BDRとSDRの違いとは?インサイドセールスの分類や導入時のポイントを解説
インサイドセールスとは、元々広い国土を誇る米国や国境を複数越える必要のある欧州地域などで活性化した営業手法であり、電話、メール、ビデオ会議システム等を用いて顧客とのコミュニケーションを行う内勤の営業手法を指します。
また、インサイドセールスを効率的に実施する方法として「BDR」「SDR」という2種類の営業手法があります。
本コラムでは、これらの違いについて解説していきます。
SDR・BDRとは?
インサイドセールスの役割を細分化した時にBDRとSDRに分かれます。BDRとSDRはアプローチ先や目的、KPIなどさまざまな違いがあります。
それぞれの特徴を理解した上で、自社の目的や課題を補うように最適な配置をすることが営業活動の効率化に繋がります。
BDRとは
BDRは「Business Development Representative」の略であり、新規開拓型のインサイドセールスを指します。企業における新規開拓は避けては通れない課題であり、いかに成果を出すかが問われる内容になります。
例えば「自社のサービスを導入してくれそうな企業にアプローチをかけたいが、なかなかコンタクトできない」といった場合、BDRであればターゲット企業を狙い撃ちすることができます。但し、テレアポ、テレマのやり方ではなく、ターゲット企業に対し戦略的にアプローチすることが求められます。
SDRとは
SDRは「Sales Development Representative」の略であり、反響型やPULL型のインサイドセールスを指します。問い合わせや資料請求などに対し、迅速に対応することがミッションになり、サービスに関心の高い顧客に対し、適切な案内や提案が出来るかどうかが鍵になります。
SDR・BDRが注目されている理由
SDR・BDRが注目されている理由として、働き方改革や人手不足が挙げられます。働き方改革への取り組みや人手不足によって、さまざまな業務に割けるリソースが減ったため、業務効率化が欠かせないものとなりました。そのため、移動時間を省略し従来より少ないリソースで営業活動を実施できる、BDRやSDRが注目されるようになりました。
また、サブスクリプション型ビジネスが増えたことも、BDR・SDRが注目された要因です。サブスクリプション型ビジネスは、契約や解約が比較的簡単なことに加え、試用期間があるのが一般的です。そのため、顧客数が多くなりやすく、商材の説明やユーザーへの提案、問い合わせ対応などといった営業活動を効率化する必要があります。BDR・SDRは、サブスクリプション型ビジネスと相性の良い営業方法として注目が高まっています。
さらに、近年は買い手側の意識も変化しています。2020年にHubSpot Japanが実施した「日本の営業に関する意識・実態調査」によると、買い手側として営業を受ける際に「非訪問型営業が好ましい」と考える人(38.5%)が「訪問型営業が好ましい」と考える人(35.0%)を上回りました。
2019年12月に行われた同様の調査では、「非訪問型営業が好ましい」と考える人が21.0%、「訪問型営業が好ましい」と考える人が53.7%だったため、1年間で買い手側の意識が逆転したことがわかります。
ただし、売り手側は依然として訪問型営業が好ましいと考えている企業の割合が高く、買い手側との意識にギャップがあることもわかっています。
SDR・BDRの違い
SDRとBDRはまったく違った性質を持っています。混同しがちなSDRとBDRの違いを整理しておきましょう。
ターゲット企業の違い
SDRの主なターゲットはSMB(中小企業)です。それに対して、BDRはエンタープライズ(大企業)がターゲットとなっています。
SDRがSMBをターゲットとする一番の理由は、SMBの方が問い合わせや資料請求といったアクションを起こす数が多いという点です。また、SDRでは顧客ごとに創出される金額が低い傾向があるため、1件1件に時間をかけずスピーディーに対応しなければなりません。中小企業は決済フローが短く、短期間で受注できる可能性が高いため、SDRではSMBをターゲットとして選ぶことが多くなります。
