インサイドセールス
BDR

製造業界のインサイドセールス 課題解決型営業への転換

インサイドセールスとは、電話、メール、ビデオ会議システム等を用いて顧客とのコミュニケーションを行う営業手法です。
製造業では、従来フィールドセールスや特約店、代理店が顧客に直接訪問し、ニーズを発掘するような方法が主流でしたが、近年リモートワークの浸透により、全国の顧客に対して効率的なコンタクトをとることができるインサイドセールスへの注目が高まっています。
本コラムでは製造業界におけるインサイドセールス導入のポイントを解説していきます。

製造業を取り巻くビジネス環境の変化

日本の製造業では、深刻な人手不足に陥るとともに、後継者不足も顕在化しています。その改善方法の一つとして、ITの活用による労働生産性の向上が挙げられますが、現状では導入がまだまだ遅れています。このような背景を踏まえて、近年国内製造業を取り巻くビジネス環境の変化は、主に以下の3つあります。

顧客ニーズの変化による「ユーザー視点」の重要性

「2020年版ものづくり白書」におけるものづくり企業の事業環境・市場環境に対する状況認識をみると、経営課題に直結する、厳しい認識に基づいた回答が上位4位を占めています(下図参照)。中でも、6〜7割超の企業が「顧客のニーズに対応」「品質」の重要性を感じており、ユーザー視点をより明確に意識したサービスを作り出す必要性が出てきています。

参照元:経済産業省「2020年版ものづくり白書」 図 221-3 事業環境・市場環境の状況認識

「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」の推進

ビジネスシーンにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、企業がビジネス環境の変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基にビジネスモデルを変革することです。
製造業のDXにおいては、データとデジタル技術を「ノウハウ共有・リードタイム短縮・生産性向上・品質向上」に生かし、激しく変化する顧客や社会のニーズに合わせて、ビジネスモデルに変革をもたらすことが重要となっています。
特に製造業ではビッグデータやデジタルを活用しながら、製造工程から出荷後のデータまで一元管理し、製造現場にフィードバックを実施することが大事になってきます。そうすると、生産性の向上、安全面の配慮をしながら、コストを意識したものづくりを目指すことができます。

テレワークの浸透と移動制限が製造業にもたらした影響

近年では、世界中の劇的に変わるビジネス環境において、製造業ではサプライチェーンが寸断されたことや、需要状況の変化によって事業展開と生産体制の見直しを余儀なくされた企業が増えてきています。
製造業企業の営業活動も影響を受けています。製造業従来の営業活動は、契約前に製品を見たい、詳しく説明してほしいという顧客が圧倒的多数いるため、訪問主体の営業スタイルでした。ところが、テレワークの浸透や移動制限によって、従来行えていた新規顧客の獲得、ヒアリング(御用伺い)、契約や技術者によるアフターフォローなどのすべてが円滑にできなくなってしまいました。
このような状況が後押しとなり、今後製造業におけるDX推進はより一層重要性が高まっていくと考えられます。

製造業によくある営業課題

製造業は紹介営業が難しいなど、他の業界とは異なる特徴を持っています。また、大口の取引先に支えられることも多く、リスクを回避するためにも、いくつもの新規取引先を新たに開拓し続ける必要が大きい業界でもあります。そこで、製造業特有の課題をしっかりと把握した上で対処法を検討することが、事業の拡大につながります。

深刻な人手不足

若者の減少や、移動制限により営業部門に必要な人数が揃っていない状態が続いております。必要な人数とは、売上目標を達成するために最低限必要な人数のことを指します。人手不足によりアプローチするタイミングでリソースを投入できない場合は機会損失に繋がり、更にアフターフォローもきちんと行えず顧客とのつながりが弱くなる事も考えられます。これらを払拭するためにも、効率的な営業活動ができる体制を考える必要があります。

