インサイドセールスのトークスクリプト | テンプレートや作り方のコツを紹介
インサイドセールスとは、“非対面”の手段である「電話・Eメール・DM」などを用いて、顧客や見込み客とのコミュニケーションを行う、いわゆる内勤営業のことです。
近年、営業活動を効率化する方法の一つとしてインサイドセールスを取り入れる企業が増加していますが、インサイドセールスの成果を高めるためには、トークスクリプトは必須要素です。
本コラムでは、インサイドセールスのトークスクリプトの作り方を具体例を交えながら紹介していきます。
インサイドセールスを立ち上げるための手順を詳しく知りたい方はこちら
インサイドセールスのトークスクリプトとは?
トークスクリプトとは、営業活動における顧客対応する際の営業台本(マニュアル)のことで、主に「電話営業」や「問い合わせ対応」にて使われています。テレアポはアポイント獲得が目的であるのに対し、インサイドセールスは見込み顧客との長期的な信頼関係を構築することを重視しているため、潜在的なニーズを引き出し、情報収集のためのトークスクリプトを用意することが必要です。
テレアポとの違い
電話営業という意味では、テレアポと似ているように思えるかもしれませんが、インサイドセールスは従来のテレアポと、運用の目的や場面が違います。そのため、トークスクリプトを作成する際のポイントも明確な違いがあります。
関連記事:
・インサイドセールスとテレアポの違いを3つの切り口から解説
トークスクリプトの必要性
トークの品質を標準化できる
元々営業トークは個人の裁量に任され、非常に属人的になりやすいものです。そのため、成果が出なく改善しようとしても、どこを直すべきか分からないことがあります。
しかし、実績を上げている営業パーソンがどのように会話をし、どのような流れで成果を上げているのかを型化し共有することでその問題は解決され、結果的に会話の品質を標準化することができます。
トークの改善点が明確になる
トークスクリプトを作成することによって、話の構成を客観的に見ることができます。
会話の中でよく断られる部分、違和感のある部分はどこなのかを把握することで、トークの改善点が明確になります。そこを中心にトークスクリプトの改善を行っていくと、パフォーマンスの向上に繋がります。
新人の教育に活用できる
右も左も分からない新人の営業担当者は、トークスクリプトがないと、どのように話していいのか分からず非常に難しく感じられる場合が多いです。
しかし、話す内容の道しるべとなるトークスクリプトを用いて練習・実践を繰り返すことで、早くから成功体験を得られるようになります。一つ一つの成功はモチベーションに繋がるので、新人教育や研修の観点からも必要となります。
以上のことから、トークスクリプトを活用することで、営業のパフォーマンスを向上させることができると言えます。
インサイドセールスは「BANTCH」情報のヒアリングが重要
「BANTCH情報」とは?
「BANTCH(バントシーエイチ)」は以上6つの頭文字を取った略語です。受注創出する際に必要な情報のため、一般的には商談時にヒアリングを実施しながら確認していきますが、商談前に把握できると、より受注に繋がりやすい商談を創出することが可能です。
そこで、「定期的なフォローで見込み顧客の購入意欲を醸成すること」を目的としているインサイドセールスでは、「BANTCH情報」のヒアリングがカギとなっています。
「BANTCH情報」の聞き出し方
Budget(予算)
「この課題を解決するために投じることのできる予算」の情報をヒアリングします。
トークスクリプト作成のポイント
「ご予算はどのくらいですか?」と直接的に聞かれても電話口の担当者は答えにくいことがほとんどです。そのため、先方企業がすでに取引をしている競合他社や利用中サービスの情報、比較検討している製品やサービス名称などのヒアリングを試みましょう。
比較検討している他の製品・サービスの情報(Competitor)を入手できれば、大体の予算感を推測できます。
Authority(決裁権)
「決裁権を持っているのは誰なのか」や「承認フローがどのようになっているのか」などの情報をヒアリングします。
トークスクリプト作成のポイント
電話口の担当者に興味を持ってもらったとしても、その人に決裁権がなかったり、上申できる立場でなければ成約までの道のりは長くなります。
しかし、突然「決裁権者はどなたですか?」と聞いても成功確率は低いでしょう。そこで例えば、アポイントを取るときに「どなたかご同席されますか?」と聞くことは自然なことです。その際に同席者がいるようであれば「上司の方ですか?」などと追加で質問し、その同席者がどのような立場の人間か情報を入手できます。
Needs(ニーズ)
アプローチ先にどのような課題や悩み、興味関心があるのか「自社商材で解決できるニーズがあるのか」を確認するための情報をヒアリングします。