BDRではターゲットの購買意欲が低く、自社を認知していない状態からアプローチを始めるため、商談化するまでに時間がかかりがちです。また、限られたリソースで闇雲にリストの上からアプローチをするのは非常に効率が悪いです。このように、BDRは中長期的に時間を投資するため、リターンの大きいエンタープライズにターゲットを絞って戦略的にアプローチする必要があります。
解約率の違い
インサイドセールスは、SaaS企業で特に注目されている営業手法です。SaaS企業ではサブスクリプション型のモデルを展開しているケースがほとんどで、解約率が売上に大きく影響します。
SDRが主なターゲットとしているSMBは、売上の規模が小さく経営が安定しにくいため、解約率が高くなりがちです。
一方、BDRがターゲットとしているエンタープライズは、売上が安定しているため契約金額が大きくなりやすく、解約率が低くなります。
SaaS企業300社以上をターゲットとした「for Entrepreneurs」の調査では、契約金額が大きいほど継続期間が長い、つまり解約率が低いことが示されています。
出典:2014 Pacific Crest Saas Survey – Part 2
BDRの具体的なアプローチ方法
BDRでは、ターゲット企業への適切なアプローチが欠かせません。具体的なアプローチ方法と、それぞれのポイントを押さえ、各企業に合わせてアプローチ方法を選びましょう。
アウトバウンドコール
社内にリードがある場合、電話をかけてコミュニケーションをはかることもあります。ただし、多くの場合相手は多忙なため、売り込みの電話をかけるだけでは相手にされない可能性が高いでしょう。アウトバウンドコールでは、まず電話をかけた理由を端的に伝え、無作為にかけたわけではないことを知ってもらわなければなりません。
社内にあるリードに電話をかける際にも、業界や企業規模などの条件を分析して、自社のターゲットとして当てはまる企業から優先的にアプローチをすることが重要です。
さらに、有益な情報を提供するための情報提供を依頼します。
商品を売り込むために電話をかけるのではなく、相手目線で有益な情報提供を行う意識を忘れず情報収集を行う必要があります。
顧客に合わせてDM(手紙)を送付する
DMの活用は、有効なアプローチ方法のひとつです。エンタープライズ企業で決裁権を持つ人物のメールアドレスや電話番号を取得するのは難しく、代表電話などにかけても取り次いでもらえない場合も多くあります。
一方で、DMを私信として郵送すれば、開封してもらえる可能性が高まります。見るからに広告といった外見の郵便物は捨てられてしまうリスクがあるため、どのようなデザインの郵送物であれば決裁権者の手元に届き、開封してもらえるか検討する必要があります。
また、すべての相手に同じ内容のDMを送るのではなく、それぞれに合わせて送付することも重要です。
オフラインイベントで名刺交換をする
名刺交換は、自社からアプローチするとともに相手企業の情報を得るための有効な方法です。展示会やイベントを開催すれば、内容に興味がある企業の担当者を集め、名刺交換の機会を作れます。より多くの企業と接点を作るため、積極的に名刺を交換しておきましょう。
名刺交換の際に相手企業の情報を聞いておけば、相手に合わせた提案や情報提供もできます。
SNSを使ってアポイントを取る
SNSは、情報発信ツールとしてだけでなく、コミュニケーションツールとしても重要度が増しています。SNSで交流し、ある程度関係を構築した上でDM機能からアポイントを取ることもできます。また、顧客企業やターゲット企業のSNSで情報収集し、営業提案に活かすことも可能です。
ターゲット企業のアプローチで気を付けるべきポイント
ターゲット企業へのアプローチはやみくもに行えば良いわけではありません。気をつけるべきポイントを押さえておけば、より効率的な営業活動となります。
SDRはリードの見極めが重要になる
インバウンドのフォローを中心に行うSDRですが、必ずしも自社が求めるターゲット企業が流入してくるわけではありません。そのため、「本当にニーズがあるのか」「自社のサービスで満足いただける顧客を見極められるか」が重要な能力になってきます。顧客の問い合わせに対し、早い反応をすることで競合に走らせないようにするなど、スピード感のある活動も必要です。
BDRは企業の規模ごとに戦略を変える