営業の属人化

製造業はフィールドセールスの業務プロセスや進捗状況、各人のタスクなどが部門内外ともに共有されず、それぞれが独立した個人商店のような形で営業活動を行っているケースが多いです。
デメリットとしては、体調不良や退職により担当者が変わる場合、顧客に関する情報が正しく引き継がれず、今まで通りの対応を行えない可能性が高くなります。また、営業成績が個人のスキルに左右され、ベテラン営業社員の退職が業績ダウンにつながるといったこともあります。特に人員確保が困難な中小企業にとっては、顧客情報の共有と社内でのノウハウ共有体制を構築し、営業の属人化を少なくすることがますます大事になってきます。

部門間の連携が十分に取れていない

製造業では、製品の開発や製作に注力している開発部門と、顧客と直接やり取りしている営業部門との間には、製品に関する認識にギャップが生じているケースが少なくありません。
顧客満足度を上げるためには、顧客ともっとも多く接する営業部門と開発部門が密に連携することが大事です。しかし、多くの企業ではこういった部門間の連携が不足しており、結果的に営業活動に支障が出ることもあります。

製造現場への投資が最優先で、営業への投資が後回しになる

製造業はたくさんの課題に直面しているとき、最優先に生産現場の改善と効率化を行う傾向があります。なぜなら、製造業の本業は「ものづくり」であり、高品質な製品や高い技術力が他社と差別化を図り、顧客満足度を支えているからです。その結果、営業への投資が後回しになり、他業種に比べて営業改革が後手に回ってしまう環境があります。経営者やマネージャーがこの状態に気づくのが遅くなると、市場の変化についていけなくなり、新規開拓が後手に回ってしまう恐れがあります。

インサイドセールスで課題解決型営業へ

これまで触れてきた製造業の営業課題を解決するためには、フィールドセールスの製品説明能力や交渉力も大事ですが、インサイドセールスが持つ高度なヒアリング能力、更に顧客の課題解決に役立つ情報を提供しつつ、会話の中からマーケットの最新動向などを拾い上げるスキルが適しています。

製造業に関しては、顧客が直接会話の中でもっと改善してほしいなどの思いをぶつけてくれることがあるので、インサイドセールスは営業のヒントだけではなく新規商品開発や、既存商品の改善にも役に立つ情報を引き出せる可能性があります。

これから製造業が取るべき営業施策

製造業では、自社開発した製品の機能や導入効果を顧客に提示し、ニーズにマッチすれば比較的早く受注につながるため、営業担当者個人のスキルに頼ってしまう傾向にありました。その結果、属人的になり組織としてしっかり売上を上げていくスタイルになっていないことが課題としてあります。

ところが最近は、情報があらゆる消費者に届きやすくなってきたため、機能重視だけではなく、製品がもたらすサービスや体験なども顧客に届けなければいけない時代となりました。そのため、製品の開発だけではなく、経営層・営業部門・生産部門・購買部門などが一丸となり、DX(デジタルトランスフォーメーション)を取り入れたり、今まで以上に多くの智識や課題解決力、交渉力、ヒアリング力を駆使した営業が求められてきます。

なぜインサイドセールスは「課題解決型」営業なのか

これまでのようにフィールドセールスが主体で行ってきた対面営業と違い、インサイドセールスでは電話やメール、チャットなど非対面の手段で営業活動を行います。もちろん、相手の表情やジェスチャーなど視覚的な情報も重要ですが、情報提供に特化した会話や、ヒアリングなどの課題解決を意識した活動は、インサイドセールスが適していると言えます。課題聴取力を発揮することで、会話の中から新たなニーズやマーケットの最新情報などをつかむことが出来るので、フィールドセールスへの商談の橋渡しだけではなく、開発部門への情報提供によって市場の声を商品の開発や改善につなげる役割も担っているため、まさに「課題解決型」の営業へと繋げることができます。

具体的には、まずは見込み顧客の状況をヒアリングして課題を抽出し、「ナーチャリング」を通して課題解決のヒントなどを与えてあげることで信頼関係を構築します。そして、一方的な情報提供ではなく、見込み顧客にとって本当に必要な情報を提供するスタンスで顧客が自社の「ファン」になりさえすれば、より確度の高いリードや商談を創出することが可能となるのです。

