値が高い顧客を選定し、電話やメール、Web会議ツールなどを用いて顧客が抱える潜在的なニーズを顕在化していきます。
さらに、営業アプローチの優先順位を考えながら顧客との関係を構築し、顧客を育成して獲得した確度の高いアポイントをフィールドセールスへつなぎます。
また、カスタマーサクセスと連携してフォロー体制を強化することで顧客に継続利用を促し、新たな受注につながる可能性を高めていきます。このように、インサイドセールスは各部門と互いに業務を補完し合う関係にあり、営業活動を促進する役割を担っています。
インサイドセールスとフィールドセールスの違いを詳しく知りたい方は「インサイドセールスとフィールドセールス~それぞれのちがいと役割」をご覧ください。
なお、リモートワークの普及から「オンラインセールス」を導入する企業も増えています。オンラインセールスでは訪問営業は行わず、顧客創出から商談まで全ての業務を一貫してWeb上で担当しています。
オンラインセールスについて詳しく知りたい方は「オンラインセールスとは?向いている企業や導入の流れも解説」をご覧ください。
テレアポとインサイドセールスではKPIが異なる
テレアポとインサイドセールスでは設定しているKPIが異なります。KPIは「重要業績評価指標」のことで、最終的な目標を達成するための中間目標として位置づけられています。
KPIの要素 | 詳細 | |
---|---|---|
テレアポ | ・架電数・コネクト数 ・アポ獲得数 ・平均通話時間(処理時間) ・平均架電単価 | アポの獲得を目的として、リストを用いた顧客への一斉架電など、短期的なアプローチを行う |
インサイドセールス | ・アクション数 ・有効会話数 ・商談獲得数・商談化率 ・有効商談数・有効商談率 | 見込み顧客の育成や有効商談の獲得を目的として、架電やメール送信など、長期的なアプローチを行う |
テレアポがアポの獲得を目的として短期的なKPIを設定する一方、インサイドセールスは、見込み顧客の育成や有効商談の獲得を目的として長期的なKPIを設定しています。
KPIを設定する際はKGIを見据えることが大切です。KGIは「重要目標達成指標」のことで、KPIが中間的な目標であるのに対し、KGIは最終的な目標や達成すべきゴールを示します。
KGIを見据えてKPIを設定すると、KPIの達成がKGI到達への近道になります。また、業務プロセスを注視しながらKPIの修正を重ねることで、KGIの達成率や到達速度が上がることが期待できます。なお、インサイドセールスのKPIを設定する際は、連携先であるフィールドセールスのKPIやKGIも把握しておくとよいでしょう。
テレアポとインサイドセールスの違いについて詳しく知りたい方は「インサイドセールスとテレアポ(電話営業)の違い!営業プロセス毎に解説」をご覧ください。
また、KPIの設定方法については「インサイドセールスのKPI項目と設定方法を解説」を参考にしてみてください。
インサイドセールスを導入すると受注確度の向上が期待できる
インサイドセールスを導入すると、受注確度の向上が期待できます。インサイドセールスは購買意欲が高まった状態の見込み顧客をフィールドセールスへ引き継げるためです。
インサイドセールスは見込み顧客のニーズを反映した営業アプローチによって顧客を育成(ナーチャリング)し、高確度の商談を効率よく創出します。購買意欲が高まった状態の見込み顧客をフィールドセールスへ引き継げるようになると、フィールドセールスは契約成立に向けたクロージングに専念できます。
インサイドセールスのナーチャリングによって課題が明確化された確度の高い見込み顧客に対し、フィールドセールスが課題解決に向けたサービスや商品の提案を的確に行うことで受注確度の向上が期待できるようになります。
インサイドセールスの導入効果について詳しく知りたい方は「インサイドセールスの導入効果は?効果を高めるためのポイントや導入事例を解説」をご覧ください。
インサイドセールスのメリットとデメリット
インサイドセールスを導入する際は、メリットとデメリットを把握しておきましょう。メリットはインサイドセールスの活用に役立ち、デメリットはトラブル回避の参考になるためです。
メリット | ・見込み顧客への継続的なアプローチができる ・営業の業務効率が上がる ・営業コストを削減できる |
デメリット | ・フィールドセールスと連携する仕組みが必要 ・ツールの導入が必要になる ・顧客と信頼関係を築きにくい |
インサイドセールスは、マーケティングやフィールドセールスと業務を分担することで専門性や生産性を高め、見込み顧客へ効果的なアプローチを実現します。しかし、分業制は他部門との連携をスムーズに行えることが前提であり、業務に必要なツールを部門間で連携しながら使いこなす必要があります。
また、各部門との関係性が対等でないとパフォーマンスが落ち、顧客に対するフォロー体制が整わなくなる点にも注意が必要です。顧客とのコミュニケーション方法や戦略は業務部門ごとに異なることを考慮し、良好な連携体制を築きましょう。