新規開拓が目的とはいえ、テレアポのようにやみくもにアプローチすればいいものではありません。企業規模やエリアなどのターゲットセグメントをしっかり見定める必要があります。また、それに対して自社のサービスを適切にアピールし、認知させる事ができないと効果を発揮しません。活動量も重要ですが、活動の質を高めることが成功の近道となります。
BDRとSDRのマーケティング方法
BDR・SDRともに、より効果的にマーケティングを行うためには、分析が欠かせません。
BDRのマーケティング
STP分析を駆使することで、正しいターゲットにアプローチできるようになります。
STP分析とは、「Segmentation(市場細分化)、Targeting(狙う市場の決定)、Positioning(自社の立ち位置の明確化)」それぞれの頭文字をとったマーケティングにおける分析手法です。
セグメンテーションで市場の全体像を把握し、ターゲティングでその中から狙うべき市場を決定、ポジショニングで競合他社との位置関係を決定することで、アプローチ先を特定することができます。
また、BDRの特性上、Account Based Marketing(ABM)と呼ばれる、自社にとって有益な企業にターゲットを絞り、利益の最大化を狙うマーケティング手法との相性が良いです。
SDRのマーケティング
3C分析をし、インバウンドで自社が求めるリードが流入できる仕組みを構築できているかを意識することが非常に大切です。
3C分析とは「Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)」の3つの頭文字を取った、マーケティングにおける環境分析のフレームワークであり、自社を取り巻く業界環境整理に有効です。顧客が求める価値と自社が提供する価値が一致し、競合他社が提供する価値には無いものをバリュープロポジションといいます。
SDRは、アプローチ先がバリュープロポジションに該当したリードかどうかをしっかり見極めることが重要です。
BDRを効率よく進めるためのABM活用法
ABMとは、アプローチ対象をリード(個人)ではなく、アカウント(企業)単位で考えるマーケティング手法です。つまり、企業ごとに狙いを定めて戦略を考えるため、自社のサービスを導入してくれそうな企業にダイレクトにアプローチするBDRと親和性が非常に高いです。
LTVの高い顧客を絞り込む
ターゲット企業を洗い出すには、SFA、CRMを活用して既存顧客のデータを分析し、企業属性・規模、受注実績、継続契約実績などの定量情報を集めます。そして、それらの情報から自社の売上や利益に貢献してくれそうな企業を優良ターゲットとして絞り込みます。
このように「顧客が継続的に取引をすることによって、いかに利益をもたらしてくれるか」という考え方を、顧客生涯価値またはLTV(Life Time Value)と呼びます。優良企業か否かを考えるうえで既存顧客をベースに勝ちパターンを見つけ、ターゲットも近しいレンジで絞り込むことが重要になります。
アカウントプランを作成する
キーマンと特徴、顧客からのフィードバック内容などの定性情報を駆使することも重要です。ABMでアカウントを特定したら、事業計画や組織図などの情報を入手して組織形態に合わせたアプローチの戦略を立てたり、キーパーソンを把握して進めることで、ひとつの企業でも複数のコンタクトポイントを作ることが可能となります。キーパーソンを把握したらそこから、アップセル・クロスセルの可能性がないかも考えていきます。
これらの手法をアカウントプランと呼び、顧客別に営業活動の基本構想を立てること、つまり「どのようにソリューション営業を推進するのか」という概念です。アカウントプランを作成することでBDRの戦略シナリオが立てやすくなります。
ターゲット顧客に合わせた提案をする
ターゲット顧客に合わせた提案のためには、ターゲット企業の情報収集が非常に重要です。BDRの場合には、IR情報や決算情報、企業予想などのデータを参考にし、各企業が求める情報を提供しましょう。顧客企業への提案によって顧客ロイヤリティを高められれば、長期的な契約につながりやすくなります。
BDR・SDR導入時に気を付けたいポイント
