定量も定性も使うBDR戦略とチーム作り。 RevComm瀬河真ノ輔 #THELEADERS
現場で活躍するインサイドセールスのキーマンに、SALES ROBOTICSの冨田貴徳が取材する連載企画「THE LEADERS」。
今回のゲストは、株式会社RevCommの瀬河真ノ輔さんです。
RevCommのプロダクトMiiTel(ミーテル)は、IP電話・録音・文字起こし・音声解析をひとつのツールで完結できるクラウドサービスです。インサイドセールスにおいては、電話営業の品質向上に大きな効果を発揮しています。
そんなMiiTelは、顧客のみならずRevComm社内の生産性向上にも、大きく寄与しているのだとか。インサイドセールスチームで活躍する瀬河さんに、同社ならではの組織づくり・人材育成・営業戦略を聞きました。
(執筆・撮影:サトートモロー 編集:いいたかゆうた 音声編集:増田 那々海)
瀬河 真ノ輔
株式会社RevComm 営業部
新卒でワークスアプリケーションズに入社。その後、GMOグループにてWEB集客サービスのコンサル営業に携わる。インサイドセールスのSV、オンラインセールスのMGRとして従事した経験を基に、BDR組織の体制強化のためRevCommに参画。
外部の血を入れてスピーディに組織づくりを進めた
冨田:
実は事前に、瀬河さんのキャリアを軽くうかがっていたのですが…。瀬河さんの前職は、時期こそ違うものの私と同じGMOグループなんですよね。しかも、数十社あるグループ企業のなかで、会社まで同じという。
瀬河:
偶然の一致に驚きました(笑)。私は少し経歴が特殊で、一時期はお笑い芸人として活動していましたが、全く花開く兆しが見えずに逃げ出しました(笑)。キャリアとしては、大学在学中からずっと営業に携わり続けて計11年という感じです。
前職のGMO時代は、電話のみで初めましてのお客様に100万円近いサービスを即決でご契約を頂くというスタイルの営業を行っておりました。高難度の電話営業が故に、メンバーの育成には正直かなり苦労してましたね。その経験を活かして、現在はRevCommのインサイドセールスの※BDRチームに所属しています。
※BDR(Business Development Representative)
アウトバウンド対応がメインのインサイドセールス。「新規開拓型」の営業手法とも呼ぶ。
当社が取り扱うMiiTelは、営業の生産性向上を図るツールです。私はかねてより、「トップセールスとそうでない人の違い」について考えていました。そして、このサービスを活用すればトップセールスを世の中に量産できるのでは?と考え、2021年7月にジョインしました。
私が入社した頃のRevCommは、ちょうど組織の変革期でした。これまでの“テレアポ部隊”的な営業チームを一新させ、茂野明彦さんに助言をいただきつつ、THE MODEL型のチームを立ち上げるというフェーズだったのです。
冨田:
瀬河さんが入社した当時、社内にはどんな課題がありましたか?
瀬河:
新体制での営業経験不足が目立ちましたね。フィールドセールスとインサイドセールスでは、使う筋肉が全く異なります。フィールドセールス寄りの経験が多い人は、電話でアポを取るのに苦労していました。
逆もまた然りで、電話営業経験が豊富な人は、どうしても契約までの道筋が見えず、目先のアポを追いかけがちでした。移行期の会社ならではの壁に、私たちもぶつかりました。
冨田:
その状態から、どのように業務の質を高めていったのでしょうか?
瀬河:
先日開催された「Japan Sales Collection 2023」でも発表しましたが、ここで当社はユニークな取り組みを行いました。
私たちのチームは人数が少なく、社内だけでノウハウを蓄積させるのは時間がかかるし、非効率だと考えました。そこで当社は、※BPOベンダーと連携することで、プロのノウハウを社内で蓄積させていくことにしたのです。
※BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)
アウトソーシングの形態のひとつで、企業の業務プロセスを外部委託するというもの。
私のミッションは、BPOベンダーと協力してアポイント数を最大化させることでした。各ベンダーの架電者に細かなフィードバックを行い、アポ率の改善を図っていきました。
冨田:
外部の血を入れることで、インサイドセールスチームを形成させていったのですね。
瀬河:
この取り組みは、テストマーケティング的な観点で行われました。パートナー会社には、エンタープライズ領域へのアプローチが得意、ヒアリングが得意、事例紹介が得意など、それぞれに強みがあります。
試行錯誤を通じて、こうした強みを社内にも取り入れていったのです。
冨田:
アポイント数も確保しつつ、円滑にチームづくりを進める上で、意識したことはありますか?