なお、インサイドセールスには業種や環境によっては向き不向きがあります。自社の営業活動にインサイドセールスが導入できるかの見極めは慎重に行うことが大切です。
インサイドセールスのメリットデメリットについて詳しく知りたい方は「インサイドセールスのメリットとデメリットを解説」をご覧ください。
インサイドセールスの種類はSDRとBDRに分かれる
インサイドセールスの役割は、大きく分けるとSDRとBDRに分類されます。SDRが受け身のインサイドセールスといわれるのに対し、BDRは攻めのインサイドセールスといわれています。
【SDRとBDRの比較】
SDR (Sales Development Representative) | BDR (Business Development Representative) | |
タイプ | ・反響型 ・インバウンドセールス ・受け身のインサイドセールス ・薄利多売 | ・新規開拓型 ・アウトバウンドセールス ・攻めのインサイドセールス ・厚利少売 |
対象 | ・SMB市場 (Small to Medium Business市場) ・中小企業や中堅企業など | ・エンタープライズ市場 ・大手企業や中堅企業など |
手段 | ・オウンドメディア ・メールマガジン ・展示会 ・SNSなど ・セミナーなど | ・電話 ・ダイレクトメール ・展示会 ・セミナーなど |
特徴 | ・既存の顧客データを活用して見込み顧客の興味を引くようなアプローチを行う | ・新規顧客を開拓するためのリサーチやアウトリーチを行い、自ら顧客リストを構築する ・ABM戦略などを活用 (Account Based Marketing戦略) |
SDRは反響型インバウンドセールスのことで、マーケティングから引き継いだ見込み顧客を育成していく営業手法です。問合せや資料請求などの自発的なアクションを起こした顧客に応対し、購買意欲を高めたうえでフィールドセールスへ引き継ぎます。高確度の見込み顧客を獲得できるため、安定した売上が維持しやすい傾向があります。
BDRは新規開拓型アウトバウンドセールスのことで、特定の企業をターゲットに施策を講じるABM戦略などを活用した営業手法です。DM送付や架電などの積極的な働きかけで顧客との商談獲得を目指します。狙った相手に直接アプローチできるため、大きな成果が期待できる傾向があります。
日本企業ではこれまでSDR型のインサイドセールスが主流でしたが、SDRとBDRの収益性の違いから、最近ではBDRの需要が高まっています。
BDRとSDRの違いについて詳しく知りたい方は「BDRとSDRの違いとは?インサイドセールスの分類や導入時のポイントを解説」をご覧ください。
インサイドセールスの導入事例
インサイドセールスは様々な業種において導入され、戦略的な経営を実現しています。営業手法の変革が求められ、インサイドセールスの導入事例は年々増加傾向にあります。
導入の効果 | 詳細 |
---|---|
分業体制の構築 | 認知度向上の施策における新たな課題の解消のため、インサイドセールスを導入。分業体制の構築により休眠顧客のフォローやテレアポの効率化、営業活動の活性化につながり、月間17.8%のアポ率を達成。年間の名刺獲得量が導入前の3倍に。 |
コロナ渦の 対策 | コロナ禍で企業の展示会が軒並み中止になったことからインサイドセールスを導入。ウェビナーやMAの活用で認知度の向上を画策。トークスクリプトの標準化などの施策を講じてリード獲得数が2倍に。 |
属人化の解消 | アポ獲得と商談を兼任していた営業担当の退職がきっかけでインサイドセールスを導入。分業体制の構築やトークスクリプトの変更、顧客の反応への対処など迅速なフィードバックにより、アポ獲得率が導入前の3倍に。 |
マーケティング手法の革新 | 新規サービスのリリースをきっかけにインサイドセールスを導入。アプローチシナリオを組み立て直し、アプローチ先を変更したことで、資料請求件数や商談の獲得率を上げることに成功。仮説検証の高速サイクルで商談の7〜8割が高確度に。 |
営業ノウハウの補完 | クラウド型システムのニーズの高まりを受けてインサイドセールスを導入。不足していたBtoBサービスの営業ノウハウを補い、仮説立案ができるレベルでの正確な顧客ヒアリングによって質の高いアポイントを獲得。 |
日本企業がインサイドセールスに着目する一方で、インサイドセールスの導入率は2021年の時点では約3割に留まり、新しい営業スタイルの検討が進んでいない傾向にありました。
これを受け、日本政府は2021年にデジタル庁を創設し、国家戦略として「デジタルの日」を定めました。2023年6月9日には「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を策定し、中小企業を始めとした民間企業や地域のデジタル活用支援による産業の活性化を推進しています。