トークスクリプト作成のポイント
自社の製品・サービスに全く興味関心のない企業にアポイントを取ったり、ヒアリングに時間をかけてしまうのは無駄な工数になります。
しかし、突然「私どもは〇〇という製品を扱っておりますが、貴社では需要はありますか?」と聞いても期待できるような回答は得られないでしょう。まずはアプローチ先の課題や悩みをヒアリングすることが最優先です。例えば「新規開拓のリソースが足りないや、既存顧客へのフォローアップがうまく出来ていないと、他社からよく伺うのですが、御社ではこのようなお悩みはありませんか?」などです。
そのうえで、自社の製品・サービスでどのような解決が可能かを提示し、興味関心が得られた場合に話を具体的なものに進めていくといった流れが理想的です。
Timeframe(検討時期)
「サービスの導入予定時期」や「現在利用しているサービスの更新時期」などの情報をヒアリングします。
トークスクリプト作成のポイント
導入時期の情報をヒアリングすることによって、その後のアプローチ方法も大きく変わってきます。
もちろん商材にもよりますが、例えば「3ヶ月後に導入できる企業」であれば、具体的な費用や商談について話す必要があります。ところが「導入は早くとも1年後」である企業の場合は、情報収集段階の可能性が高いため、資料送付など定期的にアプローチしていく必要があります。
さらに、他社サービスを利用している場合は、次回の更新時期をヒアリングすることで、次にアプローチする適切な時期を把握することができます。
Competitor(競合)
「現在比較検討している企業(サービス)」や「選定基準」などの情報をヒアリングします。
トークスクリプト作成のポイント
見込み顧客が検討中もしくは現在進行形で利用している競合他社商材をヒアリングする際には、「他に情報収集をなさっている製品はありますか?それはどこのサービス・製品ですか?」という聞き方もありますが、いくつか企業名(サービス)の例をこちらから提示してヒアリングすると回答率が高くなります。
また、競合他社との差別化ができる部分(有利な部分)があるかどうかを確認するために、「商材を選定するうえで一番重視していること(即ち判断軸)」をヒアリングすることも重要です。
Human resources(人員体制)
導入に際し、関連する部署やその部署の人員体制、商材によっては管理部門やセキュリティ担当者などの情報をヒアリングします。
トークスクリプト作成のポイント
人員体制のポイントとしては、その製品やサービスを導入・利用するうえで障害となる反対意見を述べる部門や条件を提示する部門(管理部門やセキュリティ担当、さらに親会社、監査担当など)、逆に導入に際し協力を取り付ける必要のある部門(情報システム担当者など)があげられます。
また特定の部署に該当しなくとも、社内で影響力がある人の利用の促進や定着に影響を及ぼすような人物の情報を収集します。
Authority(決裁権)と同様に、「商談に同席する人はいますか?」「導入に際して御社内に説明会を開催する必要はありそうですか?」などの質問によって関係者の洗い出しを行いましょう。
気をつけるべきポイント
課題やニーズに合わせてヒアリング内容と順番を適宜変える
ヒアリングする際は強引に聞き出すのではなく、まずは電話口の担当者の警戒心をぬぐう必要があります。例えば、まずその企業や担当者の抱える課題や悩み(Needs)についてヒアリングをし、課題に寄り添った解決策を提案します。
信頼を得られることで、課題(Needs)以外のBANTCH情報を聞き出すことができる確率が上がります。
逆に電話口の担当者があまり商材への興味が高くなければ、「あえて予算を伺わない」など、見込み顧客ごとに臨機応変に対応していくことが重要です。
ヒアリング情報はできる限り定型化して蓄積する
得られる効果は主に2つあります。
1つ目は、ヒアリング活動の質を均一にできる点です。
ヒアリング情報の記載をスタッフごとに自由にさせてしまうと、聞くべきことが聞けていない、聞かなくてよいことを細々と聞いていた、といったことが起きてしまうリスクがあります。そうすると、営業部門へパスするアポイントの質にばらつきが出てしまいます。ヒアリングの質を担保するためにも、決められたフォーマットでヒアリング情報を蓄積していきましょう。
2つ目は、PDCAが回しやすくなる点です。
ヒアリングした情報を蓄積すると、「どの項目にどのような情報があるときに、どのような結果になる」といった因果関係の分析が可能となります。
必須のヒアリング項目と指定したものが、結果として商談の受注率に影響を及ぼさないようであれば必須項目から除外するなど、次の戦術を客観的に見直す材料となります。
トークスクリプト作成手順【テンプレートあり】
ここからはトークスクリプトの作成方法について紹介します。
ターゲットと目的を決める