瀬河:
定量面だけでなく、定性面での評価も重要視しました。
多くの会社や営業パーソンは、チーム作りを進めるなかで「高いモチベーションを維持する」という課題にぶつかることが多い気がします。その中で、アポイント数やアポイント率ばかりを指標にしていると、どうしても「先週と変わらない」という評価に陥りがちです。それを指摘したところで、気持ちが落ちてしまうだけでしょう。
私の場合は、受付の突破、自己紹介、架電背景、事例、日程提示、ヒアリングとフェーズを細かく分けて、メンバーの活動をチェックしていきました。
その上で、「先週は受付の突破に失敗していたけれど、今週は日程の提示までたどり着けた」という改善が見られたかをチェックします。彼らの定性的な頑張りを具体的にフィードバックすることが、モチベーションアップや維持に効果を発揮します。
冨田:
面白いですね。とはいえ、定性面を正確に把握して、フィードバックするのは非常に難しいと思います。どんな点に気を付けて、メンバーへのフィードバックを行っていましたか?
瀬河:
マネージャーやスーパーバイザー(SV)の主観を、極力排除することではないでしょうか。
RevCommはMiiTelを活用することで、音声解析や架電時の自動録音データからフィードバックができます。他社さんにも「MiiTelを導入してください」とお願いしたいところですが(笑)、代替案として、「架電内容の録音」をおすすめしたいです。
録音内容を聞き直すというのは、どうしても工数がかかります。しかし、架電内容と架電者からの報告にズレが生じると、適切なフィードバックはできません。録音という事実ベースでフィードバックを行うことが、フィードバックではとても大切だと思います。
アポの先にある「契約」を見据えた意識づけを徹底
冨田:
RevComm社のインサイドセールスチームには、どのような特徴がありますか?
瀬河:
一般的なTHE MODEL型組織と同じで、当社のインサイドセールスチームは※SDRチームとBDRチームに分かれています。
※SDR(Sales Development Representative)
インバウンド対応がメインのインサイドセールス。「反響型」の営業手法とも呼ぶ。
来月からBDRチームでは、エンタープライズの企業様と中堅規模の企業様へアタックするチームに区分して活動することとしました。前者は※ABM戦略で時間をかけてアプローチし、後者はBPOベンダーと協力して、中堅規模の会社へアプローチするイメージです。
※ABM(Account Based Marketing)
「アカウントベースドマーケティング」の略。特定の企業・団体(アカウント)をターゲットとして実施するマーケティング手法のこと。
冨田:
チーム編成は、今も試行錯誤を続けているのですね。RevComm社は完全フルリモート勤務と聞いていますが、社内ではどのようにコミュニケーションを行っているのでしょうか?
瀬河:
営業周りは、かなり密にコミュニケーションを取っています。インサイドセールスとマーケティングチームのミーティングは、必ず週1回実施しています。エンタープライズ開拓にあたっても、インサイドセールスチームとCSチームのミーティングを週1回を行っています。
冨田:
インサイドセールスでは常に、「リードの質の向上」「パスした商談の質の向上」がテーマになりますが、いずれもチーム内のコミュニケーションやミーティングが不可欠だと、私は考えています。
RevComm社のインサイドセールスでは、具体的にどんな会話やフィードバックを行っているのか、教えてください。
瀬河:
私自身は、「売れるインサイドセールス」はアポをトスアップした「その先」も見ていると思っています。だからこそ、メンバーには「この案件をトスアップされて、自分なら契約は取れるのか」を常に考えるよう、意識づけを図っているんです。
実際に、フィールドセールスにトスアップをする際は、「ここが提案の肝になる」「こういう道筋で提案すると契約が取りやすいかも」と、なるべく詳細に共有させています。
MiiTelはZoomとも連携して、商談の自動録画や文字起こし、話し方解析といった機能を備えています。そうしたデータも活用して、「トスの先」を考える訓練を行ったり、メンバーにフィードバックを行ったりしています。
冨田:
お客様の状況や状態を想定しつつ、どうセールスプロセスを作るかまで、コミュニケーションを通じて言語化しているのですね。
瀬河:
MiiTelは、営業、特にインサイドセールスのアポ率を改善するという点に強みを持ちます。セールスポイントは非常にシンプルなので、※BANT情報はフィールドセールスが契約を取る上で、他社さん以上に重要な項目となります。
そのため、メンバーには「BANT情報はマストでヒアリングしよう」という意識づけを、ルール作りと合わせて行っています。
BANT情報
Budget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(必要性)、Timeframe(導入時期)を表す言葉。相手企業への理解を深め、円滑に商談を進めるフレームワークである。
上記に加え、Competitor(競合相手)、Human resources(人的資源)を追加したフレームワークをBANTCH(バントチャネル)と呼ぶ。
間違ってもいいから、相手のことを思い仮説を立てる
冨田:
瀬河さんはBDRのご担当ですが、ずばり、BDRがうまくいくコツはありますか?