そして現在、日本におけるインサイドセールスの導入率は約4割を超えるようになりました。少子化による就業人口の減少や急速な景気・雇用情勢の悪化に伴う雇用の流動化などの外的要因がインサイドセールスの需要増加を後押し、今後も活性化が期待されています。
インサイドセールスの導入事例について詳しく知りたい方は「インサイドセールス成功事例5選!商談化率やナーチャリング例を紹介」をご覧ください。
また、インサイドセールス代行サービスの事例については「インサイドセールス支援のピックアップ事例」を参考にしてみてください。
インサイドセールスはITやSaaSを扱う企業と相性が良い
インサイドセールスはITやSaaSを扱う企業と相性が良いです。インサイドセールスの営業手法がITやSaaS商材の持つ特性と親和性が高いためです。
たとえば、ITやSaaS商材はサービスの性質上、購買に至るまでに時間がかかってしまいますが、これをインサイドセールスの視点で見ると、顧客と時間をかけて関係構築ができることは強みであり、顧客の購買意欲を高めながら受注確度を上げることができます。
企業にとって顧客1人が生涯にどれだけの利益をもたらしたかを指すLTV(Life Time Value=顧客生涯価値)は、営業利益の向上に欠かせない指標です。インサイドセールスは、顧客との信頼関係を強固にすることでLTVを高めています。
さらに、ITやSaaSを扱う企業は、開発力に比べて営業力が不足しがちな場合があります。インサイドセールスを導入すると、マーケティングとフィールドセールス間の橋渡しや休眠・失注顧客の掘り起こしなど、顧客情報の管理や他部門へのフィードバックに注力できるようになるため、営業力の向上が見込めるようになります。
SaaS企業におけるインサイドセールスについて詳しく知りたい方は「SaaS企業の営業に欠かせない!インサイドセールスの導入や活用法」をご覧ください。
インサイドセールスには求められるスキルやスタンスがある
インサイドセールスは、その業務の内容によって求められるスキルやスタンスがあります。インサイドセールスには顧客に寄り添った伴走支援が必要不可欠であり、単なる知識や能力だけでなく経験に基づいた技能が重要視されるためです。
スキル(技能) | スタンス(姿勢) |
---|---|
・コンサルティングスキル ・データ分析スキル ・顧客へのヒアリングスキル ・情報収集スキル ・コミュニケーションスキル ・プレゼンスキル ・時間管理スキル | ・カスタマーサクセス精神(顧客の成功) ・カスタマーファースト精神(顧客第一) ・ホスピタリティ精神(思いやり、もてなし) |
インサイドセールスには、顧客との信頼関係を構築しながら無理なく情報を引き出すスキルと相手の要求を理解して提供できるスタンスが求められます。
インサイドセールスは訪問営業を行わないことから現場の雰囲気を感じにくく、顧客とのやり取りにタイムラグや語弊などが生じると相手の気持ちを汲み取ることが難しくなります。この課題を解消するために、スキルやスタンスを磨いておく必要があります。
日本企業において、インサイドセールスの歴史はまだ浅く、インサイドセールスの経験者はそれほど多くありません。インサイドセールスの業務は時にマーケティングやカスタマーサクセスの業務を兼ねることもあるため、適正人材の確保や育成が課題となっています。
そのため、インサイドセールスの導入を外注したり、業務そのものを外注化したりする手段もあります。インサイドセールスの外注化を検討している方は「インサイドセールスの代行会社を選ぶポイントや報酬体系を解説」も参考にしてみてください。
まとめ
インサイドセールスは、従来の一気通貫型の営業スタイルを分業化して専門性を高めた営業部門の一つです。非対面で営業活動を行い、マーケティングやフィールドセールスと互いに業務を補完し合って営業活動を促進します。
しばしば比較されるテレアポとインサイドセールスではKPIが異なり、業務プロセスを注視しながらKPIの修正を重ねることで、KGIの達成率や到達速度を上げることができます。
インサイドセールスを導入すると受注確度の向上が期待できます。加えて、業務の効率化や営業コストの削減といったメリットがある一方、他部門との連携や顧客との関係構築においてはデメリットもあります。インサイドセールスの役割であるSDRやBDRについても理解を深めると、インサイドセールスの導入効果の向上につながります。
インサイドセールスはITやSaaSを扱う企業と相性が良い傾向にあり、導入事例は年々増加しています。インサイドセールスには求められるスキルやスタンスがあるため、単なる知識や能力だけでなく経験に基づいた技能を磨いておきましょう。

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