インサイドセールスを成功させるには、BDRやSDRなど役割を決める人的な配置と、使用するルールの選択が重要な要素となります。
導入の目的を明確にする
自社の弱点を明確にしてから、BDRを強化すべきか、SDRを強化すべきかを明確にし、まずは足りない要素から導入することをお勧めします。それぞれ求められるスキルも違うので、やみくもに全てに対応出来るようにと人を多くアサインしても、機能しなければ何の意味もありません。
BDRやSDRは、それぞれどのような課題を抱えている時に導入すべきなのか、以下にまとめます。
■BDRを導入した方が良い例
- 問い合わせの流入数が少なくダイレクトにリードを獲得したい
- イベントや展示会では集まりにくいターゲットに対して直接アプローチしたい
- 自社のサービスに親和性の高い企業を分析、特定してダイレクトにアプローチをしたい
■SDRを導入した方が良い例
- 問い合わせがある程度多く、タイムリーなアプローチをしたい
- リードのフォローに専念するスタッフをアサインし丁寧に情報を取りたい
- 休眠顧客や失注商談の掘り起こしをしたい
KPIを設定する
最終的には受注から逆算して、商談数、必要リード数、必要ターゲット数などを割り出した上でKPIを設定します。会社によってそれぞれの転換率は異なるので、仮説・検証を繰り返しながらしっかりと目標設定することでインサイドセールスは成功しやすくなります。
部門間の連携をとる
各部門の役割を確認していきましょう。
マーケティング部門は売れる仕組み作りを担っており、WEBサイトや展示会でリードを獲得して、営業部門に引き渡すことがミッションです。
フィールドセールス部門は提案・成約に集中し、自社の売上を最大化することがミッションです。
BDRやSDRを行うインサイドセールスはマーケティング部門とフィールドセールス部門の橋渡しの役割を担っています。そのため、マーケティング部門からはリードの供給、そしてフィールドセールスが満足するSQLを創出するために相互コミュニケーションを取りながら連携をしっかりととることがミッションとなります。
以下からは具体的な連携方法をご紹介します。
次の部門へトスアップするリードの定義
MQL(マーケティング部門がインサイドセールス・営業部門に渡すべきと判断するリード)や、SQL(案件化されフィールドセールスがフォローすべきリード)などを定義しましょう。マーケティングからインサイドセールス、インサイドセールスからフィールドセールスにそれぞれ引き渡すルールを決めることが重要です。
ルールは前述の通り、部門間で共通言語を設定する必要があります。
・BDRにおけるトスアップの定義
個人情報の獲得、継続的営業連絡の許諾を得てSDRに渡せる状態(リード)
・SDRにおけるトスアップの定義
リードクオリフィケーション(購入可能性の高い見込み顧客を選別)したものでフィールドセールスに渡せる状態
部門間でのフィードバックMTGの設定
ツールで定量的なデータ連携や各部門から定性的な情報をフィードバックするミーティングを設定して部門間のコミュニケーションを取ります。ミーティングはできるだけ定期的に実施することと、ミーティングの目的、ゴールを明確にすることが重要です。
SFAなどのツールを導入する
ここまで述べた部門間連携、KPI設定いずれもツールを活用しなければ、すべて「点」での管理となり、効果を最大化する事は難しくなります。MAによりリードの管理、SFAによりインサイドセールスのプロセスを管理、CRMにより顧客生涯価値や、ABMにおけるアカウントの情報をしっかり入力しながら、定性情報、定量情報それぞれを管理し、部門間で情報を共有、連携することが重要です。
まとめ
営業活動の分業化がフィールドセールスとインサイドセールスの棲み分けであるならば、インサイドセールスの分業化がBDR、SDRに該当します。効率的に物事を進めるためには、目的やタスクを明確にして分けて役割分担をし、それらをツールで管理することが成功のカギになります。必要な人材もその用途に合わせて要件定義して進めることも重要です。それぞれの企業にあったBDR、SDRを最適に配置することがインサイドセールスの成功に繋がります。
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