瀬河:
基本的で一番大事なポイントは、「なぜ電話をしているのか」という仮説構築だと思います。例えば当社の場合なら、「相手は電話営業において、こういう課題を持っていそう」と考えるという感じですね。
この仮説構築で覚えておきたい点は、「仮説が間違っていてもいい」ということです。仮説に基づく提案を通じて、「お客様のことを考えている」という姿勢が伝わることが、話を聞いていただけるかどうかのカギを握っていると考えています。
この姿勢が、結果として契約にも結びつくわけです。事前に「※Why You Now?」を考え準備することが、とにかく大切だなと思います。
※Why You Now(なぜ、あなたに、いま)
商談先に対して、「なぜ今、あなたにこの情報をお伝えしているのか」を明確にするというセールスの考え方。これらの情報を明確にすることで、商談先の課題を正しく理解し、相手に有益な情報を届けられる。
あと、BDRでよく聞かれるのが「受付をどうやって突破すればいいか」という質問です。あまり手練手管につながる話はしたくありませんが、私は「話し方」が重要かなと答えています。
いきなり長々と商品説明をしても、営業トークにうんざりしたお客様に断られてしまうのは明白です。なるべく知り合い感を出すために情報を多く伝えないとか、語尾を伸ばして話すといったテクニックなどがあります。
MiiTelの話し方分析でも、こうした話し方は受付を突破しやすいという傾向が出ているんです。データに基づいた「うまくいったトーク」を見つけたら、社歴の浅いメンバーやBPOベンダーに共有します。
冨田:
社内でさまざまなパターンを試しつつ、MiiTelで定量的に分析して、よかったものは社内外に共有していくと。なるほど、とても効率のいいサイクルですね。
先ほどの話で、瀬河さんは「Why You Now?」を考えることが大切だと話していましたが、具体的にどんなアクションを取っていますか?
瀬河:
ABM戦略でエンタープライズを攻めるときは、経営計画や事業内容など、時間をかけてチェックしています。
もちろん、そこまで工数をかけられないケースも多いです。中小零細企業の場合、そこまで深く情報を調べられなかったりもします。その場合は、MiiTelを使用するであろう営業パーソンの人となりを、LinkedInやFacebookなどでチェックしていますね。
冨田:
近年「仮説提案営業」という言葉が話題ですが、仮説の対象としてフォーカスされるのは、会社やサービス、商材などが知られてますが、人にもフォーカスして仮説を立てていくという考え方は、とても興味深いです。
瀬河:
とはいえ、こうした情報が一切見つからない会社もあります。こうした場面で大切になるのが、やはり「あなたのことを考えてご提案しています」という姿勢ですね。
冨田:
話を聞いていて、RevComm社は「他社の営業電話との差別化」をとても意識しているように感じます。
瀬河:
そこはすごく意識していますね。冨田さんがおっしゃった「人にフォーカスする」という点でいうと、私たちの営業先になることが多いのは営業部のマネージャーさんです。こうした方々に対して、MiiTelで生み出せる成果をどう伝えれば、関心を高められるかをよく考えています。
「興味がない」の裏側を探る
冨田:
個人的な興味ですが、RevComm社のBDRでは、商談に至るまで何分間電話で会話しますか?
瀬河:
接点がない会社の場合は、まず5分程度でサービス内容や提案を行い、次回お電話するための日程を調整します。2度目の電話は10分ほどかけて、ヒアリングしつつお客様の潜在的な悩みを顕在化させ、商談につなげています。
冨田:
2回に分けてコミュニケーションを取るのですね。最初に今回の電話の目的を端的に伝え、2度目の電話で課題の深堀やBANT情報のヒアリングなどを行っていくと。
瀬河:
このやり方も、まだまだ検証中ではありますが。丁寧に関係構築を図るのも、半ば強引に商談の日程を押さえに行くのも、それぞれに一長一短があると思いますから。社内外でテストマーケティングをしつつ、各企業様の取り扱いサービスやターゲットのお客様属性に合った最適な方法を検証し続けています。
冨田:
あくまでも、量をこなして検証して、方法論を見極めていくというスタンスを大切にしているわけですね。
ちなみに、お客様と話すなかで「興味ない」と回答されるケースも当然あるわけじゃないですか。特にBDRは、こうした状況下で次に何をすべきか、悩んでしまうシーンが多いと思います。こうしたケースにおいて、瀬河さんたちはどのようにアプローチしますか?