インサイドセールスを導入するメリット

製造業に限らないですが、インサイドセールスの導入によって営業活動の効率化・最適化が実現でき、従来の営業における仕組みよりも、少ないリソースで効率的に成果を出していくことが可能となります。
また、業務効率の向上はもちろん、他にも様々なメリットが期待されます。

  • 業務の標準化により営業の属人化を防止出来る
  • 効率的なアプローチによりリソース不足を解消
  • 訪問営業のコスト削減につながる
  • データの蓄積・分析ができる

◇インサイドセールス導入のメリットについてより詳しい解説は、下記のコラムでご紹介しています。
インサイドセールスのメリットとデメリットを解説

製造業がインサイドセールスを検討する際の注意点

商材や目的によってインサイドセールスの役割も違う

何のためにインサイドセールスを導入するのかが明確になっていない場合、せっかく導入しても十分な成果を得られない可能性が高いです。なぜなら、インサイドセールスは商材や目的によって、役割も違ってくるからです。まずは自社の課題を把握し、整理することでインサイドセールスの導入目的を明確にする必要があります。

また、商材によって単価やリードタイムも異なるため、コストに見合った手法を実施する必要があります。自社の状況を考えた上で、インサイドセールスがどのような役割を担うか決めていきましょう。一般的にインサイドセールスはBDR、SDR、オンラインセールスの3つに分類できます。

営業プロセスを改めて設計する必要がある

インサイドセールスの導入に当たり、目標とする営業活動の整理(例として商談化や失注とは何を指すのかなど定義づけと社内への浸透)が必要となります。特に定義づけは社内の共通言語として認識の齟齬が生まれないようにするために必要であり、それを記号やルール化して社内へ浸透させやすいものにすることがポイントです。社内での共通認識ができていないと、そもそもの営業活動にズレが生じてしまいますので、しっかりと定義やルールを決めていきましょう。

連携できる組織体制を確立すること

プロセスを整理したら、営業部門・開発部門・生産部門などの情報連携ができる組織体制・仕組みを確立し、必要に応じてSFAやCRMなどのツールを活用して情報伝達を円滑にすることも重要です。これらのツールは記号やルールを明分化、項目化して表現出来るためコミュニケーションを取るのに適しており、インサイドセールスとフィールドセールスの共通認識を持ち、連携するためには欠かせないプラットフォームです。さらに、チャットなどでデータを見ながら密にコミュニケーションを取るとより情報連携が早くなるのでおすすめします。

製造業のインサイドセールス活用事例

インサイドセールス導入に迷われている製造業の方向けに、活用事例を2つご紹介します。

事例①:拠点(工場別)の新規開拓(BDR)

太陽光発電パネルメーカーA社は、過去反響型(インバウンドに対するSDR)に頼り営業活動をしていましたが、自社のニーズにマッチする顧客が創出できない課題がありました。そこでインサイドセールスを活用して拠点別、アプローチ対象の工場ごとに太陽光発電パネル設置のニーズがあるかリサーチ(BDR)することで、直接自ら攻略したターゲットにアプローチすることが可能となり、効率的な顧客発掘に繋げることができました。

事例②:過去顧客からの案件確認

独自の受発注システムからFA部品を提供している企業B社は、過去購入履歴のある顧客からリピートがあるかを確認したいが営業リソースが足りずにアプローチしきれていない状況が続いていました。そこでインサイドセールスを導入して過去顧客に案件確認の実施を任せるようにしました。その結果、いつ部品が必要になるかなど具体的な情報を入手できるようになり、パイプラインを積み上げることができました。

まとめ

製造業では人件費や設備投資にコストを多く費やすことが多いため、販促費や営業予算が潤沢に用意されないケースが多いです。ところが今回説明したポイントを踏まえ、営業課題に対する適切なヒト・モノ・カネでインサイドセールスを導入することができれば、理想的な営業活動を実施することが可能となり売上増加に繋がります。

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スマタイ編集部
スマタイの記事を制作している編集部です。
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