トークスクリプトを実際に作り始める前に、まずはどこにアプローチするか、仮説を立ててターゲットを明確にする必要があります。なぜなら、会話する相手によって、話し方や内容も変わってくるためです。自社の業界や商材の特性を踏まえ、ターゲット層の属性(年齢、役職、職種など)を想定してみてください。
その上でトークの目的を決め、ゴール(活動結果)を明確にします。インサイドセールスはリードナーチャリングによって顧客との信頼関係を築くことを目的としていますが、いつまでもナーチャリングに時間をかけるわけにもいきませんので、電話のゴールを決める必要があります。「アポイント獲得」「資料送付」「次回連絡する約束」などのゴールを設定しておけば、話が大幅に外れないようになります。
ヒアリング内容の設定
ターゲットと目的が決まった後は、ヒアリングする内容を設定します。
ヒアリング内容を明確にすると、トークスクリプトのどの段階で何をヒアリングするかの流れが見えてきます。一方で内容や項目を事前に決めておかないと、トークが噛み合わない可能性が高くなります。
前述のとおり一般的には、BANTCH情報をヒアリング項目にすることが効果的ですが、自社のインサイドセールスの目的や役割によって、調整を行う必要があります。それには、フィールドセールス側と連携を取る必要があります。
具体的には、インサイドセールス時にどのヒアリング情報が取れていたら受注に繋がりやすいか確認を取ります。例えば、BANTCH情報の中で「N(課題)」や「T(検討時期)」の情報であれば提案や受注に繋がりやすいなら、そのヒアリング項目を必須項目と設定します。このようにフィールドセールス側と共にヒアリング項目を設定すると、より質の高い、有効的なアポイントを供給することができます。
インサイドセールスとフィールドセールスそれぞれの役割についてはこちら
トークフローの骨子を作る
ヒアリング内容が決まった後は、トークフローの骨子を作ります。会話の流れを可視化したもので、トークのシナリオとも言えます。
トークスクリプトの構成要素
顧客との会話の中では「①何を伝えて」「②何を聞いて」「③どこをゴールにもっていくか」という会話の3要素を明確にすることが重要です。
この3要素をトークスクリプトに盛り込むことで、会話がどこで行き詰まっているかを把握でき、ヒアリングの漏れなどを防ぐことができます。逆にこの3要素が入っていないトークスクリプトは顧客への興味喚起や状況の把握が難しくなります。
また、会話の流れは1本道ではなく、例えば課題の有無や予算の有無といったYES・NOの分岐点が必ず存在します。そのため、シナリオを考える際は、例えば興味があるならAパターンで会話を続ける、興味がないならBパターンで続けるなど、分割して構成していく必要があります。
分岐点の例は以下です。
- 受付突破/拒否又は不在
- 課題がある/なし
- このサービスについて聞いたことあるか/聞いたことないか
- このシステムを導入しているか/導入していないか
具体的なトーク内容を入れ込む
骨子ができたら次は具体的なトーク内容を入れ込んでいきます。
「何を言われたらどう返すか」といった内容を事細かに考えていく必要があります。
この部分で注意しなければいけないのは、実際の電話で読み上げられるように「口語体」で作成することです。箇条書きやキーワードだけ書かれているトークスクリプトでは読み手(自社の担当者)が意図を把握しきれず、重要な内容を飛ばしてしまったり、言葉に詰まったりしてしまう恐れがあります。
<例:代表受付への取次依頼コール>
●●部門までお繋ぎお願いいたします。
「営業をお断りされた場合」
営業はお断りされている、ということですね。承知いたしました。
本日は、このお電話で何かを買ってください、ということではなく、まず、まだお取引のない企業様に情報をお届けしております。いきなりお送りするのも失礼になりますので、ご担当の方に必要かどうかご判断いただきたいと思い、ご確認でご連絡差し上げております…
上記のように、トークフローに合わせて、口語体でシナリオを作成していくことが大事です。中身の詰まったトークスクリプトが作り込めていれば、経験の浅いインサイドセールス担当者でも会話に迷うことなく架電ができます。
完成したトークスクリプトのイメージ
まとめ
今回は、インサイドセールスのトークスクリプトの作り方について紹介しました。トークスクリプトは一度作成して終わりではなく、常に見直しする必要があります。なぜなら、フィールドセールスが求めるヒアリング項目は商談結果やニーズなどに応じて常に変化するからです。
フィールドセールスとインサイドセールスの分業でより受注を創出するためには、どのようなシナリオ設計やヒアリング項目設計が必要なのかを定期的に検討し、常に修正すべきポイントや改善点を発見し、PDCAを回していきましょう。
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