瀬河:
ポイントは、「何に対して興味がないのか」というツボを見つけることだと思います。
「導入予定がない」「私たちのプロダクトで解決できる悩みがない」という状態で断られている場合は、追客の必要性は非常に低いでしょう。ただ、断られるパターンの大半は「面倒くさいから」という理由だと、私は考えています。適切な準備をしてトークを展開すれば、課題を見つけられてアポにつながる可能性は、十分にあります。
私たちは、セールスフォースで顧客情報を管理しています。そこに「なぜ断られたか」の理由を記載しておき、優先度の高い企業と判断したら、定期的にフォローしていくようにしています。
冨田:
「断られた」で止まらず、その理由を考え、深掘りした上で顧客情報に残しておくのですね。
先人が残した「赤本」で新人営業パーソンもスピーディに成長
冨田:
私は、RevComm社のプロダクトは営業の教育や育成にも重きが置かれていると考えています。この「営業パーソンの教育」という課題に直面している企業は、決して少なくありません。そんな悩める企業のために、RevComm社の社内における営業パーソンの育成方法をぜひ教えてください。
瀬河:
当社の依頼しているBPOベンダーのアポイント率を比べると、ベテランは2.0%なのに対して、新人(新卒や営業未経験者)でも1.6%とその差は微々たるものです。この数字の背景には、成功トークがノウハウとして蓄積されていて、赤本のように誰もが手に取れるという社内の体制があります。
なんらかのフェーズでトークに失敗しても、先人による成功トークを音声で確認し、まるごと盗むことができます。そうして、疑似体験したトークを次回の営業で再現できるので、新人の成長が早いんです。
それ以外にも、架電時の音声の共有会を週3回、ロープレを週2回行っています。特に音声の共有会では、メンバーから音声を提出してもらい、「よかったトーク」「悪かったトーク」を報告してもらっています。
そうやって、マネージャー側が一方的なフィードバックをするのではなく、自ら考えさせる習慣を持たせるようにしているんです。第三者からのフィードバックも、マネージャー陣だけではなく他のメンバーからも行っています。
冨田:
先人たちのノウハウは、具体的にどう蓄積されていて、他のメンバーはどう確認するのでしょうか?
瀬河:
やや宣伝じみた話になってしまいますが…(笑)。MiiTelには「録音データ抜粋共有」という機能があり、商談中の音声にタグを付与できます。「ここのフィードバックがほしい」と思った部分にタグを付けることで、その音声だけを切り取って聴くことができるんです。
例えばスプレッドシートなどで、そのタグを一覧にしてまとめておきます。その隣の列に、「そのケースに対する成功トーク」を追記しておくことで、自分がつまずいた部分の回答をチェックできるようになるわけです。
このように、当社は失敗事例や成功事例をすべて同じプロダクトで管理しているので、自分ですぐに振り返りができるようになっています。
冨田:
素晴らしい仕組みですね。商談音声の活用法として、真似させていただきます(笑)。人材育成の観点でも、RevComm社は主観を排除して、定量的なデータを蓄積させ、そのデータを元にチームや個人の成長を促しているのですね。
最後となりましたが、今後瀬河さんは、インサイドセールスあるいはRevCommの中で、どんなことに取り組んで行きたいですか?
瀬河:
私は営業大好き人間です。私と同じように、世の中の営業パーソンにも、「営業のおかげで人生が楽しい」と思ってもらえるような貢献が出来たら嬉しいですね。
これは別に、MiiTelを使ってくださいというわけではありません。営業の醍醐味は、契約を頂いたお客様から喜びのお声をいただけることにあります。誰もがこの醍醐味を味わえる世界を作るための一翼を担うことが、私が働く意味だと思っています。
営業パーソンにとって営業活動が人生における大半を占めるので、トップセールスとしてイキイキと働かないと人生がつまらないと思うんですよね…。
冨田:
RevComm社のインサイドセールスは全てを定量化しつつ、社内で助け合いながら色々なことにチャレンジしているという部分が、インタビューを通じて見えたと思います。
瀬河さん、本日はありがとうございました。
今回の「THE LEADERS」は、お楽しみいただけましたか?本シリーズでは、今後も各業界で活躍するインサイドセールスのリーダーをお招きして対談を行ないます。次回もぜひ、ご覧ください。
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